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三田学院

[2018年12月22日]

【受検と受験】大手塾の費用はなぜ高い?

なぜ、大手塾の費用は高いのか?

?巨額の宣伝広告費

頻繁な新聞折込チラシ、CMやDM、大規模無料親子教室、大規模無料テスト、大規模校門前チラシ配布

チラシやCMやDMに触れる機会が多いと、ウチの子にふさわしい塾かもしれないと勘違いしてしまう人が多いから、大規模宣伝は止められない。

?大規模戦略

合格実績を謳うには規模が必要である。分母が大きくなければ、高い合格者数を実績として謳えない。出店コストには多額の費用がかかり、出店当初は初期費用を除いても採算が悪い。これを既存店の売上から補填しなければならない。規模拡大路線の塾は授業料を高くしないと、全体で赤字になる。規模拡大の費用は既存教室で頂戴した授業料から捻出されることになる。

合格者数が多いと、指導力のある塾だと勘違いする人が多いから、大規模戦略はやめられない。

?ブランディング

良い立地、素敵な看板、綺麗な校舎、快適な設備、笑顔の受付嬢、安全保安員、大規模説明会などでブランド力を高め、売上を安定させている。

価格が高いほど優れたサービスだと勘違いする人が多いから、高級感戦略はやめられない。

?巨大な間接部門の存在

店舗数が多いと、店舗間のサービスの均一化の課題が生じる。また、巨額の資金を管理する資金部門、人員採用や配置などの人事労務管理部門、店舗開発や運営を行う不動産部門、宣伝広告を行う広報部門、経営戦略を行う企画部門など、直接学習指導や受験指導を行わない部門のコストが増大する。

?株式公開

株主配当が必要である。利益は塾生や従業員だけではなく、株主に分配される。売上高に占める利益額を見てみればよい。売上高200億円で、当期純利益が20億円なら、純利益の約半分が株主配当される場合、授業料の5%が株主配当に回り、残りの5%が内部留保となり、将来の配当原資となる。

資本調達のためには、配当や利息が払えなければならない。その分は授業料に上乗せされる。

これは経営学などの観点から、すぐに分かることだが、利益を上げている企業が、本質的に優れたサービスを提供できているという訳ではない。顧客の心を掴んだ企業が儲ける。顧客の心を掴むために、本質的に優れたサービスである必要はない。流行に乗ったり、競合他社が少なかったり、独占的な地位だったり、ブランディングに成功したりすればよい。

流行りモノや、勢いがあるモノにすぐに吸い寄せられる人も多い。「にわか広島カープファン」などもこれに近い。強いモノの近くにいると、自分も強くなったような錯覚が得られる。そういう人は、広島カープが負けだすと、スーッといなくなる。本物のファンではない。最初から本当の価値を認めてファンになった人ではない。そもそも本当の価値など分からぬ人たちである。いつのまにか、別の流行りものに接近し、またもや昔からファンのような顔をしているような人たちだ。

本物のファンではない。つまり、本当のお客ではない。

そうした人でも、大手は喜んで受け入れる。なぜなら、最高のカモだからだ。

カモがクレーマーなどに豹変しても大丈夫。それを見越して、間接部門に専門要員も配置してあるから。

?番外

クレーマー系の親、特攻玉砕系の親、勘違い系の親、誤認ズレ系の親などの存在が、授業料高騰圧力の一因となる。大手は間口が広いので、いろんな保護者が紛れ込む。対応に想定外のコストがかかる。それを承知で引き受けるなら、これらに対応する人件費を上乗せしておかなければならない。

まとめると、ザックリと言って、授業料の50%程度は、純粋な学習指導や受験指導には充当されないと思われる。もちろん、中小塾でも最小限の間接費は必要だから、その分を差し引いても、少なくとも30〜40%程度は、学習指導や受験指導には直接必要のない費用だろう。

大手塾のトータルの授業料は、中小塾の概ね5割増し(1.5倍)から10割増し(2.0倍)以上の料金だ。

それは、?〜?などの存在が理由だ。

もちろん、中小塾でも?のような保護者が紛れ込む余地は十分にある。それを引き受けるか否かの引受方針によっては、中小塾でも大手と変わらない体質のところもある。指導力ではなく、?への対応サービスで成り立っているような中小塾もある。もしかしたら、近頃の中小塾は、?対応で経営を成り立たせている方が多いのかもしれない。「介護型個別指導塾」などだ。

?変わり種(その1)

中学受検で不合格前提の指導を行い、中学コースへ継続させるために、小6で中1の授業料を先取りしている塾もある。中1無料の塾だ。これも当然に小6での授業料が高くなる。

?変わり種(その2)

駅前百貨店型学習塾だ。ここも大手の一角だ。顧客ニーズには何でも対応する戦略のようだ。品揃えは無限に近い。しかし、品ぞろえを増やせば、当然にコストがかかり、授業料に上乗せしなければならない。品揃えが充実しているというだけで授業料が高くなる。しかし、「何でも屋」というのは得意技がないのが常道だ。

それでも、大手に高い授業料を払いたいと望む?

低学年や小4で、ムリなく続けられそうと入塾すると、小5でキツくなり、小6でガツンときて、気がついたら「子は泥沼」で「親は火だるま」だ。ゆでガエルのように、そのことにすら気がついていない親子も多い。

それでも、近くにまともな塾がないから、大手に行くしかないか。

大手集団塾で成功できるのは、どんなに頑張っても、上位20%程度まで。

おなじ費用を払っても、残り80%に、当初に望んだような福は来ない。

それが、大手の仕組み。

輝かしいし合格実績も、ほぼ上位20%までの実績。

入試結果が出そろってから気がついても、もう遅い。

費やした膨大な時間と膨大な費用は返ってこない。