[2020年4月24日]
新型コロナウィルス感染症の拡大による影響を読み解く。
保護者が、大企業や公務員などに正規でお勤めするご家庭は、外出自粛やリモートワークになっても、短期的には、収入に大きな影響はないであろう。しかし、影響が長期化すれば、賞与の減少や昇給幅の縮小だけでなく、リストラなどが起るかもしれない。
保護者が、企業経営者や個人事業主やフリーランスの場合は、業種によっては収入に大きな影響があったり、将来的に大きな影響が予想されるご家庭も少なくないであろう。
受験するか否かが任意となる中学受験においては、影響が顕著になる可能性が高い。
これまでにも、リーマンショックや東日本大震災の際には、急激な受験者数の減少が起っている。リーマンショックでは家計収入の不安が大きな要因であった。東日本大震災では、放射性物資の拡散による健康不安や、計画停電による通塾の不安が、大きな要因となった。
今回の新型コロナウィルスの影響では、過去の2つで見られたような影響が、ともに起こっている。つまり、収入面での不安、健康面や通塾面での不安、である。
中学受験への影響であるが、どれくらい長期化するかにもよろうが、今後数年、総受験者数の頭打ち、もしくは減少が予想される。
これによる影響は、中堅以下の私立中学で大きくなる可能性が高い。このゾーンには、御三家や最難関私立校や国立大学附属校や公立中高一貫校は入らない。何が何でも受験しようと考える親子の割合が相対的に低くなる。地元の公立中学に通わせる方が、健康面でも、金銭面でも、より安心できると考える親子が、方針を変更する割合が高くなりそうだ。
特に、女子校や、高校募集枠が大きい共学校は、実質倍率と難易度ともに、チャンスが拡大する可能性が高い、と予想される。
これに対し、御三家や最難関私立校を目指す親子は、もともと経済的な不安が少ない層が多いだろうし、優れた学習環境への志向が強いから、地元公立中学へ方針変更する割合は低くなりそうだ。
では、公立中高一貫校はどうだろうか。合格を競い合う受検生の多くは、御三家や最難関校と中堅校との、中間の学力層である。偏差値で言うと、しゅともしなら60〜70、四谷大塚なら55〜65の、難関校を狙える学力層が、ボリュームゾーンだ。もともと経済面の優位性を、意思決定の要因にしている親子の割合が多いから、経済的な要因が受検を取り止める理由とはならない。取りやめるとしたら、公共交通機関を使って通学することへの健康面での不安からであろう。
しかし、都内には都公立中高一貫校で11校、国立の中等教育学校を合わせると13校、国立の附属中学を合わせると19校あり、この中から、通学距離が短い学校を受験校として選択できる。高校課程からは自転車通学できる学校もある。
よって、都公立中高一貫校や国立中高一貫校は、コロナの影響による受験者数の減少は相対的に起こりにくい。
むしろ、経済的な不安から、もともと私立中第一志望だった層のかなりの親子が、国公立第一志望に変更して、競争が激化する可能性の方が高い。
都立中を目指す小6受検生はもちろんだが、小5や小4も、激戦化の覚悟をしておいた方がよかろう。
完全中高一貫化による中学定員の増加は、新型コロナの影響で相殺されてしまう可能性もありうる。
名目倍率は下がるかもしれないが、実質倍率はむしろ上昇し、実質的な難易度も高止まるか上昇するであろう。
これまで以上に、適切な受検対策が必要となることは、必至だ。