[2019年6月25日]
先日、ある公立中高一貫校の、合格者とその保護者が数十名ほど集まる集会にご一緒させていただいた。
学年はバラバラである。すでにご卒業された方や、その保護者も含まれる。
当たり前ではあるが、「学校説明会などに参加される受検生とその保護者」との違いが鮮明である。
「合格する受検生とその保護者」と、「合格しない受検生とその保護者」は、明らかに印象が違う。
「合格する受検生とその保護者」の集団は、非常に感じが良い。逆に、「合格しない受検生とその保護者」がほとんどを占める集団は、それほど感じが良くない。明らかに違う。
もちろん、全体の印象なので、個々人に目を向ければ、そこにも違いはある。トンデモ親子が紛れ込まないとは限らない。それは、名門私立中でもおなじだ。ここで言いたいのは、集団としての違いが鮮明だということである。
つまり、入学者選抜が、凡そ有効に機能しているということだ。
もちろん、入学直後の学力差が大きいように、必ずしも学力だけで選抜されていない面は否めない。その点に関しては、難関国立大学附属中や難関私立中学とは違う点だ。
小学4年生や少学5年生も参加する「学校説明会」などは、受検倍率を大きく上回り、定員の10倍以上くらいの、将来受検するかもしれない親子が集まる。
合格する者とその保護者も含まれるが、それは、入試日以上に、きわめて少数派となる。よって、全体の印象は、不合格予定者の雰囲気に限りなく近くなる。
ここに、判断を誤らせる落とし穴の一つがある。
制服を着た公立中高一貫生は合格者のみである。それを見るのは、そのほとんどが合格できない受検生予備軍である。誰が合格する人か、誰が不合格になる人か、素人には見分けがつかない。
そうした、ほとんど合格しない受検生予備軍集団の中に入り、「合格した人だけ」を見るという状況下では、ここにいる受検生予備軍をランダムに抽出した集団が、入学後に、あんなに立派な中学生や高校生になれるかのような、錯覚を起こすことになる。
受検準備を本格化させる小4初の時点でも、実質的な倍率は、高く見積もっても実質3倍程度以内であろう。それが、小5初では実質2倍程度以内に、小6初では実質1.5倍程度に、入試日には、実質倍率は1.2〜1.3倍くらいには落ちついているのではないだろうか。
つまり、説明会場やオープンスクールに来ている親子は、ほとんどが不合格者予備軍だということだ。
合格者にとって、名目倍率はほとんど関係ない。倍率が2倍程度以上あれば、十分以上に激戦である。都立高校進学校の闘いを見れば一目瞭然だし、難関国公立大学の二次試験は3倍程度の学部や学科が多いことからも分かる。
地方の名門公立高校進学校でも、最終倍率が1.2倍を切るようなことは珍しくない。それでも選抜は機能している。
公立中高一貫入試において、倍率が非常に高いことで、メリットを受けるのはだれか?
どんなに頑張っても合格できない受検生親子(本人らはそう思っていない)と、それを承知の上で引き受ける悪徳学習塾ではないだろうか。
己の至らなさを、高い倍率の責任に、することができる。
学力100%で合否が決まらないことも、彼らには好都合であろう。少数派ではあるが、学力が不十分でも、合格者に紛れ込む人がいない訳ではない。
これで、すべてにスッキリ、合点がいくのではないか。