[2019年10月15日]
東京を直撃した大型台風の影響で、いくつかの都立中で説明会などが中止や延期となり、スケジュール調整が難しくなっている方も多いであろう。
このうち、桜修館と九段の「適性検査問題説明会」の延期や中止は、心待ちにされていた受検生親子には打撃であったかもしれない。桜修館は延期となったが、その日に別の重要な予定が組まれている方もいるであろうし、九段は「願書配布説明会」と同じ日程を案内しているので、実質的にはなくなったのかもしれない。
まあ、「適性検査問題説明会」に参加したから合格できるというものではないので、実質的な影響はほとんどないかもしれない。
むしろ、他の入試イベントとの関係で、日程がタイトになってしまった方が影響は大きいであろう。
台風で入試イベントが中止になったことを幸いに、過去問演習や弱点補強などに取り組めた受検生も多かったに違いない。
この観点からも、台風の影響はニュートラルだったかもしれない。
もうこの時期、順調に仕上がっている子は過去問でしっかり得点できる。これは都立中に限らない。私立中でも、国立大学附属中でも、ほぼ同じである。
この時期から「まったくの不合格レベルを、合格レベルに持っていける受検生」の比率は低い。志望校特訓や直前特訓などは、大手塾や家庭教師の最大の「商売」チャンスでしかない。
もちろん、この時期に合格レベルにあっても、この先の総仕上げを怠れば合格から見放されるから、ここから全く合格者と不合格者が入替らない訳ではないが、もうこの時期なら、幅広に見積もっても、合格者総数の1.5倍以下であろう。これが、年が明けるとさらに縮小し、当日に合否を争っているのは、ボーダーライン付近の±0.25倍程度以下であろう。定員数ではなく合格者数であることに注意していただきたいが、実質的な倍率は、実は6倍などないのである。つまり、不合格になるのは、倍率が高いからではない。不合格になるのは、合格する実力がないからである。
さて話しは戻るが、実際に、家庭教師派遣会社から、頻繁に求人連絡が入りだすのが、この時期である。実力がある指導者の人手不足は深刻で、オファーされる授業料単価も目を疑うほどに高額であることが多い。実力のある指導者はすでに日程が詰まっていて求人には応じることはないから、こっそり内緒のアルバイトに励む多くは、新米や中堅の塾講師であろう。
アダム・スミス的には需要も供給も共に正しいのだから、口出しするのはいかがなものかと思うかもしれない。
しかし、オランダの球根バブルに見られるように、需要と供給は適切とは限らないし、その結果としての価格や料金も適正とは限らない。
まあ、そこまで言い出すと、中学受験における学校の入学難易度も、適正に形成されているかどうか疑わしい。
誰かが大学入試改革の不安を煽れば私立大学附属校の人気が高まるし、誰かが大学入試改革の内容の一部を過度に煽れば、公立中高一貫校の人気が高まる。リニューアルしたり、校名変更したり、共学化したり、特待入試を新設すると人気が高まる。
入試回数を増やして毎回の合格定員を絞れば難易度が上昇するし、午後入試を新設しても難易度が上昇するし、2月4日以降に入試回を設けて極小人数の定員とすれば難易度が上昇する。
アナタが目指す学校や、アナタの子が目指す学校は、アナタの子に最適な学校であろうか。あるいは、その受験は、最適な選択であろうか。
アナタとアナタの子は、受験する予定の学校を適切に評価できているであろうか。
入学難易度や、大学進学実績や、お化粧された教育内容や、世間の人気や、世間の流行りなどで、意図せず無意識のうちに、周りに影響されて選ばされてはいないだろうか。
アナタが本当に求めているものは何か。しっかりと見いだせているであろうか。
幸せな中学受験とするために、一番大切にしていることは、何であろうか。