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三田学院

[2019年9月2日]

【都立中】想定超の最難関私立併願率

前回入試における都立中受検生の難関私立併願状況が想定をはるかに超えて多かったことが判明した。

情報源に配慮して、都立中名や、併願私立校名は伏せさせていただく。また、人数もさし障りない範囲で概数でお伝えする。

合格者ではなく、入学者の実態であることに、注意していただきたい。合格者を含めると、入学辞退者数分、難関私立中併願者の人数が増えることになる。ここでは入学者だけの人数である。

私立男子御三家の併願者:約20人
私立女子御三家の併願者:約30人
私立共学最難関の併願者:約40人

上記合計:約90人

入学者の大多数が、最難関レベルの私立中を併願受験していたことになる。最難関私立は、一部の帰国子女枠を除き、もれなく4教科学力試験型である。適性検査型の受検対策だけをしてきた受検生では、全く歯が立たないから、合格者の中で適性検査専門塾の出身者はマイノリティーであることが自明である。

つまり、合格者の大多数が、4科学力試験型で受検準備してきた受検生ということになる。

この事実は、どこかの適性検査専門塾が自慢げに発表している合格者数とは、つじつまが合わない。しかし、都立中側が示した人数やデータこそ信用に値するであろう。

この90人には、難関私立大学附属の併願者や、難関私立の併願者は含まれていない。具体的には、

慶應普通部、早稲田高等学院、海城、本郷、芝、巣鴨、世田谷学園、城北、攻玉社などは含まれていない。

慶応中等部はもちろん、白百合、東洋英和、鴎友、吉祥女子、フェリス、頌栄、立教女学院、大妻、共立女子、普連土、品川女子などは含まれていない。

早稲田実業、青山学院、法政大学、法政大学第二、東京農大第一、三田国際、国学院久我山などは含まれていない。

新御三家やその他最難関校に、難関校まで加えると、私立中の併願状況は、実はとんでもないことになっているのである。

毒舌の毒は、毒どころか蜜であったかもしれない。

この都立中、御三家「筆頭」を併願しながら、都立中に入学した生徒の人数が、男女合わせて2桁にのぼる。共学校最難関校を合わせると、倍増以上になる。というより、男女別学の御三家よりも、最難関共学校を辞退して入学してきた生徒の方が多い。

都立中上位校の合格者において、適性検査入試を行う私立中との併願は、もはや少数派である。

つまり、そのような私立中しか併願できなかった受検生の多くは、結果として都立中上位校には合格できず、入学者の中ではマイノリティになるということだ。

実際に、この都立中、大手都立中専門塾からの合格者は、クラスに高々5人程度しかいない。都立中は一学年が3クラスか4クラスだから、どう計算ミスをしても、どう集計を誤っても、一つの都立中専門塾から、一学年に50人も60人もの合格者がいるのはおかしい。この都立中が示した人数と合わない。おそらく、学校別模試の受検者などが合算されているのであろう。それを合格実績とするのが適切かどうかは、受験生親子が判断されたし。

都立中上位校は、適性検査型の中低偏差値私立中併願ではなく、4科型の高偏差値私立中併願が主流になったということだ。

都立中上位校への合格を目指すなら、他県の「公立中高一貫校合格体験」などは、以前から申し上げていることではあるが、参考にしない方がよかろう。

もはや、合格を競う相手が、違いすぎる。

都立中上位校への合格は、牧歌的な受検生にとって、さらに厳しくなったのである。

加えて、都立中上位校への合格は、難関私立を併願する受検生にとっても、さらに厳しくなったのである。

この「牧歌的な受検生」には、大手都立中専門塾から合格を目指す受検生も含まれると考えている。今春の都立中入試で、この大手都立中専門塾の全教室の生徒の中で、この大手都立中専門塾主催の模擬試験順位で、不動の上位を続けていた生徒が、合格発表の日の合格者リストに受験番号が載っていなかったという事態が発生した。

ある一つの教室の成績上位者ではない。大手都立中専門塾の全教室集計での成績上位者である。複数のルートからの情報だから、ガセ情報でないことだけは確かだ。当日に体調不良だったなどの情報はない。

もはや、牧歌的な受検指導は、通用しなくなったのではないか。いや、もともと通用していなかった可能性も高い。それが顕在化しただけであろう。なにしろ、随分と以前から合格率がすこぶる低い。送り出す受検生の人数が多ければ、自ずと合格者数も多くなるはずだから、受検指導の効果そのもが怪しい。

小4と小5を私立受験型で準備し、小6から適性型で準備するという戦略も、もはや通用しなくなるであろう。適性型に私立型を気休め程度に付加したような「拡張適性型」も、適性型の亜流でしかないから、期待薄だ。

だからと言って、小6まで、大手私立中受験塾で、一貫して私立受験型で準備するのが有利とは言えない。私立型主体で準備してきた受検生の合格率も高くない。負担が大きいのに、学力が高いのに、合格率が芳しくない。

この点は、別の機会に、業務に差し支えなければ、ご説明したいと思う。

次の入試予想では、桜修館と両国を警戒している。桜修館と両国の男子は、これまでとは全然違うような、想定を遥かに超えた激戦になっていく可能性がある。つまり、小石川に続いて、異次元難化へと進んでいく可能性があるということだ。両校の女子もさらに激戦になっていくであろう。

「都立中なら、最悪どこでもOK」という受験生親子なら、これらの都立中は避けた方がよいかもしれない。

しかし、中堅以下の都立中も、玉突きで大幅に難化する学校がでてきそうだ。九段Bが玉突き先としての最有力候補かもしれない。東西南北の、いずれからもアクセスがよいため、代替として選ばれやすい。都民枠の定員は小さいから、急激に難易度が上昇するリスクがある。

「都立中なら、最悪どこでもOKという受検生親子」にとって、残された選択肢は少ない。

「都立中の上位や中位校を目指す受検生親子」も、次回から、さらに合格が厳しくなって行くであろう。