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三田学院

[2019年5月7日]

【都立中】大手塾の志望校特訓コースのカラクリ

近年、私国立中学受験指導が中心でありながら、都公立中高一貫校の合格実績を伸ばしている、大手塾がある。

生徒募集のインパクトが強いことから、最難関都立中学に絞った志望校別特訓コースを設けている。

他の大手中学受験指導塾も警戒感を露にしているが、「コバンザメ」商法の典型的な手法である。合格力のほとんどを、他塾で養成してもらい、最後の合格実績だけ、横取りする商法だ。

実際には、もともと通っていた別の塾の合格実績にも計上されるから、合格者数はダブル・カウントとなる。

ある都立中学の合格者数は、大手塾を合計しただけで、定員の1.5倍以上になる。この都立中は、大手以外の塾からの合格者数も、定員の約半数ほどいるから、すべての塾の合格実績を合計すると、定員の2〜3倍の合格者数となる。

この、ある大手塾のコース責任者が、説明会で興味深い発言を繰り返しているとの情報が入った。

「落としてはいけない受検生を、4〜5人ほど不合格にさせてしまった。反省している。」

何も知らない保護者の中には、なんと真剣に受検指導をしてくれているのだろうかと、思ってしまう人もいるかもしれない。実にお幸せな保護者である。

ある大手塾がどこかを特定されてしまわないように、概数で説明する。

志望校別特訓コースの総人数は、約150人であった。合格者数は約50人であった。不合格者数は約100人である。しかし、不合格にしてはいけないのに不合格にしてしまった人数は約5人である。つまり、不合格者の約95人は、始めから不合格が予定されながら、志望校特訓コースに通った受検生、ということになる。

もう、見抜けたであろうか。

まだ見抜けない人のために続けて説明する。この大手塾は都公立中高一貫コースも常設している。この常設コースからも、この志望校別特訓コースに、ほとんどが並行して通う。残りは他の大手塾の成績優秀者の寄せ集めである。しかも、他塾からは選抜試験を行って集める。さらに、合格確実な他塾生は授業料無料で通ってもらう。

これで見抜けたであろう。

志望校別特訓コースからの合格者のほとんどは、授業料無料の選抜生なのである。約3分の1の生徒の授業料をタダにしても、残りの約3分の2から、しっかり授業料を頂けば、採算がとれる仕組みなのである。

落としてはいけなかった受検生の約5人は、授業料無料で通ってもらった、合格実績に計算できるハズの受検生であったに違いない。

コバンザメであろうが、他人のフンドシであろうが、合格者数を積み上げることができれば、次の生徒募集につながる。つまり、商売できる。そして、儲けることができる。だから、ヤめられないし、トまらない。

合格確実な受検生を、他塾からでも、どこからでも招聘して合格実績を作れば、その何倍ものカモが集まって来てくれる。

大手塾は、過去の膨大な経験から、カモの集め方を熟知している。ボーッとしている保護者は、一瞬で完全に騙される。ボーッとしていない保護者でも、合格者数に目が眩むと判断力が低下してしまう。

カモのほとんどは、カモられるだけカモられて不合格で終わる。中には、誤差として合格する人もいるかもしれないが、確率は極めて低い。むしろ、プロの目から見て、小6の後期で合格が見積もれなかったカモ受検生だから、合格した後の方が心配だ。

それより、カモでなくても不合格になる人がいるということは、その志望校特訓コースの効果は、かなり疑わしい。つまり、受講しても、受講しなくても、結果はほぼ変わらないということだ。

そうだとすると、授業料無料で通った受検生も、合格には必要なのない時間を拘束され、次年度の生徒募集の客寄せパンダにされたという意味で、カモにされたことに変わりないのかもしれない。

しかし、受検生親子の多くは、小6の夏が過ぎ、直前期になると、藁をもつかむ気持ちになるだろうから、志望校特訓商法にアッサリ落ちる。大手は、志望校特訓コースで最後の最後まで商売をする。

このようして毎年のようにカモにされる人がいる。しかも、年々増えているようにさえ感じる。いったい、どこまで、エスカレートするのであろうか。