[2020年1月21日]
都立中学の出願倍率(応募倍率)が、1月20日発表された。
一般枠の倍率は5.74倍と、昨年度の6.02倍から、0.28倍の低下となった。
一般枠の出願者数は7,897人で、昨年度の8,281人から、384人の減少となった。
出願者数を大きく減らし、倍率が顕著に下がったのが、小石川の男女と、武蔵の男子である。難易度上昇による激戦を警戒しての動きと見る。倍率は若干下がったが、ハイレベルな受検生が多く残り、激戦度はむしろ上昇するであろう。
一方で、応募者を大きく増やしたのが、富士の男子、両国の女子である。難易度が相対的に低い学校に出願することで、より合格の可能性を引き上げたいと考えた受検生が、受検校として選択したためだと考えられる。しっかり準備してきた受検生は、この倍率の上昇をさして気にする必要はなかろう。
この他に、三鷹の女子、大泉の男子も人数の減少が大きい。三鷹の女子は隔年現象による減少で、大泉の男子は相対的に2年連続で高倍率だったことを警戒しての減少と思われる。
九段は一日遅れて21日の発表となった。大きな変動は見られないが、B区分女子の高倍率が続いている。
都立中は、一般枠定員1,375人に対し、出願者が7,897人では、6,522人が不合格になる計算だ。繰上合格者を100人と見込んでも、6,422人が不合格となる。これに九段の573人を加えると、6,995人となり、都内の公立中高一貫校11校で、約7,000人が不合格となる。東京大学教育学部付属中等まで含めると、不合格者は約7,500人、東京学芸大学国際中等まで含めると、不合格者は約8,000人というところだろうか。
私国立中学入試と違い、かなりの比率で単願もしくは実質単願の受検生がいるから、不合格者の多くが地元公立中学に入学することになる。
これは中学受験を選択した時点で地元公立中学と言う選択肢がほぼ消える私国立中学受験とは大きく性質が違う。私立中学受験生は、最終的にほとんどがどこかの私立中学へ入学するので、実質的にはもちろん、見かけ上も、努力が報われることになる。
ところが、都立中を含む公立中高一貫校の単願もしくは実質単願の受検生は、合格できなかった場合に、それまでの努力が、少なくとも見かけ上は、報われないことになる。
そうした受検生の人数が、少しでも減るようにと願っているので、出願者数の減少を歓迎したい。
今年の中学入試問題を分析していると、私立中学入試で思考力重視の入試問題が、顕著に増加傾向にあることが確認できる。いずれ、学力試験型入試と適性検査型入試は、実質的には明確な違いがなくなっていくであろう。学力試験型の入試は、難易度の高い学校ほど、知識や解法の詰め込みではすでに太刀打ちできなくなっているが、適性検査型入試もさらに難易度の高い出題になっていけば、高難易度の学力試験型入試とオーバーラップする部分がさらに大きくなっていくことになる。
商売目的なのか単なる事実認識の誤りなのかは知らないが、悪徳学習塾や悪徳評論家や悪徳ブロガーの宣伝文句とは裏腹に、私立中学校も公立中高一貫校も、真の学力を育んだ受験生や受検生が合格できるということがより明確に認識されるようになるであろう。
そのことで、公立中高一貫校入試が健全化し、そのことが、さらに私立中学入試の健全化にも貢献することになるであろう。