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三田学院

[2019年5月22日]

【都立中】悪意のない楽観が、罪深い

初めて模擬試験を受ける親子に、いつもお伝えしていることがある。

「自己評価よりも、10ポイントぐらい低い偏差値が出るかもしれないと覚悟しておいてください!」

ほとんどの場合、的中する。

合格判定のために登録された志望校リストを見ると、そのことが判明する。

ほとんどの人が、「D判定」や「E判定」だらけとなる。

「C判定」以上が付いていれば、少しは自己認識できている。
「B判定」以上が付いていれば、ほぼ自己認識ができている。
「A判定」ばかりだと、自己認識が厳しすぎるかもしれない。

多くは、80%偏差値で10ポイント以上高い学校を、第一志望に書く傾向にある。第五志望であっても「E判定」というケースも珍しくない。

偏差値の10ポイント差というのは、テストの10点差とは、大きく意味が違う。偏差値50と偏差値60の間には、全受験生の34%がひしめいている。偏差値50から偏差値60になるということは、全受験生の34%を追い抜くことを意味する。

これは偏差値40と偏差値50でも言える。偏差値50から±10ポイント言うのは、それぞれμからの±1σだから、正規分布表から、簡単にその密度(累積度数)を計測できる。

受験生親子を批判しているのではない。人は楽観的な見通しを持ちたがるということを、知っておいてほしいだけだ。

「受験学年になってからでは、小6になってからは、偏差値を大幅な向上させるのは、並大抵の努力では難しいですよ!」

そう聞いても、小6のGWが過ぎ、本番まで残すところ半年少々になって、持ち偏差値より10ポイント以上も高い学校ばかりを受験校候補にし続ける親子も多い。

持ち偏差値40前後なのに、偏差値70以上の中学校を第一志望校に書き続ける親子もいる。判定する第一志望と第五志望で、偏差値がいつも20以上離れている親子もいる。

ここでも、受験生親子を批判しているのではない。人は楽観的な見通しを持ちたがるということを、知っておいてほしいだけだ。

楽観的なことは、けっして悪いことではない。少なくとも、悲観的すぎるよりはマシかもしれない。悲観的な親子は、ほどほどのところで諦めてしまい、努力することを止めてしまうことが多いからだ。

しかし、楽観的すぎるのも、賢明とは思えない。必要な努力を無意識に怠り、本格的な取り組みを無意識に先送りして遅らせ、結果として本気の志望校すべてに不合格となるリスクが高まることになりかねない。

最適校や抑え校の偏差値は、小5までにクリアしておくことをお勧めする。現実的な挑戦校は、最新の持ち偏差値の、5ポイント上ぐらいまでが堅実だ。みんなが本気になり、全力で挑んでくる小6になってからでは、アナタの相対的なポジションを大幅に改善するのは、至難の業だからだ。

もちろん、挑戦校に記念受験するのはかまわない。しかし2月1日以降なら、貴重な受験回をムダにすることになりかねないことも知っておいた方がよい。挑戦するなら、12月校や1月校でやっておけば済む。ただし、メンタルにも配慮すれば、それもおススメではない。破滅のリスクを高めるからだ。個人差はあるが、人の心は意外にもろい。

中学受験は、小4と小5で趨勢が決まる。

そう言い続けているのには、理由があるのだ。

アナタに、小6になってから、爆発的な力を発揮する能力があるなら別だ。でも、そういう親子は多くない。かなりの少数派だ。多くは偏差値が大きくは改善しない。偏差値とは、相対的な学力評価だからだ。アナタの学力が大幅に改善しても、ライバルがさらに改善すれば、偏差値は下がるということを理解しておくべきだ。

走り高跳びで、何度挑戦しても100cmしか飛べないでいた人が、ちょっとや、そっとの努力で、150cmを飛べるようには、ならない。アナタが+10cmを飛べるようになっても、その間に、ライバルのみんなが+20cmを飛べるようになっていたら、アナタの偏差値は下落する。

スポーツも、勉学も、甘く見てはいけない。

まだたったの12年ではない。すでに12年の積年の積み重ねが、今ここにあるのだ。数ヶ月や半年で、簡単に覆せるものではない。

受験学年になったら、早々に、受験予定校の多くを「A判定」と「B判定」で揃えておくのが賢明だ。それでも、秋以降に失速するケースがでてくるのだから。それが競争試験の怖さというものだ。目標をより確実に達成するためには、しかるべき時期に、しかるべき準備を始め、そして、余裕をもって完了すべきだ。

その悪意のない楽観が、罪深い事態を招くこともあるのだ。
その悪意のない楽観が、アナタを苦しめることになるのだ。

その悪意のない楽観を、悪意に満ちた業者が狙っているのだ。

アナタだけに奇跡が起こることなど、まずありえない。
起こったとしても、それは奇跡ではなく、新たな悲劇の前兆だと思った方が良い。

謙虚に、素直に、客観的に、地道に、堅実に、取り組むことをおススメする。

判断の先送りは、時間の浪費と大差がない。
夢を見続けたら、夢が実現するのではない。
魔法のような話なら、詐欺かと疑うべきだ。

適切な判断と適量の努力こそが、アナタを成功へ導くのだ。
適切な判断と適量の努力こそが、アナタの夢を叶えるのだ。