[2020年6月2日]
オンライン授業が、今や必須であることに、社会全体が気がつき始めたことは、不幸中の幸いである。
しかし、その取り組み方には、いまだ、多くの課題が散見される。
このままでは、取り組みの差は、すぐには縮まらず、児童生徒や保護者の不満は解消できず、学校現場は疲弊しかねない。
児童生徒や教員の方々に、苦しまれている方が多くいらっしゃるようなので、ここに「オンライン授業」に関する「学習塾のノウハウ」の一部をご紹介する。
もちろん、全学習塾のノウハウではなく、ある小さな学習塾のノウハウにすぎない。他にも良い方法があるとは思う。これは、ある小さな学習塾の知恵の一部に過ぎない。その点はご承知おき願いたい。
全国の公立小中学校の現場で、早くオンライン授業が軌道に乗せられる一助となることを期待する。
?オンラインによる学習指導を、教員単位や、学級単位や、学校単位などで取り組むのは、あまりにも非効率であり、資源の無駄遣いになる。
公立の小中学校における学習指導内容は、学習指導要領の下、学年が同じであれば、内容は同じはずだから、自治体単位などで、分担して「映像授業」を作成するのが効率的だ。現場の教員もオンライン授業の準備に振り回されず、しっかりと児童生徒を向いて指導できるようになるのではないだろうか。
緊急事態なのだから、国や文部科学省がもっとリーダーシップを発揮してもいいと思う。検定教科書の数は無限にはないのだから、採択教科書ごとにオンライン授業を作成して、各教育委員会経由で学校現場に配布し、必要があれば、その後に、現場で編集し直せばよいだろう。かなり負担は軽減されるはずだ。
?これまでの教室授業と全くおなじように、オンライン授業を組み立てようとするから、遅々として進まない。
オンライン授業の特性をよく理解し、その特性を活かして授業を行えば、教室授業よりも効率的に授業を組み立てられる。
教科書出版社は、すでに「デジタル教科書」を作成している。これを利用する手もある。これに、要点や解説の書込みをしたり、説明音声をつければ、それだけでも、学習指導の大部分は可能になる。著作権の問題も、学校現場であれば、早期に解決できるはずだ。
Zoomなどの「オンライン会議システム」を使う場合でも、「プレゼンテーション・ソフト」で作成した資料を、画面に映し出すことが可能だ。プレゼンテーション・ソフトは、写真や図表を組み込んだり、小刻みなSTEPで表示内容を進めたり、音声をつけたりもできる。オンライン会議システムは、音声会話機能の他に、文字会話機能もついているので、常時、問いかけも可能だし、質問も受けられるし、その場で回答もできる。
?オンライン授業だけが「遠隔授業」ではない。「全児童生徒一斉のリアルタイム」の指導に固執するから、先に進めない。
作成した映像授業を、DVDディスクに入れて、パソコンや通信回線が整っていない家庭に配布することでも、「遠隔授業」は実現できる。DVDプレーヤは、最近確認したら、家電量販店では、新品1セット1万円未満でも販売されている。通信費もかからない。進捗状況の確認は、健康状態の確認と一緒に、電話でも可能なはずだ。
学校臨時休校だけでなく、病気やケガなどで登校できない児童生徒の指導もできる。
様々な事情で不登校になっている児童生徒も指導できる。転校や海外からの帰国などで、未学習の分野や内容がある児童生徒の補習にも使える。
高校受験を控えた中3が、中1や中2の内容を復習することにも、利用できる。
映像と音声を使えば、実技教科も指導できなくはない。今や巷には、オンライン料理教室や、オンライン・スポーツ・ジムもある。
?映像授業を、単発限り、かつ、その場限り、にしていると、無駄が最大限に大きくなる。
作成した映像授業の映像はアーカイブしておけば、次の学年でも使用できる。説明を単位ごとに小刻みに編集しておけば、学習指導要領が変更になっても再編集しやすい。映像授業は、この点を意識して作成するのがよい。
また、基礎、標準、発展と、それぞれの演習課題や解説といった編成にすれば、「習熟度別授業」や「習熟度別学習」にも対応できる。
ぜひ、これらを参考にしていただき、全国の公立小中学校の現場でも、オンライン授業が早く軌道に乗せられることを期待する。
オンライン授業やオンライン教育が、「教育格差」を生むのかどうかは、オンライン教育の実施の仕方しだいだ。オンライン教育自体が、「悪い意味での教育格差」や「悪い意味での学力格差」を生むのではない。
オンライン教育は、使い方を間違わなければ、学力をさらに向上させる方向に作用する。しかし、それを阻止することは、はたして正しいのだろうか。
行政と言うか、公立小中学校が取り組まなくても、民間が取り組むだろうから、一部はさらに「良い意味での学力向上」を達成することになる。そのことが、「良い意味での学力格差」や、「良い意味での教育格差」を生むかもしれないが、それを理由に「良い意味での学力向上」を阻止すべきであろうか。
行政が取り組めば、民間はさらにレベルアップしなければならなくなるから、教育の受け手にとって、いいことずくめであるはずだ。
児童生徒や保護者の側、つまり教育の受けての側も、オンライン授業や遠隔授業に慣れ親しむことで、よりメリットを享受できるようになる。
オンライン授業や遠隔授業を忌み嫌っていると、これからの時代、取り残されることになりかねない。
今や、世界最難関大学とも言われるようになった「ミネルバ大学」(本拠地:米国カリフォルニア州)を、参考にされてみてはいかがだろうか。
校舎ならぬキャンパスは一切持たずに、授業や指導は、すべてオンラインで行われるミネルバ大学の人気が、新型コロナ感染症拡大以前から、世界で沸騰しているということを、知っておいた方がよかろう。
形態や形式ではなく、中身が重要なのだから。