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三田学院

[2019年5月20日]

【都立中】本郷という選択

本郷中学

都立中単願受検の人には聞きなれない学校名かもしれない。

しかし、小石川の併願合格先として、毎年のように名前があがる常連校である。両国や桜修館の併願合格先としても常連校だ。

共学の併願合格校には、小石川では渋谷学園渋谷と広尾学園、両国では広尾学園と安田学園(先進特待)、桜修館では渋谷学園渋谷と都市大等々力(S特)が多い。安田学園と都市大等々力は適性検査型の入試回があり特待制度もある。4科型でも特待制度がある。しかし、特待合格できるようなら、どこかしらの都立中には合格できるだろうから、実質的な併願校にはならない。併願校というより、占い校、保険校という位置づけになるかもしれない。本気の併願の視点からは、併願候補は渋谷学園渋谷と広尾学園になろう。ただし、学力試験型の4科のみとなる。

適性検査おママごとでは合格は難しい。

本郷はJRと都営地下鉄の巣鴨駅が最寄駅、安田学園は錦糸町駅の隣の両国駅、都市大等々力は城南地区の東急線沿線で、いずれも地理的に、つまり通学的に、条件が整っている。渋谷学園渋谷は、都内共学校の最難関校の一つであり、共学志向の受検生親子にとって目標校とするに値する。

本郷以外の男子校では、巣鴨、世田谷学園、攻玉社などの名前を毎年のように見かける。もちろん、御三家との併願組もいる。小石川だと、麻布に合格していても不合格になる人がいる。女子校では、吉祥女子、頌栄女子、鴎友、大妻などが多い。小石川だと、御三家の、桜蔭や女子学院を辞退して入学してくる強者も毎年いる。

この本郷、偏差値は2月1日が70、2日が73、5日が75である。おなじ模擬試験で小石川の偏差値は72である。両国が68、桜修館が65、九段が64である。

偏差値70以上となると、私国立中学としては、かなりの難関校である。

御三家:開成、麻布、私立武蔵
新御三家:駒場東邦、海城、巣鴨

と言われるが、個人的には勝手に四天王という分類で難関校を認識している。

四天王:開成、麻布、私立武蔵、駒場東邦
新四天王:海城、本郷、芝、巣鴨
続四天王:世田谷学園、攻玉社、城北、成城

四天王の私立武蔵と駒場東邦、新四天王の海城と本郷の4校は、実態的には、難易度評価に差をつけがたい。現状では、巣鴨と続四天王は大差がない。大学附属ではない男子校としては、これらの四天王群が、都立中の上位校へ本気で合格を目指して残念になったな場合に、進学しても満足できそうな私立校となろう。

尚、成城と成城学園は、まったく別の学校なので、お間違えのないようにお願いしたい。

75:筑波大学附属、本郷3、海城2、渋谷学園渋谷2・3
74:駒場東邦、私立武蔵、早稲田実業、慶應普通部、慶應中等部
73:本郷2、海城1、渋谷学園渋谷1
72:小石川、早稲田高等学、広尾医サ、芝2
71:広尾本科2
70:広尾本科1、本郷1、芝1、巣鴨(算数)

小石川と本郷なら、今や多くは小石川が入学先として選ばれるかもしれない。桜修館か九段なら、いまだに本郷であろう。両国だと開成あたりでないと辞退の可能性は低いのではいだろうか。

お伝えしたいのは、都立中の上位校を目指すということは、あるいは、都立中の中堅校に上位合格するということは、難関私立を目指す受験生と互角に闘える実力が必要だということである。

この本郷、2020年度を最後に、高校募集を取りやめる。

すべての受験回で偏差値が70を超えたことから、もう中学入試だけの生徒募集で十分だと判断したのかもしれない。あるいは、少子化と中学受験率の上昇で、高校入試で中入生を超えるような実力の受験生を集めることが、難しくなったと判断したかもしれない。

そうなると、今の中学2年生からは、高校受験で、本郷を併願できなくなる。筑波大学附属駒場高は別格としても、筑波大学附属高や東京学芸大学附属高、開成高や渋谷学園幕張高といった最難関を除けば、私立大学附属校の他は、男子校なら巣鴨高くらいしか併願の選択肢がなくなる。ほんとに限られた選択肢しかなくなってしまう。

これは、難関都立高校を目指す高校受験生にとって、厳しい状況がさらに深刻化することを意味する。そもそも、難関都立高校を目指す高校受験生にとって、ちょうどよい併願先がほとんどなかったところから、さらに本郷が抜けるのである。

都立高校受験は、実質的に一発勝負である。学業成績優秀者にとって、中学受験を選択しないということは、あるいは中学受験で成功できず高校受験へ廻るということは、自らの進路の選択肢を、大幅に狭めるリスクが高い。

中学受験率の上昇は、こうしたことも背景にあるのかもしれない。私立か国公立か問わず、名門中高一貫校が高校募集を停止し、中学からの入学者しか受け入れなくなると、その学校で学びたいのなら、中学受験で合格せざるをえなくなる。

中学受験を選択肢に入れないということは、進路選択を大きく狭めることになりかねない。高校受験は、今やリスクの高い進路判断と言えないだろうか。

ここ数年で、広尾学園本科、三田国際、成城などで、高校募集の停止が相次いだ。

本郷の高校募集停止は、このことを改めて問いかけている。

高校受験を選択し、都立高校進学校を目指すのは自由だが、そこに合格できなかった際の、次善の策としての進学先選びが、ことのほか難しいということだ。私国立高校の偏差値ランク表をご覧になられれば分かるはずだ。

*偏差値は、しゅともしの、本年4月の予想偏差値。