[2020年5月13日]
東京都や首都圏の小学校臨時休校延長が、いつ終わるかわからない状況なので、来春の中学入試を正確に予測するのは容易ではない。
それでも、今春の入試結果などから、大胆予想を試みる。
まず、2019新春と2020新春の違いについてサマリーしてみる。
2019まで続いていた大学附属人気は、入試直前となる11月に、大学入試改革がはっきりと頓挫したことで、大きく流れが変わった。目ざとい受験生親子は、早くからこの頓挫を予測していたことと、WEB出願による機動性の格段の向上により、出願直前で、大手塾も正確に予想できなかったほどの激変が起きた。
1.男子の難関レベルで、大規模な大学附属離れ、男子校回帰が起った。
巣鴨、世田谷学園、攻玉社、高輪だ。
顕著な出願者数の増加がみられた。直近の大学進学実績が難易度対比で良好な、巣鴨や世田谷学園は、過激なほどに激戦となった。昨年の平均的な合格者は、今春ことごとく不合格となったであろう。
攻玉社は帰国生入試の人気が高い。巣鴨、世田谷学園、高輪は算数入試の人気が高い。これらを第一志望とするなら、2月1日の午前4科入試を受けないと、確実に合格を取るのが難しかった。
人気の男子進学校は、2月1日に確実に合格を取りたい。最悪2日までに合格を決められなかった親子は、多くが、全滅ロード、玉砕ロードとなった。多くの受験生親子がつぶやいているように、大手塾の受検指導アドバイスなど、全くあてにならない。まともに聞いていると捨て駒にされる。適切な受験校選択をし、堅実な受験日程を組まないと、奈落の底に落ちる。
2.大学附属の近年の難易度上昇を警戒した層が、MARCHレベルへの合格実績が良好なお買い得校へ大挙して移動した。
大宮開成だ。
3回の入試回すべてで、偏差値換算で5ポイント程度難化し、昨年の合格者は、ことごとく不合格に回ったに違いない。合格できたのは、栄東や開智からも合格をいただいた層くらいであろう。
もはや難易度の割にMARCHに強いという魅力がなくなった状態で、今後も人気が続くのか不透明だ。最寄駅から満員バス通学なのも敬遠されるかもしれない。
3.教育改革が顕著で保護者の人気を集めた学校が急伸した。
昭和女子大学附属昭和だ。
こちらも偏差値で5ポイント以上難化したと思われる。代わりに、おなじ渋谷系の実践女子大学附属が底なしの下落となった。ほぼ全入に近かったと思われる。
山脇や跡見も人気を博した。跡見はやっと回復期に入ったかもしれない。代わりに、大妻中野の人気が一息ついた。
4.都立の難関校化が完成期を迎えた。
小石川が名実ともに私立御三家に並んだ。御三家合格で小石川不合格は、もう珍しくなくなった。というより、当たり前となった。
ボトムラインを形成していた、富士、白鴎、東大付属がそろって難化し、ボトムラインを切り上げた。23区内には、もう穴場はなくなった。
小石川の最難関校化で、代替として注目されやすいのが、九段Bである。昨春に続いて今春も、報告書も適性検査も満点近くないと合格が難しくなった。昨春は、適性1が85点、2が95点、3が95点くらいでないと合格できていない。今春もほぼそれに近かったと思われる。報告書は3年分がパーフェクトで、適性検査は1〜3までをノーミスで完答できるこが、合格確実の条件となっている。
ここからが大胆予測だ。
1.中学入試で国公立回帰が起る。
感染症拡大と景気後退で、家計の先が見通せなくなっており、学費面で安心できる国立大学附属や都公立中高一貫校の人気がさらに高まる。
都立中の難化は止まらない。都立中専門大手塾の合格率がさらに低下して、都立中専門大手塾の合格率が、受験生全体の合格率と同じになるか、受験生全体の合格率を下回るようになる。
相対的に平易な、東京学芸大学附属系が人気を集める。世田谷と竹早が要注意だ。
8教科から5教科入試となる筑波、適性検査型入試になるお茶の水に注目が集まる。御三家や難関私立や小石川などから流入が強まる懸念がある。
2.男子校人気は継続する。
景気が悪くても男子進学校の人気は常に底堅い。大学入改革の失敗による男子校人気が続くため来春も激戦を見込む。
