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三田学院

[2019年6月5日]

【都立中】私立小石川?

最近、都立小石川の前々校長、栗原先生にお会いし、お話しする機会があってので、記しておこうと思う。

栗原校長は、都立小石川高校の最後の校長、かつ、都立小石川中等教育学校の第二代校長である。前校長の奈良本第三代校長が、純粋な都立小石川中等の実質的な最初の校長になる。やや複雑ではあるが、一定期間、都立小石川高校入学者と都立小石川中等入学者が混在したために、そうなる。現校長は梅原校長である。

栗原先生は、現在、成城中学高校の校長を務めておられる。

前校長の奈良本先生の近況もお伺いできたが、今回のテーマには直接関係ないので、ここでは触れない。

この、成城中学だが、都立小石川と因縁が深い。

成城中学の第9代校長である澤柳政太郎先生は、旧制第二高等学校(現東北大学)、旧制東北帝国大学、旧制京都帝国大学の学長を歴任された、教育界のレジェンドであられるが、彼の後輩かつ研究仲間であったのが、初代都立小石川高校校長(旧制府立五中校長)の、伊藤長七先生であった。ともに、大正自由主義教育運動の中心的な役割を果たしている。

澤柳政太郎先生は東京帝国大学へ、伊藤長七先生は東京高等師範学校(現筑波大学)へと、それぞれ進まれるが、大正自由主義教育運動の中で親交を深められた。伊藤先生を旧制府立第五中学初代校長に推挙された一人が澤柳政太郎先生である。

おなじ自由教育運動の教育者が伝統を築き上げたのが、小石川であり成城である。小石川は共学化したが、成城は男子校のままであり続けた。栗原校長は、旧制五中(男子高時代の小石川)を彷彿とさせる学校が、成城であると、語られた。「私立男子校小石川」。成城は、そう呼ぶにふさわしいDNAを持っている。

授業料は安い。サイエンスコースなどを設置していないが理科実験設備が充実している。教室にはエアコン、空気清浄機、CO₂センサー、照明の自動照度コントロールなどが完備し、空調が貧弱な都立高校などと比較して学習環境はすこぶる良好である。校内の夏期講習はすべて無料と良心的だ。

また、中1から利用できるカフェテリアは午前9時半から利用でき、早朝から自主登校して自習室で勉学に励む育ち盛りの男子生徒には、実にありがたい。午前中の授業休み時間の10分で空腹を満たせる。空腹に耐えきれず持参した弁当を早弁しても、昼にカフェテリアを利用できる。おにぎりと総菜パンが買える自動販売機もあり、第3の砦として男子を守ってくれる。

腹が減っては戦はできぬ。
腹が減っては学に励めぬ。

尚、成城第二中学として発足した、世田谷区の成城学園は、別の学校法人が運営している。

ここまで書くと宣伝のように聞こえるかもしれないが、本論はこれからである。

この成城中学、しゅともしの偏差値では65くらいの難易度である。小石川が近年難易度を偏差値70以上まで上げたが、どちらも難関校であることには違いない。

成城は、2月5日に第三回入試を行う。もちろん、全ての回が学力試験であり、適性検査型入試は行っていない。しかし、この第3回入試、手続締切が2月9日の午後4時である。

2月3日に小石川を受検し、合格発表まで悶々とするくらいなら、2月5日に成城を受験してみてはいかがだろうか。早めに合否が分かって一安心できだけでなく、都立の合格発表日の当日までに入学手続きの必要はないから、入学金を事前に払い込んでおく必要はなく、都立中合格の際に大金を捨てなくて済む。

「都立小石川」に不合格なら、「私立小石川」に進むという選択肢もあるということだ。

次の募集要項が確定して、今まで通りに、2月9日が入学手続き締切日であれば、一つの選択肢になるのではないだろうか。

もし、この日記を読まれた方が殺到すると、2月5日は偏差値65では済まなくなる可能性があるので、要警戒である。それでも、偏差値75の本郷(2月5日)を、難易度で超えることはないだろうから、成城の合格を維持しながら小石川の合格発表を待てる可能性が高い。

男子校では、開成も、麻布も、本郷も、芝も、巣鴨も、世田谷学園も、2月9日まで入学手続きを待ってくれない。2月9日まで待ってくれる難関校は、成城の他には、渋谷学園渋谷か広尾学園くらいしかない。しかも共学校である。さらに渋谷学園渋谷は最難関校の一つである。もちろん、最難関校や難関校でなければ、選択肢はたくさんあるが、多くの都立中受検生親子の目には、魅力的に映らないであろう。

「都立小石川」などの難関都立中を目指して受検勉強に励み、もし不合格になった場合に、地元公立中学や、適性検査型入試を行う私立中や、特待生入試を行う私立中への進学で、本当によいのか、冷静に検討されてみてはいかがだろうか。

中学受検に限らず、受験というものは、事前に「適切なダメージ・コントロール対策」できている親子こそが、真の勝者になれるのだから。

悔いの残らない受検をしよう。