[2019年6月23日]
本年度6月15日土曜日、豊島岡女子中学高校のホームページ上に、衝撃的なニュースが掲載された。
この度、本校の高等学校入学試験に関して下記の通り変更することになりましたのでお知らせいたします。
記
令和4(2022)年度より募集を停止します。
令和2(2020)および令和3(2021)年度の入学試験は従前通り90名募集で実施いたします。
今の中1からは、高校受験の募集枠はなくなる。
高校募集を行う女子校の最難関校である、豊島岡女子が、高校受験の偏差値表から消えることになる。
都立中を目指すのだから、関係ないと思っているようでは甘い。
都立中に残念になり、難関高校受験に回るとなったときに、いきなり厳しい現実に直面することになる。高校受験は、都立高校のことばかりを考えていれば済むという話ではない。
難関都立高校は、ほぼ実力がおなじ受験生が定員の約2倍で競争する。不合格者のほとんどが、実力がありながら残念になる。
その時に選べる難関私立高校の一つがまた減るのだ。難関私立高校は、もうほとんどなくなる。中学受験では、さほど入学難易度が高くなかった私立学校に進むという選択肢しか、ほぼ残らなくなる。よって、高校受験で難関進学校を目指すなら都立高校が主力となる。しかし、都立高校難関校に不合格となった時はどうするのかまで考えている人は少ない。
中学受験とは大きく違い、滑り止め進学先は、何らかの方法で必ず確保しておかなければならない。しかし、難関都立高校を目指す場合も、難関私国立高校を目指す場合でも、併願優遇や単願推薦で選べるような私立高校に、名門進学校はほとんどない。難関私立高校も国立附属難関高校も、難関私立大学附属高校も、一般入試で合格して、安全を確保しておくしかなくなる。ところが、定員が中学受験よりも桁違いに少なくなる。勢い激戦度が異次元レベルとなる。
その有力候補から、豊島岡女子高校が消える。
難関男子校では、海城、成城が消えた。本郷も1年後に消える。
難関共学校では、広尾学園本科が消えた。
難関女子校では、豊島岡女子が消える。
おもだった私立中高一貫校は、中学募集しか行わない学校がほとんどとなる。高校受験でトップ校を狙うなら、都立高か国立大学附属高か難関私大附属高しか、実質的になくなる。
難関男子校は、開成くらいしか残っていない。
難関共学校は、都内は、ほぼ全滅だ。
難関女子校は、都内は、ほぼ全滅になる。
御三家と最難関で、ほぼ唯一残る開成高校は、高校募集を突然打切ったりしないであろうか。そうなると、男子校もほぼ全滅状態になる。
首都圏の中学受験率の上昇、少子化による受験生総数の減少、都立や県立高校の復活で、高校募集では優秀な生徒を集められなくなくなったことなどが、今回の豊島岡の決定の要因であろう。
そもそも、優秀な生徒が、もれなく中学受験するご時世になったことも要因であろう。私立中学受験するのは富裕層に限ったことではない。中学受験しているのは、ほとんどが経済的中間層である。つまり、普通の家庭である。
都心部では3人に2人が受験を試み、2人に1人が私立中学へ進む。経済的に中間層だから私立中学受験しないという選択をする親子は、もはや少数派である。
都心部で、私立中学受験しないという選択をしているのは、実は、普通だと思っている貧困層か、カミングアウトしずらい学校にしか合格できそうにない低学力層か、高校受験で明確に目指す学校があるか、おもに男子でまだ著しく幼すぎるか、盲目的な公立学校信奉者か、ボーッとしていて中学受験準備の開始に間に合わなかったか、くらいということになる。もちろん、経済的中間層でも、4人兄弟など子だくさん家庭には、教育費の負担感は大きいかもしれない。いわゆる子だくさん貧乏家庭である。それなりの収入があっても学費の負担感が他よりも大きくなる。
都立中など公立中高一貫を目指す家庭であっても、経済的に余裕のある親子は多い。経済的に余裕がないから都立中を目指すと言うひとがいるが、そうした意見を聞いて、多くの都立中受検生親子や、多くの私立中受験生親子は、どう感じるだろうか。実際に都立中に合格する家庭には、経済的には余裕のある家庭が多いことも知っておいた方がよかろう。国立大学の合格者や進学者が、実は経済的に余裕のある家庭が多いこととおなじである。国立大学へ進む人は経済的に余裕のない家庭の子なのだろうか。
経済的な理由で私立中学受験をしないと判断されるのであれば、きれいさっぱりと、地元公立中学へ進学するのが最も安い。高校受験での通塾先は選択肢が多く、仮に大手塾を選んだとしても、中学受験や中学受検に比べて、塾代は遥かに安くつく。中小塾には、さらにリーズナブルな授業料の塾もある。高校受験の方が、難易度の選択幅が大きいため、欲張らなければ、塾なしでの合格可能性はより高くなる。
これは邪推であり、証拠をつかんではいないが、東京都の私立高校実質無償化で、高校受験で私立学校を選択する受験生の諸事情が、私立進学校側にとって好ましくない方向に変貌した可能性もある。タイミング的に、私立高校授業料の無償化以降に、高校募集を停止する難関私立高校が目立つことが、この仮説を成り立たせる。
話しは戻るが、都公立中高一貫校による公立学校による中学募集が、眠れる中学受験生までをも、たたき起こし、学力自慢は、ほぼ洩れなく中学受験に参戦するようになったことも、中学受験率の上昇に寄与した可能性が高い。
皮肉なことに、都立中という選択肢の広がりが、難関私立学校の高校募集停止を後押しし、高校受験における選択肢の幅を狭める方向に作用してしまったのである。
もう何度も申し上げているが、難関大学を目指すのであれば、中学受験しないことのリスクを、つまり、高校受験を選択することのリスクを、今一度確認された方がよかろう。
それなりの学力がありながら、都立中に残念な場合は、地元公立中学進学という考えで、本当に大丈夫なのだろうか。
高校受験でも「都立」に失敗したら、どうするのか。
中学受験でなら、楽々合格できたであろう私立学校に、青色吐息で合格を勝ち取りに行くことに、違和感を感じないのであろうか。
高校受験のことは中学生になってから考えるのでは甘い。
高校受験のことを調べずに中学受験に突き進むのも甘い。
中学受検や中学受験を、するかしないか考える前に、高校受験についても、しっかり調べ上げておくべきであろう。そして、中学受験の準備を始める時期より前に、十分な調査を終えておくべきだろう。時期としては、小3までに一旦終えておくのが安全だ。
残り物のような私立高校に、喰らいつく?
それとも、千葉や埼玉の私立高校に通う?
「どうして、こうなっちゃったんだろう?」
そう思ってからでは遅い。