[2018年12月2日]
中学受験生なら、模擬試験は毎月のように受けているのではないだろうか。
この模擬試験、適性検査型については、どの模擬試験を受けるべきか悩ましい。ほとんどが、アテにならない。
特に、偏差値が乱高下するような模擬試験、成績順位が乱高下する模擬試験は、アテにしない方がよかろう。偏差値とは、本来、そういうものではない。
そもそも、本試験並みの問題を作れる模擬試験が希少なのである。都立高校の選りすぐりの教員を上回る実力をもつ問題作成者というのが、どれだけいるのであろうか。さらに、論述答案を、採点基準通りに、統一された測度で、公平に採点できる採点官も多くはない。
唯一、ある程度信用できる模擬試験は「学習塾系ではなく独立系教材会社が運営する、適性検査型模擬試験」である。名称は伏せさせていただく。しかしこれも、受験生の数が十分に揃わない小5や小6の夏前までは、アテにするのは慎重でありたい。
小6の、9月、10月、11月、12月は、まあまあ信用できる。特に、11月と12月は判断に使えなくない。判断に使えるというのは、「ここで取れなければ、合格は難しい」という意味で使える、ということだ。「ここで取れたら、合格を確信できる」ということではない。合格を確信できるほどは信用できない。
小6の、9月、10月、11月、12月は、全回を受けることをお薦めする。特に、10月、11月、12月は絶対欠かさないようにした方がよい。4回分もしくは3回分の平均偏差値で、合否を、それなりの精度で予測できる。
しかし、この模擬試験は、偏差値ランク表なるものがない。だから、偏差値がいくつだから、どの都立中の合格可能性がどれくらい、という判断はできない。
ただし、凡その目安はつく。以下のような感じだ。
平均偏差値70以上:どの都立中学であっても、合格できる可能性が高い。
平均偏差値68以上:どの都立中学であっても、合格できる可能性がある。
平均偏差値65以上:都立中の中位校であれば、合格できる可能性がある。
平均偏差値63以上:都立中の下位校であれば、合格できる可能性がある。
平均偏差値63未満:合格できる可能性がないわけではないが、高くはない。
平均偏差値60未満:合格できる可能性がないわけではないが、かなり低い。
平均偏差値55未満:合格できる可能性がないわけではないが、ほぼない。
平均偏差値50未満:合格できる可能性がないわけではないが、まずない。
平均であることを忘れてはいけない。1回ぐらい良い偏差値が取れただけで、判断してはならない。
しかも、何度も言うが、小6春までは特にそうだが、小6秋以降も、標本数が十分でないこと、問題と採点基準が、完全に都立中の適性検査に対応していないことから、完全にはアテにできない。
他の適性検査型の模擬試験は、さらに信頼できない。塾主催の模擬試験など、場慣れくらいの効果しか期待しない方がよい。結果に一喜一憂しても意味がない。むしろ判断を誤りかねない。しかも、合格者数を水増しすることに利用されることを承知で受験する必要がある。
現時点で、最も合格可能性を的確に示す模擬試験は、塾内実施向けのみで模擬試験を卸している、「学習塾系列ではない、独立系の教材会社が運営している模擬試験」だ。これも名称は伏せさせていただく。しかも適性検査型ではなく、学力試験型の模擬試験だ。問題は難しすぎず易しすぎない。だから、都立中を受検しようとする受験生の学力を、かなり正確に把握できる。
2つのタイプがあるが、片方は合格判定もできる。もう片方は合格判定ができないが、偏差値を変換することで、実質的に読替えて判定できる。
低学年から受験できるので、受験生の実力を時系列で正確に把握でき、受検指導にも活かすことができる。
先の適性検査型模擬試験と、この学力試験型の模擬試験を組合わせることで、合格可能性をかなり正確に予測できる。
だだし、合格可能性をかなり正確に把握できるということは、残酷でもある。合格可能性が乏しい受検生を、入試会場に送り出したくはない。受験校の選び方次第では、どこかに合格できる私立中とは違い、都立中は一定以上の実力がないと、どこにも引っかからない。
この学力試験型模試は、どの適性検査型模試よりも、かなり早い段階で、合格可能性を判断できるので、受検生親子にフィードバックして、今後の方針を判断してもらうことができる。都立中の場合、難易度による選択肢の幅が相対的に狭く、立地などからの選択肢も狭く、費用的な代替選択肢が乏しいので、成績が芳しくない場合は、受検を断念するかを含め判断をしてもらうことになる。
特に、入塾時期が遅かった受検生親子は、相当な能力の持ち主でない限り、成績が芳しくないと、身動きが取れなくなる。
夢を見るのは自由だが、実行力と継続力が乏しい受検生は、夢を追いかけすぎるのは得策ではないことも知っておくべきだろう。
そうならないために、適切な時期に適切な位置からスタートし、指導に従って適切な時期に適切な訓練を積むことをお勧めする。これに、実行力と継続力が備わっていれば、最後まで力尽きずに、仕上げていくことができる。
くれぐれも、小4や小5で、無料だからと思考停止した状態で、あるいは、小6になって藁をもつかむような気持ちで、客寄せパンダのような、塾主催の模擬試験を受験しないことをお勧めする。さしたる判断の助けになる情報を得られないばかりか、個人情報を利用されるだけだ。あなたが被害者になるだけでなく、関係のない第三者まで被害者になる。つまり、悪事に加担したことになってしまう。意図せず、アナタの人生が汚れてしまう。
安易に塾主催の模擬試験を受験することはお勧めしない。弊害が多すぎる。
都立中全体の6倍前後になる応募倍率が、そのことを暗に示している。どんなに慎重な見積もりをしても、定員の3倍程度以上の受検生が、合格の見込みなどないのに試験会場にワザワザ足を運んでいる。合格可能性を過大に自己評価したか、誰かに過度に自己評価させられたとしか、考えられない。