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三田学院

[2020年5月21日]

【都立中高】通学再開が近づく

都立中高が、本格的な学校再開に向けて、準備を進めている。

今や、緊急事態宣言の対象都道府県は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、北海道のみとなった。千葉県と埼玉県は解除基準をすでに充足している。

東京都は、緊急事態宣言解除後に、早い段階で都立学校の通学を再開する方針を打ち出した。

そんな中、ある都立高校重点進学校が、オンラインでの学習塾向け説明会を開催した。

この都立高校は4月の早い段階から、オンライン授業を実施している。GW明けからは「時間割」通りのオンライン授業となり、朝8時30分から午後3時まで通塾授業通りにオンライン授業を実施し、午後3時以降は生徒との個別の面談をオンラインで行う体制へと充実させた。

オンライン授業の実施の仕方についての詳しい説明もあった。学校側の設備は既存の設備で十分に間に合い、新たに導入した設備はなかったという。この設備は都立高校であれば、どの学校も備わっているので、要は学校側のヤル気次第で実施できるはずだと説明がなされた。

この都立高校では、オンライン授業を受講できる通信設備がある生徒は、スタート時点で100%だった。スマホさえあればできるからだ。高校生なら誰でも持っているであろう。

オンライン授業が一時的に滞ったこともあるが、それは利用した、大手通信会社と大手通信教育会社がコラボした「オンライン教育支援システム」の不具合によるものだけだった。つまり、学校の取り組みに原因があったのではない。それも今は大幅に改善され、その後にトラブルは起きていない。

臨時休校により8月までの学校行事は中止または延期となったが、オンライン授業を4月から実施しているため、学習指導や受験指導に致命的な遅れは発生していない。時間割り通りに進められなかった4月の数週間程度なら、早々に取り返すことができそうだ。このため、例年通りの大学受験日程を想定して、高3生の学習指導や受験指導を進めている。

6月の通学再開後も、オンライン授業は並行して活用していくとしている。新たに強力な学習指導手段を手にしたのだから、手放すはずはなかろう。

高校入試における「自校作成」問題の出題範囲であるが、中2までの範囲に限定されてしまうと、ほぼ「自校作成」問題として出題できる問題がなくなってしまうと自嘲気味に語られた。ただし今後発表される都の方針に従って作問するしかないので、どうなるかは現時点では不明だそうだ。

私立学校なども、学校説明会をオンラインで実施する学校が多くなってきている。

オンライン学校説明会に参加して感じたことは、説明会参加に伴う物理的な負担が大きく減少したということだ。まず、学校まで公共交通機関を使って、毎回毎回往復する必要がない。交通費と往復時間を節約でき、かつ疲労もない。実はとても効率がよい。

設備などハード面の確認は、一度現地に行けば済むことなので、毎回のように足を運ぶ必要がなくなったことは大きい。学校説明会のオンライン化により、参加できる説明会の学校数を増やすことも可能になった。

質疑応答も、実際に足を運ぶよりしやすくなった。音声での質問の他、チャット機能による質問も可能なので、個別性の高い質問もしやすくなり、有効性も上がった。

今後これが「新たな生活様式」や「新たな日常」になって行くという実感を強く感じた。

かつて、世界最高水準を誇っていた日本の教育は、いつのまにか多くの国に追い抜かれ、今や総合順位や個別順位で世界ベスト10すら維持できるか怪しくなってきている。

近年、日本を追い抜いた国々を調べてみると、明らかに違うのは、教育のICT化の先進性や充実度だ。今や、教育のICT化において、中国や韓国などに大きな遅れを取っている。北米や欧州諸国と比べてもアドバンテージはない。

重厚長大産業が国力を牽引した時代は、遥か昔に終焉している。いつまでも過去の成功体験にすがっていては、さらにじり貧へと向かうだけだ。

対面一斉授業に固執していたら、日本は、教育においてもガラパゴス化しかねない。

技術革新において教育は聖域ではない。むしろ教育が技術革新を牽引しなければならない。

教育の国際競争力を取り戻すために必要なことは、本当は何なのか。もう一度考え直す時期が来ているのだ。

教育が国際競争力を回復しなければ、教育の国際化も、留学生の増加も期待できないであろう。

教育の国際化だが、4月入学のままでも、留学生数や留学生比率の高い大学は存在する。立命館アジア太平洋大学は留学生比率が約50%に達しているし、早稲田大学は留学生数が5,000人を超える。国公立大学でも、留学生比率に着目すると、国際教養大学が約20%、筑波大学が約15%に達しており、東京大学も10%を超えている。

つまり、留学生比率や留学生数は、4月入学・4月新学期を採用してい大学においても、バラツキが大きいのだ。これは、4月入学制が、完全なボトルネックになっていないことの証拠となる。留学生の受入体制を整備できているか否かや、魅力的な教育が受けられるか否かが、大きな違いにつながっているのではないだろうか。

教育の国際競争力の回復を、最優先課題として取り組むべきだ。そのためには、まず、教育におけるICT化の遅れを克服しなければならない。

この観点からも、9月入学・9月新学期よりも、オンライン授業体制の整備を急ぐことが優先されるべきだろう。教育のICT化を推進するために、「情報科」教員の増員を優先してはどうであろうか。巨額の予算を確保する必要もなく、社会的なコスト負担も相対的に小さくて済むのではないか。新たに追加された「プログラミング教育」の推進にもつながるだろうし、将来的にコンピュータ・ソフト開発などにおける国際競争力の向上も期待できる。ソフト開発力は、今や国際競争力の維持向上に欠かせない。何より、教育現場や児童生徒がいる家庭に大混乱が起こるリスクがない。

優秀な学生ほど、競争力の高い教育が実施されている国や学校で、学びたがるはずだ。遅れた教育を受けるために高額な費用を支払って留学したりはしないであろう。

取り組むべき課題の優先順位を間違えてはいけない。