都立中本命組が併願合格を狙うなら、巣鴨、世田谷、高輪の算数入試も視野に入れておきたい。しかし、御三家レベルの算数力が求められるので、算数がチョッと得意なくらいでは歯が立たないことを知っておいた方が良い。
巣鴨、世田谷、高輪の算数入試で合格が取れるなら、都立中の中堅校や下位校の算数は容易に攻略できるはずだ。都立中の理科や社会は、難関私立併願組には難しくないから、巣鴨や高輪の算数入試に合格できて、適性作文が取れれば、どこかの都立中には合格できる。
しかし、適性作文が全く取れなければ、どの都立中も合格は難しい。いずれにせよ、報告書はオール3で臨みたい。
3.女子校は中堅校以下で平易化が顕著になる。
家計の先が見通せなくなっていることの影響を、最も鮮明に受けるのは、偏差値55未満の女子校である。不透明な中で中学受験を見送って高校受験に回る層が最も多くなりそうだ。やや人気を落とし気味の女子校は穴場となろう。
4.大学附属人気はピークアウトする。
大学附属人気がピークアウトする。特にMARCH系の難易度上昇が終わる。下落に転じる学校もありそうだ。日大系や東海大系などは平易化が鮮明となる。
一方で、東洋英和、大妻、共立女子などは、大学附属としての魅力と、進学校としての魅力が、共に評価され続け、人気の高止まりが続く。大妻、共立女子を本命受験するなら、「全日程受験の全日程不合格」に注意したい。2月1日で決めるか、午後入試などを利用して早めに抑え校の合格を持っておきたい。2日以降は後日程になるほど、どんどん厳しくなっていく。複数回受検のメリットに過度に期待しないようにすべきだ。超人気校では、複数回受験は、ほとんどメリットがないと思って、日程を組んだ方が良い。
第1志望校は50パーセント偏差値で持ち偏差値以下から選びたい。2月1日に第1志望校に合格できなかったら、2日は続けて再チャレンジしないで、難易度がより平易な第2志望校や第三志望校を受験した方が安全だ。第2志望校は80パーセント偏差値で持ち偏差値以下、かつ第1志望校から3ポイントより下から、第3志望校はさらにそこから3ポイントより下から選択することが肝要だ。滑り止めは、さらに2ポイントより下から選ぼう。
それが嫌なら、そうなる前に、しっかり力をつけておくべきだ。直前や本番で冒険しないこと。
大妻、共立女子にチャレンジ受験したいなら、2月1日にきっちり普連土などから合格を取っておきたい。さもないと全滅ロードになるリスクが高い。普連土は、2日の2科や4日の4科と進むほど、どんどん合格が難しくなるので、1日が狙い目だ。日程の組み方を間違えないようにしたい。これは品川女子にも言える。ただし都立中本命組は4日の品川女子は抑え校として使える。しかし共立の3日午後は都立中本命組の抑えになりにくい。私立本命組に有利だ。
5.共学校はピンキリの差が激しく二極化が鮮明となる。
渋谷幕張などの最難関共学校の人気は底堅く推移する。一方で、マンモス受験で有名な、栄東や市川などは、試験会場での感染への警戒から敬遠が起る。遠距離通学に対する安全上の不安で、都内からの埼玉受験や千葉受験そのものが大幅に縮小するかもしれない。
定員充足のために共学化したような中堅以下の共学校は、そもそも高校入試でも入学可能な学校が多く、家計の先行き不安や、遠距離通学による感染への警戒から、大きく志願者数を減らす学校が多くなりそうだ。穴場続出を予想する。
6.高校受験は数年のタイムラグをおいて激化する。
家計の先行き不安や、遠距離通学への不安から中学受験を見送った層は、高校受験での闘いに参戦することになる。3年後や4年後は、コロナ世代による高校入試の激戦化が起る。国立大学附属や都立難関校は過酷な闘いとなり、その余波は滑り止め系の私立高校にも及ぶ。偏差値50未満の都立高校の定員割れ校数も一時的に減少する可能性が高い。
小学校の臨時休校で、ほぼ宿題や課題だけの親子は論外だが、学校や大手塾の罪滅ぼし程度の内容のオンライン授業で満足しているような親子には、いばらの道が待っているのだ。