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三田学院

[2019年6月11日]

【都立中】リニューアル校のリスク

都立中学の人気も衰えないが、私立中のリニューアル校も熱い。

そこで、リニューアルして急に人気が上昇した学校に潜むリスクについて考えてみたい。

先日、あるリニューアル校へ調査へ伺った。塾向けではなく、一般の学校説明会に参加させていただいたのだが、かつてないほどの盛況ぶりで、会場である大講堂の座席は不足し、急遽臨時座席を設置するほどの混雑であった。

数年前までとは一転、参加している保護者の雰囲気も大幅に向上し、まるで別の学校の説明会に参加しているような感覚さえ覚えた。

説明会場の受付に到着して最初に感じたのは、受付スタッフの手際と対応の悪さであった。お手伝いしてくれていた生徒が先生と呼んでいたので、教員だろうと思われる。

参加者の急激な増加に、今まで通りの手順では、上手く回らなかったのかもしれないが、とにかく過去に訪問した学校の中で最悪の対応であった。手際が悪いだけではなく、非常に感じが悪い。参加者が多く疲れていたのかもしれないが、挨拶もない。目も合わさない。お手伝いしてくれていた生徒が飽きれるほどヒドイものであった。結局のところ、生徒に案内されて会場までたどり着けた。生徒だけで運営した方がまだマシだったのではないだろうか。

これだけではない。校内案内や設備見学の際の案内も最悪であった。とにかく、次はどうすればよいのか分からない。これも参加人数が少なかった頃には、適当に対応しても戸惑う参加者が少なかったことの名残であろう。

生徒の印象は悪くないというか、想定以上に良好なのに、学校スタッフの印象がすこぶる悪い。いったい何が起きているのかについて確認しなければならないと強く感じた。

学校幹部の説明を聞いて、「これだ」と思った。

「本校では教員の異動はほとんどありません。」

リニューアルして人気が出ても、学校のソフトインフラの中核をなす教員は何も変わっていない。人気が出て優秀な生徒が集まるようになっても、人気が低迷していたころと、教員は同じまま。つまり、偏差値がここ数年で大幅に上昇しても、教員は偏差値が大幅に低かった頃のまま。よって、リニューアルに教員のレベルがついていけていない。

「これからも教員の異動はほとんどありません。」

リニューアルして保護者や受験生の注目や期待を集め、優秀な生徒が入学してくるようになっても、実は中身は昔のまま。今後も変わる気配はなし。

もともと、在校生にくらべて教員の能力がオーバースペックであったなら、さほど心配する必要はないかもしれない。しかし、急に優秀な生徒が集まるようになっても、教員は昔の低迷校のレベルのままだと、チグハグな指導体制になるのではないだろうか。

都立中学の人気で、私立中学の改革も加速している。

しかし、流行や人気に便乗するのは、リスクもあるということだ。

自分の判断は、流行や人気には左右されていないと、思い込んでしまうのも危ない。

そもそも、人気の高い学校や、知名度の高い学校や、偏差値の高い学校を、良い学校だと思うこと自体、自ら判断していない証拠だ。人気や知名度や偏差値の高さは、その他大勢の判断の集約結果である。つまり、他人の判断である。正しい保証はない。あなたにふさわしいという保証もない。他人はあなたの判断の責任を取ってはくれないのだから、あなたが自分の目でしっかり見極めるしかない。

都立中学では、都立高校進学校とおなじく、英語や数学などの主要教科の教員は公募され、かつ選抜されるため、それなりに質が担保されている。しかし、主要教科以外の教科や実技教科は、通常の人事異動で配属される。つまり平凡な都立高校と大差がない。

何事も、過度な期待をしたり、惚れ込んだりせずに、冷静に見極めるのがよかろう。