パソコン版を見る

三田学院

[2020年5月23日]

【都立中】9月入学なら義務教育は5歳から

5月23日、入学年齢を欧米に合わせた「7ヶ月前倒しの9月入学案」が、与党自民党内で協議開始されることになった。

これまでの「5ヶ月遅れの9月入学」とは根本的に違い、本来の「9月入学」の議論が、やっと開始されることになる。これこそが「議論されるべき9月入学」である。

何度も申し上げているが「5ヶ月遅れの9月入学」なら、さしたるメリットはなく、むしろデメリットが多くなる。

いったん「5ヶ月遅らせての9月入学」、つまり9月入学を導入している欧米からは「1年遅れ」となる「9月入学」を導入してしまうと、この「1年の遅れ」を修正するために、また多大な社会コストをかけなければならなくなる。

「7ヶ月前倒しの9月入学」であっても、今年や来年に急いで制度変更する必要はない。むしろ十分な議論をしつくし、かつ国民のコンセンサスを取りつけてからの実施にすべきだ。

グローバル・スタンダードに合わせるというのであれば、まず大学や大学院で「9月入学」を本格化させることを先に進めるべきで、小学校など低学齢から進める緊急性は、どこにもない。

むしろ、拙速な制度変更は、小学校とともに、幼稚園や、保育園や、学童保育などでの大混乱が予想される。これらの学齢の子どもを持つ家庭の大混乱も必至だ。

まず大学や大学院から導入するのであれば、大混乱は起こらないであろう。

大学や大学院で「9月入学が」、あるいは「9月入学も」が、軌道に乗ったら、ある年度の新生児から、「あなたたちの学齢から、前倒しの9月入学」になりますよ、と事前にアナウンスしておいて、幼稚園や小学校に入学する学齢になったら「前倒しで9月入学」してもらえばよいのではないか。

ある学年だけが巨大学年にならないように「1ヶ月ずつ前倒し」して、7年かけて移行してもよいだろう。行政手続きが複雑になるので、移行期間中の行政の事務的な負担は増えるかもしれないが、児童生徒や保護者や教育施設の負担は相対的に小さく抑えられる。

それくらい年月をかけて移行しなければ、どこかに歪が生じかねず、罪もなく窮地に追い込まれる人が出て来る怖れがある。

すでに現行制度で入学時期を迎えた児童生徒や、現行制度下ですでに生まれている将来の児童生徒は、「4月入学・3月卒業」を、少なくとも高校卒業までは「保障」すべきだ。

制度変更が決まった後に生まれた新生児から「7ヶ月前倒しの9月入学」の対象者とすれば、学校も保護者も児童生徒も十分な準備期間が確保されるので、大きな混乱なしに移行できるのではないかと思う。

義務教育修了や高校卒業までは「4月入学・3月卒業」のままで、大学から「4月入学か9月入学かの選択」、あるいは大学から「常時入学・常時卒業」でも、十分に「教育の国際化」は可能だと思う。

要は、何事も中身が勝負なのだから。

攻めて失敗しても、そこから学ぶことができる。
しかし、逃げて失敗したなら、後悔だけが残る。

逃げるだけの「5ヶ月遅れの9月入学」には、賛成できない。

補足するが、「5ヶ月遅れの9月入学」で教育格差が解消されることはない。また「オンライン授業」自体が、教育格差を拡大させることもない。

ただ、「オンライン授業」を実施してみたら、はからずも、「すでに存在している教育格差」が、より鮮明に浮き彫りになっただけだ。