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三田学院

[2019年2月18日]

【都立中】消えた7,000人、失われた12年

平成31年度の都内の都公立中入試の概要は以下の通りだ。

■都立中学10校

受検者数:7,886人
合格者数:1,383人
不合格者:6,503人

■九段中等

受検者数:681人
合格者数:160人
不合格者:521人

不合格者合計:7,024人

■都立中学10校の繰上合格見込み人数:89人

*九段は非公表。

■正味不合格数合計:6,935人

今年は、約7,000人が、都内の都公立中高一貫校入学の夢が果たせなかったことになる。

これに、東京大学教育学部付属中等(中野区)と東京学芸大学国際中等(練馬区)を合算すれば、7000人以上が涙を飲んだのではないだろうか。

都内の都公立中高一貫校入試は、募集人数が約1,700人のところで、約8,000人が不合格となる入試である。

都内の私立中学校の募集人数は、平成31年度は、25,549人(東京都教育委員会公表)である。1都3県の私立中学校の募集人員は40,788人、2月1日午前の受験者数は37,864人(さぴあ調査)である。

私立中学受験生で、2月1日午前の受験をしない人は、ほとんどいないだろうから、実質倍率は0.93倍と、実質全入どころか、定員割れである。

中学受験を本気で志した層で、どこかの私立中学に入学できればよいなら、よほどの事情がない限り、必ず全員入学できる計算になる。

ところが、都内の都公立中高一貫校の場合は事情が極端に違う。受検者のほとんどが入学できない。合格率は17.5%だから、82.5%の人が入学できない。

そんな入試に、実質単願で勝負をかけるというのは、正気の沙汰とは思えないのは、私だけであろうか。都立中学入試も、中学入試だと心得て、現実的で適切な併願戦略を組んで挑むのが賢明だとは思わないだろうか。

さて、都立高校トップ校3校の募集定員は、約950人である。都立中入試で消えた約7,000人が再挑戦しても、またもや、合格率は約15%と、極端に低い合格率となる。合格者より、合格できない人が何倍も多い。

九段に落ちたら、日比谷でリベンジ?

都立中に残念になったら、都立高校トップ校で夢を果たすというのは、さらに厳しいのだ。実現できるのは、都立中受検を経験した人の、ほんの一部でしかない。実現した人がいるということと、自分も実現できるということは、同義ではない。ほとんどが実現できないのだから、自分も実現できない可能性が高いと見積もるのが合理的だ。

消えた約7,000人の他にも、中学受験をしなかった成績優秀者層が、競争に加わる。都内高校受験生約60,000人のうち、上位10%が参戦すると見積もると、約6,000人となる。合算した13,000人で、950の席を奪い合えば、実質倍率は14倍近くになり、合格率は約7.3%となる。都立中入試よりも、さらに厳しくなる。

都立中がダメなら、都立高校進学校?

涙を、二度飲む、ことになりかねない。

・全事象の生起確率を合理的に見積もってみる。
・最悪のケースも想定し適切な戦略ミックスを立てる。

受験で負けない闘い方の極意である。
希望に近い進路を叶える極意である。

単に「ボーッとしていて」、あるいは「自尊心が頭をもたげて」、あるいは「欲に目がくらんで」、詐欺師の甘い言葉に、簡単に騙されては、いけないのである。

詐欺師とは、悪徳大手進学塾や悪徳教育評論家だけとは限らない。中小塾や零細塾や家庭教師や個別指導塾であっても全く安心はできない。むやみに顧客を褒め、むやみに顧客に追随し、むやみに合格をほのめかし、財布を開かせるためなら、黒も白だ、赤も青だと語りだす輩は、みな詐欺師と見て、ほぼ間違いないだろう。

わが子を褒めてくれる塾講師や保護者を褒めてくれる塾講師を、「人間味あふれる、すばらしい講師」だと思ってしまう親子が少なくないことを、詐欺師はよく知っている。褒め殺しに弱い親子というのは、過度に自信過剰であったり、過度に自尊心が高かったりし、自分を過度に高く評価し、他者を過度に低く評価する傾向がある。総じて自分に甘く、必要な努力であってもしたがらない。だから、適切な指導のためにと、厳しい現実をもつきつけるような塾講師を嫌い、そして憎む。詐欺師はそこをついてくる。あっけなく罠に落ちる。

都立高校の一般入試は、ほぼマークシート方式である。私立高校の一般入試は、ほとんどが短答式である。これも、詐欺師に騙されてきた受験生親子には、寝耳に水であろう。適性検査の出題パターンとは、まったく連続性がない。むしろ、私立中学入試との連続性や親和性が強い。

自分だけは特別だという思いが強いほど、あるいは、自分の子だけは特別だという思いが強いほど、詐欺師につけ込まれる隙ができる。

合格発表の日に「自分の番号がない」というリアルで、やっと目と心が覚めても、もう遅い。実質単願だと、合格か不合格かは、天国か地獄かになる。生まれてからの12年間を、全否定されたかのような気持になりかねない。

もし12年間の「総仕上げ」として挑んだ受検なら、もし12年間の「総決算」としての意味を持った受検であったなら、生まれてから小学6年までの12年間は、「失われた12年間」となってしまう。不合格が確定してからでは、「失われた12年間」は、もうくつがえせない。

合格発表の日になって、気がつくことになる。平穏だった日常を「失われた12年」に変えたのは、あなた親子自身なのだと。

「輝かしい12年」を手に入れた少数派の受検生親子が歓喜に満ち溢れる傍らで、「失われた12年」が、あなた親子の歴史に刻まれる。その記憶は、薄れることはあっても、消えることはない。

3年後に「失われた15年間」とならないように、次こそは、透き通った心と目で、高校受験に臨もう。

もう、詐欺師のお世話になどならずに、立ち向かおう。
今度こそ、自分の力を信じて、しっかりと前を向こう。

次の3年間で、12年間を、取り返せ!
中学3年間で、12年間を、甦らせよ!

生まれ変われ、7,000人の受検生!
夢をつかめ、7,000人の受検生よ!

3年後に「輝かしい15年史」に塗り替えよ!