[2020年5月8日]
東京都は、5月5日、区市町村立学校におけるオンライン授業推進のため、PCの無料貸与と通信料等の支援を行うと発表した。
「9月入学」推進論者を自任する都知事の事実上の方針変更と解釈できなくもない。
そもそも、文部科学省は「9月入学」には極めて消極的で、そのようなことをするくらいなら、登校を再開した方が良いという立場だった。
国会(委員会)で「9月入学」を政府や与党に迫った、ある野党幹部も、今年度ではなく、来年度からの導入検討をと実質的に発言を撤回している。
ここで懸念されるのは、今からPCなどの無料貸与を始めても、実質的に稼働するのはさらに先になるということだ。登校が再開された後にオンライン授業が本格的に導入されるという間抜けなことになりかねない。
もちろん、これからも襲いかかってくるであろう大災害などに直面しても、次からはタイムリーにオンライン授業に切り替えて、学校教育を継続して行けるようになるのなら、遅ればせながらも、前進していると評価できなくはない。
もう一つ懸念されるのは、オンライン教育は義務教育にはあたらないという意見があることだ。論理的な理由付けが確認できず、明確な根拠も示されていないため、本意はどこにあるのか不明だが、聞捨てならない意見だと思う。
国内に目を向ければ、コロナ以前から、「不登校」の児童生徒は義務教育を受けていないことになりかねない。
「不登校」でも、学校配布物を定期的に受け取り、学校とも電話や電子メールなどで連絡を取り続けている児童生徒は多い。中には課題や提出物を自宅で取り組み、提出している児童生徒も少なくない。多くは心や身体の健康上の都合などから、登校したくても登校できないのである。
海外に目を向ければ、随分前から、アメリカやカナダやイギリスなどで義務教育として認められている、ホーム・スクーリングや、ホーム・スクールや、ホーム・エデュケーションを受けている児童生徒を否定することになる。西暦2000年以降は、e-Learning、つまりオンライン授業を活用するケースが多くなっている。
そもそものスタートは、宗教上の都合が理由であることが多かったが、今は学校での銃乱射事件など安全上の理由から「ホームスクール」などを選択する親子が増えている。彼らは義務教育を受けていないことになるのだろうか。
オンライン教育は義務教育にはあたらないという意見を展開するのなら、事前に、もう少しオンライン授業の国内外の実情について、十分な調査や研究をしてからの方がよかろう。
話しは戻るが、厚生労働省が公表した「新たな生活様式」は、在宅ワークだけでなく、在宅教育もまた、時代の新潮流へとなっていくことを示唆している。
感染症拡大だけでなく、大規模災害や、大規模な気象変動などの発生の可能性を考慮すれば、オンライン授業つまり在宅授業は今後必須のインフラとなっていくことは間違いないだろう。
何度も繰り返し述べているように、在宅授業だと勉強しない人は、登校しても勉強しない。
登校授業ではなく、オンライン授業や在宅授業だから、教育格差が開くのではない。
そもそも、公立小中学校でも、オンライン授業や在宅授業を開始する前から、教育格差や学力格差は存在した。
それが、確たる証拠であり根拠である。
オンライン授業を否定する人の動機は、教育の本質的なテーマとは、違うところにありはしないだろうか。
あるいは、低レベルのオンライン授業しか知らないから、そのような判断に至っているのではないだろうか。
登校授業にもレベルの差はあるように、オンライン授業にもまたレベルの差は大きく存在するのである。
登校授業とオンライン授業の違いが、学力格差の原因なのではないことに、早く気がつくべきだろう。