[2020年6月26日]
新型コロナ感染症拡大による、高校受験への影響は、大きく分けて三つ考えられる。
一つ目は安全面だ。
より安全な経路で通学できる学校が選ばれるようになるだろう。しかも、通学時間のより短い学校が選ばれるであろう。東日本大震災の際がそうであった。
都心か郊外を問わず、立地が分散しているのは公立高校だ。よって、総論としては公立高校回帰が強まる可能性が高い。
二つ目は経済面だ。
家計の輸入に不安が高まると、国公立志向が強まる。前回のリーマンショックの時がそうであった。特に、幅広い難易度に分散する公立高校への志向が強まる。
東京都の他、埼玉や千葉なども、私立高校の授業料は実質無償化になっている。しかし所得制限があるから、授業料無償化の恩恵にあずかれない高所得者層ほど、景気後退の影響を敏感に受けることになる。また、無償化とはいっても授業料の平均額が上限となるから、この景気後退で低所得者層も授業料が完全無料になる公立高校への志向を強めるだろう。よって、公立高校でも進学校や人気校は、より激戦になると予想される。
三つ目は志望校選択面だ。
受験対策については、「高校受験コロナの影響(受験対策編)」でも書いたが、志望校選択に絞って考えると、やはり合否に関する安全志向が強まり、かつ受験対策しやすい学校が選ばれやすくなる。
具体的には、公立高校で合格確実な学校を選択する傾向が強まるだろう。もともと一番手を目指していた受験生で不安な層が二番手に降り、二番手を目指していた受験生で不安な層が三番手に降りると言ったことが起き、しかも、三番手よりも下は進学校としては急に見劣りするため、もうそこから下へは降りようとしないから、三番手が最も厳しくなる可能性がある。二番手の一部も厳しくなるだろう。おもに共通問題上位校だ。
小山台、駒場、竹早、三田、小松川などが要注意だ。
前年までの合否ラインがあてにならなくなるリスクが高い。
これらの学校は、推薦入試もさらに激戦になる可能性もある。例年、日比谷の女子は定員の3倍以上の「オール5」受験生が競い合うが、三田の女子であっても定員を超える「オール5」受験生の闘いになっている。これがさらに激戦になる。
女子で「オール5」ないしは「ほぼオール5」ではない受験生は、もともと進学校への合格はかなり厳しかったが、今年はさらに厳しくなるだろう。
これは公立高校に限った話ではない。高校入試では、私立も、国立も、内申点が合否を握る。多くの私立は内申点だけで合否が決まる。
私立高校では、推薦入試(実質無試験の単願入試)の人気が高まりそうだ。冬場になると第二波や第三波への警戒が強まる可能性があり、早めに進学先を決めたいという気持ちが強まるからだ。
この影響で、例年なら推薦が取れる私立高校の推薦基準が厳しくなったり、加点項目が削減されたりして、人気の私立高校ほど推薦が取りづらくなり、志望校を下げざるを得なくなる受験生も増えそうだ。
一方で、最難関国立大学附属校や最難関私立高校など、正真正銘の学力トップ層が実力勝負で競い合う最難関進学校は、代替校がないため、大きな影響は受けないだろう。
このゾーンの受験生は、出題範囲の一部削除の影響をもろには受けない。むしろ、一部削除の発表前に、その分野までの学習を一通り終えているから、「今さら何を言うのか」と思ったことであろう。
「コロナの影響(受験対策編)」でも心配したような、学校臨時休校期間中の受験勉強も、誰かに言われるまでもなく、自ら進んでしっかり取り組んだであろうから、このゾーンでの大きな波乱は起こらないと思われる。
悪い意味での波乱が起る可能性が高いのは、過信や、思い込みや、油断や、怠惰や、傲慢などから、3月、4月、5月の学校臨時休講期間中の受験対策が甘くなった受験生が、最終的に多く志望するであろう学校だ。
教育専門雑誌や経済専門雑誌などで特集されて注目を集めたような学校も警戒しておいた方がよかろう。大手塾はもちろん、多くの人が予想しきれなかったような、難易度の激変が起る。
昨年の中学入試における、大宮開成や昭和女子大学附属だ。
また、大学入試改革失敗の影響など、大手塾や教育評論家が軒並み正確に予想できなかった波乱が起こる可能性もある。
昨年の中学入試における、巣鴨や世田谷学園や高輪だ。
巣鴨や世田谷学園などは、この日記でさんざん警戒を呼び掛けていたが、残念ながら、大手塾の受験生親子には、その声は届かなかったようだ。
昨年までなら、なんとか合格できた受験生は、ことごとく不合格になった。「こんなハズじゃ、なかったのに・・」と深い落胆に暮れた大手塾の受験生が多かったようだ。
事実、大手塾に長年通われて「全滅」や「ほぼ全滅」になった受験生の保護者から、恨み節が多く届いた。しかし後の祭りだ。確定した過去に対して修正を加えることはできない。将来に、二度とおなじ過ちを犯さない覚悟があるなら、お手伝いできなくはない。
昨年は、実は秋から国内の景気後退が鮮明になっていた。東日本大震災の復興期から長く続いていた景気拡大のトレンドが、大きく転換した。経済統計に表れたのは時間差の影響でコロナの影響が深刻になってからなので、漫然と経済指標やニュースを見ていた人は気がつかなかったかもしれないが、景況感に敏感な人の多くは感じ取れていたはずだ。国公立の出願時期にはもうハッキリとしていたので、その影響もあって、都内の公立中高一貫校は一層の激戦となった。
昨年度の国公立中学入試では、九段Bの難関化と、都立富士と東京大学教育学部附属の合否ラインの上昇が顕著だった。これも、この日記で事前に何度も警戒を呼び掛けていたことだった。
今年度は、コロナの影響で、こうしたことが高校入試で起きる可能性がある。
高校入試は中学入試ほどには、景気変動の感応度は大きくないが、時間差をおいて、というか、やや遅れて、その影響が鮮明になる傾向がある。これに、コロナ学校臨時休校の影響が加わる。さらに第ニ波や第三波への警戒や対応が必要になる可能性もあり、今年度は恐ろしい事態になるかもしれない。
コロナ高校受験、大いに警戒しておいた方がよかろう。
大手塾で聞いても、このまま継続していただければ「大丈夫ですよ」と答えが返ってくだけかもしれない。だとしたら、アナタは捨て駒だ。あるいは、カモだ。
アナタ一人が失敗しようとも、大手塾はまったく安泰なのだから。