[2020年6月13日]
令和2年度まで、都立併設型中高一貫校の高校入試問題は、英語・数学・国語は「グループ作成問題」が出題されてきた。
これは、都立日比谷高校など重点進学校の「自校作成問題」に似ていながら、「自校作成問題」よりは若干平易な問題で、しかし「共通問題」よりは難易度が高かった。
令和2年度をもって都立武蔵高校と都立富士高校が高校募集を終えたため、令和3年度に高校募集を行う併設型中高一貫教育校は、都立両国高校、都立大泉高校、都立白鴎高校の3校のみとなった。
これを受けてであろう、令和3年度の併設型中高一貫教育校の高校入試問題は、5教科ともに「共通問題」とすることを、6月11日、東京都教育委員会が発表した。
3校合わせて、200人程度しかいない一般定員の選抜のために、3教科の「独自問題」を作成することは、作問負担の重さとの兼ね合いで諦めたのであろう。同じ日に発表された、三平方の定理や関係詞などを除外する「臨時休業の実施等を踏まえた配慮事項」を考慮して作るとなると、なおさらである。来年度はもう募集しない(白鴎は不明)のだから、いっそのこと、令和3年度で止めてしまおうということだと思われる。
ただし、「自校作成校」は「共通問題」に変更するとは、発表されなかった。この件に関しては、本日のテーマから外れるので、別途いつか書くことにしたい。
都立併設型中高一貫教育校の高校募集は、推薦と一般合わせて、1校あたり約80人の募集と定員が少ないことや、中高一貫校に途中から加わることへの懸念や、「グループ作成問題」対策をしなければならないことによる負担増から、都立併設型中高一貫教育校の高校募集は、人気が著しく低迷していた。
「グループ作成問題」対策の必要がなくなるので、似たような難易度の、都立小松川高校(両国とおなじ旧学区)などと、同じような受験対策で受験できるようになる。
都立両国高校、都立大泉高校、都立白鴎高校の3校のうち、都立両国高校と都立大泉高校の2校は、令和3年度をもって高校募集を停止することが決まっている。
しばしば定員割れを起こしてきたし、定員割れを起こさなくても低倍率の年がほとんどだったが、「共通問題」化により、令和3年度は倍率の事前予想が難しくなりそうだ。
リスクは、しばしば、チャンスとなる。
リスクを取れる受験生にとって、令和3年度の都立両国高校と都立大泉高校の入試は、嬉しい波乱を期待できるかもしれない。
少なくとも、「グループ作成問題」の過去問に取り組む必要がなくなったことは、受験生にとって朗報であろう。
しかし、「共通問題」になることで、令和3年度は、定員割れや低倍率が、起らないかもしれない。
その場合、リスクは、ただの、リスクでしかない。
都立両国高校附属中や都立大泉高校附属中には受検生が殺到するのに、どうして都立両国高校や都立大泉高校はスルーされてしまうのだろう。
都立両国高校卒や都立大泉高校卒という肩書自体には、何ら魅力が感じられない、ということなのだろうか。
都立両国などは、中学課程で、難関私立中高一貫校ほどの先取をしない。よって、高入生であっても、難関私立中高一貫で言われているほどの、授業進度の違いによるハンディはない。
むしろ、都立併設型中高一貫校だけでなく、高校募集がない都立中等教育学校も、中入生の落ちこぼれ問題の方が深刻なのではないだろうか。