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三田学院

[2019年4月15日]

失敗の季節

多くの受験生にとっての「失敗の季節」が到来した。

春になると、進学や進級で環境に変化が起きる。何かと新しいことが多く、失敗しなようにと、周りの様子を伺いながら、自分だけ違った行動を取ることにリスクを感じる人が多い。

しかし、この「周りとおなじように行動すること」が、リスクであるということに気がつく人は多くない。

勉学や受験の世界では、大成功する人の方が少数派である。大多数は、失敗するか、失敗とまでは行かなくても成功しない。

つまり、周りの多くとおなじ行動するということは、成功を逃すということと、ほぼおなじ意味となる。

通学校が変わり、学年が変わり、クラスが変わり、何か良いことが起こりそうな、根拠のない予感が、危機感を希薄化させる。

フワフワと、時の流れに身を任せているうちに、貴重な時間が失われていく。

大した努力をしない所に、奇跡など起こらないのだと再確認する頃には、そんなことは百も承知で地道に努力を続けてきた者の後姿が、遥か彼方の先にかすれて見えてしまう。

どんな状況にあっても、適切な危機感を維持することが、成功への第一歩である。

特に、新中学1年生は注意が必要である。

4月はほとんど授業らしき授業がない。しかも、中1の1学期は、数学も英語もまだ小学校の延長線上の易しさである。このため、1学期の中間テストでは、平均点が80点や90点が当たり前となる。

ここで油断が起こる。中学校の学習内容はさして難しくないと勘違いする。その間違いには後々気がつくのだが、そのことに、この時点で気がつく人は少ない。

中学校内容を先取学習していないと、その実態を、前もって知ることは難しい。親や長兄長姉の経験談や忠告も、心に響かない。

気の合った仲間が選んだとか、気になった分野の内容だからとか、お気軽な理由で、安易に部活動に没入する道を選ぶ。

多くは、勉強はしっかりしますからと、空手形を切って親の了解を得る。いつの間にか、空手形を切ったことさえ忘れて、ほぼ「ノー勉」が日常になる。

いつのまにやら、テスト前だけ、勉強するフリをする日々となる。

こんな生活を送った人が、中3の最後の1年間で、失われた14年間を取り戻すことなどできる訳がない。

部活に励みながら輝かしい進学先に合格を決める人がいない訳ではない。しかし、このことは、全ての人が、部活をしながら輝かしい進学先に進めることを意味してはいない。

多くは、夢見た進学先とは程遠い進学先に進むことになって、どこかで何かを間違えたことに、薄々気がつく。しかし、多くの仲間が同じ失敗をしているから、人生など、こんなものかもしれないと、己の積年の怠慢から目をそらす。

もはや、たゆまぬ努力を続ける人との差は埋められないほどに大きくなっている。高校進学時点で、あなたが将来に属するであろう「階層」は、ほぼ決まってしまう。

この春、教室近隣の、ある公立中学校では、最終的に都立高校を受験するところまでたどり着けた中3生は、わずかに3分の1であった。都立高校の平均的な合格率は3分の2だから、概算で都立高校へ進学できた人は、9分の2、つまり22%程度という計算になる。

多くは、実質無試験合格の低偏差値私立高校に吸い込まれたということだ。

しかも、実質無試験とは言っても、内申で出願可能な私立高校は決まるから、一概に低偏差値私立高校とは言っても、内申が悪ければ悪いほど、集まって来る人もそれなりの高校になっていく。

春は希望の季節などと思っていては危うい。
春は失敗の季節だと思っておいた方が良い。

春で勝負の大半は決まると思った方が賢明だ。

中学へ進んだあなたも然り。
高校へ進んだあなたも然り。

初動が、次の3年間や6年間をほぼ決定づける。

学年ビリが、3年後に学年トップになったなどと言う話は聞いたことがない。それどころか、成績下位層が、3年後や6年後に、成績上位層になることも、ほとんどない。

中学入学後や高校入学後の早い段階で、卒業までの学内順位がほぼ決まってしまう。これは、中学校での勉強の仕方が小学校とは違うことや、高校での勉強の仕方が中学校とは違うことに起因する。中学校や高校での新たな勉強の仕方への適応度の差が、その後の学校での成績に大きく影響する。

受験の世界で、少しでも成功に近づきたいのなら、中1の1学期、高1の1学期、小4の1学期は、全力をもって勉学に励むしかない。本気で成功を望むなら、死に物狂いで勉学に取り組む以外にない。

高校受験する公立中学生の場合、中1の1学期の通知表の評点が、ほぼそのまま「内申素点」になると覚悟しておいた方がよい。努力をしているつもりのほとんどの生徒が、途中にたるんでしまい、最後にまた中1最初の成績付近まで戻るのが精一杯である。

3年間、常に成績(学内順位)を向上させ続けることができる人など、ほんの一握りである。卒業時の学年トップは、入学直後の最初から学年トップであることがほとんどである。

あなたが努力しても、あなたの努力が他を有意に引き離さない限り、あなたの成績は改善しない。アナタの努力が人並みなら、成績は横ばいである。あなたの努力が人並みに及ばなければ、あなたの成績は下がり続けることになる。

天才でもない限り、部活や学校行事や家族行事や友達遊びになどに、うつつを抜かしている余裕などないはずだ。

無責任な、だらしない、危険なバイアスに満ちた、他人の行動や言動を、参考や言い訳にしてはいけない。他人は、あなたの失敗の責任を取ってはくれない。

失敗した人が歩んだ道を選んではいけない。
成功した人が歩んだ道を選びなさい。

失敗した人が歩んだ道を進んではいけない。
成功した人が歩んだ道を進みなさい。