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三田学院

[2020年5月10日]

【都立中】入試へのコロナの影響

1929年9月に起こった「世界恐慌」では、世界の国内総生産(GDP)は15%縮小した。この時、アメリカの失業率は23%に達した。

2008年9月に起こったリーマン・ショックでは、1年後に米失業率は最悪を記録した。この時、アメリカの失業率は10%に達した。

2020年、新型コロナウィルス感染症拡大で、アメリカの失業率は、急激に悪化した。2020年4月のアメリカの失業率は、14.7%である。今後、さらに悪化する可能性すらある。

今年の9月ごろなど、少しタイムラグを置いて、深刻な景気後退が、人類を危機に陥れるかもしれない。

日本国内の感染症拡大が収束しても、世界での感染症拡大が続く可能性がある。医療体制がぜい弱で、国家財政が弱い国が多い、アフリカ、中南米、アジアの一部では、大規模な感染症の拡大や経済や社会の混乱が危惧される。

大手製造業などは、生産コストが低いこれらの諸外国地域に、すでに海外生産拠点を多く構えている。また、多くの大企業は、こうした諸外国地域への自社製品の販売拡大に取り組んでいて、販路を失うことはできない。

よって、こうした諸外国地域での感染症拡大や景気後退の影響を、今後も強く受け続ける可能性が高い。

また、国内の緊急事態宣言が撤廃されると、これらの諸外国との人の移動が再び活発化して、感染が国境を越えて、再び広まるリスクが高い。いわゆる、感染爆発の第二派や第三派の襲来である。

これらを踏まえると、地球規模での感染症拡大の収束には、かなり長い期間がかかる可能性が高い。治療薬やワクチンが開発されるまでは気を緩めることはできないであろう。そうなるまでに、今から1年や2年は、かかるかもしれない。

そうなると、景気後退は今想定されているよりも遥かに長く深くなる可能性がある。

国内の中学受験や、高校受験や、大学受験も、大きく影響を受ける可能性が高い。

・授業料が相対的に安い国公立中への志向がより強まる
・中学受験を断念し高校受験に方針変更する層が増える

具体的には、

・成績優秀層の第一志望で公立中高一貫校の比率が高まる
・成績優秀層の第一志望で国立大学附属中の比率が高まる

・御三家や最難関私立中学は、大きな影響は受けない
・難関や中堅私立中学は、難易度が下がるほど、受験者数が減少する
・私立大学附属中は、慶應系や早稲田系を除き、受験者数が減少する
・国公立の中高一貫校では、一層の激戦化が進行する
・高校受験で私国立難関高や都立難関高が激戦になる

大手中学受験専門塾に多額の塾代を支払っても、多くは第一志望に合格できない。それどころか、第二志望や第三志望にも合格できず、入試日程の終盤で急遽受検せざるをえなくなった想定外の中学校に進学する事例が毎年のように多数発生する。

中学受験は学齢で受検資格を限っているため、大学受験のように浪人はできない。毎年のことだが、すべてが終わった後で、己の甘さと、現実の厳しさを思い知らされることになる。そして、それが次の学年でも繰り返される。母集団が年ごとに完全に入れ替わるので、次の学年における高い学習効果を期待できない。アドバイスを聞き入れないか、アドバイスを理解できない人も多い。

大手塾では、意図して、大多数の「お客さん」には真実を伝えない。真実を伝えると収益を損なう。それが大手のビジネスモデルだ。「選抜クラス」のメンバーさえ例年通りの実績を上げてくれれば、それでよいのだ。あるいは、一部の上位層だけで前年通りの実績を上げてくれれば、それでよいのだ。「お客さん」には、初めから合格実績を期待していない。大多数を占める「お客さん」に期待しているのは、収益だけだ。

大手では、「お客さん」が、顧客の大部分を占めないと、収益を上げられない。また、「お客さん」のおかげで、選抜生も安心して大手塾で受験勉強に専念できる。大手塾にとっての「お客さん」は、大手塾の選抜生にとっても「お客さん」なのだ。

予測能力の高い受験生親子なら、最悪の事態も想定して、堅実なオプションを選択肢に含めることができる。しかし、それは、ごく一部だ。多くは楽観的すぎる想定しかできず、辛酸をなめる。大手の優良な「お客さん」として受験を終えることになる。

頑張った選抜生は、開成や桜蔭や筑波大駒場や小石川に、ちゃんと合格しているのだから、合格できなかったのは、頑張らなかった「お客さん」の責任であり、大手塾の責任ではないとして、逃げ切る。画期的なビジネスモデルだ。

人は、危機が眼前に迫るまで、あるいは、実際に危機に巻き込まれるまで、自分だけは大丈夫だ、と思いがちだ。

人は、他人とは違って、自分の判断は正しい、自分だけは正しい、自分だけは助かると、根拠もなく思いがちだ。

このため、いつも、全体としての受験戦略に、歪みや偏りが発生し、これにまた、大多数の個々人が意図せず巻き込まれる。この現象は、異常事態では、さらに極端になる可能性が高い。

あなたの危機管理能力が問われる。

大手だから安心できるのではない。
中小だから安心できるのでもない。

高額だから確実なのではない。
少額だから安心なのでもない。

そのような単純な判断しかできないようでは、当初の目標を達成できる可能性は高くない。