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三田学院

[2018年12月3日]

【都立高】畏るべし、戸山

都立トップ校の一角を譲ることがない、都立戸山高校。

日比谷(東京府立第一中学)の補完的な学校であった「東京府立城北中学」を前身とする。途中、私立開成中学高校とおなじような経緯を経つつも、戸山は府立(都立)となり、開成は私立となり、現在に至る。府立四中。

都立SSH御三家、日比谷、戸山、小石川の一角を占める。理数教育に伝統的に強く、国公立大学への進学に強い。都立高校としては唯一の、医療系学部進学コース「チーム・メディカル」が設置され、ほとんどが医学部を目指す。内部選抜された選りすぐりの優等生25名で構成される。SSHコースは、80名で編成される。小石川などとは違い、SSHクラスが2つ設置され、さらに、SSH数学、SSH物理、SSH化学、SSH生物、SSH地学に、チーム分けされる。

戸山の強みの源泉は、2つある。

一つ、勉強最優先である。

クラブ活動と称する部活動は、ほとんどの生徒が、時間延長申請をせず、午後5時に終わる。高2男子生徒が説明してくれた。「勉強が優先ですから、そのために戸山に来たのですから」と、理由を説明する。『勉強最優先』が実践されている。鳥肌が立つほどに共感する。

二つ、勉強時間が半端でない。

ほとんどの生徒は、クラブ活動がない日には、授業が終わる午後3時半頃から、図書館の自習スペース、もしくは自習室へと向かう。自習スペースも自習室も、午後8時まで開館している。しかし、戸山生は、これでは満足しない。午後8時を過ぎると、道路を挟んで向かい合う、早稲田大学理工キャンパスのカフェテリアへと向かう。そこで、閉店となる午後10時まで勉強する。高2女子生徒が説明してくれた。制服がないから、大学生と見分けがつかず、お咎めを受けたことはない、とのことだ。

別の高2女子生徒が、何のためらいもなく答えた。「平日の1日の勉強時間は、6時間から7時間です」と。先の高2女子生徒の説明と整合的だ。

さらに別の高2女子生徒が説明してくれた。「戸山は、朝のホームルームがありません。午前8時30分になると、いきなり授業が始まります。多くの生徒は、それより早く登校し、1時間程度、朝勉をしている人がたくさんいます」、と。さらに信ぴょう性が高くなった。

朝、始業前に1時間。
自習室で、4時間半。
カフェテリアで、2時間。

合計すると7時間半。

でも、休憩や食事も必要だろうから、その時間を差し引くと、6時間半程度になる。つまり、正味6時間半である。中抜きアリの6時間半ではない。

話しは変わるが、先日、首都圏の郊外で、大学受験指導を行っている中規模塾の責任者と、お話しする機会があった。高校受験偏差値が50代の、お世辞にも進学校とは言えない高校生が中心だが、その塾の高3生たちは、平日に6時間受験勉強する。午後4時から午後10時まで、毎日のように塾で受験勉強する。高校受験偏差値50代の高校生でも、高3になれば、平日6時間勉強する。

これを知ってか知らずか、戸山生は、高2でも、平日6時間以上勉強する。そうしなければ、格下の高校生に負けてしまうかもしれない。難関大学を目指すとは、そういうことだろう。伝統が、戸山生を駆り立てているのだろうか。

畏るべし、戸山。

これぞ、本物の進学校である。

「ウチの子、戸山生ですけど、平日に6時間も勉強していません。」という声がでてくるかもしれない。それなら、なぜ、戸山を選んだのだろうか。戸山の強みである「浮きこぼれナシ」のメリットを享受できていないのではないか。