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三田学院

[2020年7月3日]

【中学受験】コロナの影響

コロナの影響で、都立中が異次元難化するリスクが高まった。

小石川の異次元難化については、数年前から警戒を呼び掛け続けていたが、実際に2年前に異次元難化した。

コロナの影響が引き金となり、令和3年度入試から、全都立中の異次元難化が始まる気配だ。ただし、残りすべての都立中が、おなじタイミングで、おなじ程度で、異次元難化するとは限らない。ある都立中は影響が大きく、ある都立中は小さめになる可能性がある。

そこには、難関私立中学の併願比率や、交通の便や、立地の面や、地域的な嗜好の違いなどが、複雑に絡み合うことになろう。

おもな要因をご説明する。

一つ目は安全面だ。

より安全な通学経路、より短い通学時間、より近い距離が、学校選びでより重要視されるようになる。

ここで注目されるのが、都立中である。

難関私立中受験生親子が、都立中の併願に、より注目するようになる。

中学受験全般から考察して行く。

1月入試では、埼玉の栄東や、千葉の市川など、1回の受験で、6,000人とか3,000人とかの受験生が集合するようなマンモス受験校やマンモス受験回への警戒が起る。

大学とキャンパスを共有している大学附属校も警戒されるかもしれない。慶応大学や早稲田大学や明治大学などキャンパスが狭い割に学生数が多い大学は、クラスター発生への警戒から、緊急事態宣言が解除されても、いまだに授業を再開できないどころか、キャンパスは閉鎖のまま、在宅オンライン授業での対応が続いている。

大規模ターミナル駅を経由する通学経路となる学校や、大規模繁華街や、大規模オフィス街に近い学校も警戒される。鉄道やバスの「密」、駅構内の「密」、周辺路上の「密な」どが、深刻だからだ。

逆に、徒歩通学圏や自転車通学圏の学校が注目されよう。都心在住の受験生なら、徒歩で通える私立学校は少なくない。

港区三田駅・田町駅に限定しても、男子校の芝と高輪、女子校の東洋英和や頌栄や普連土や品川女子、共学校の慶應中等部など、すぐに多くの学校が候補に挙がる。

港区全域と近接エリアにまで対象を広げれば、この他に、男子校の麻布、女子校の東京女学館や山脇や実践女子、共学校の青山学院や広尾学園など、かなりの候補数となる。

これに千代田区などまで含めれば、男子校の暁星、女子校の女子学院や白百合や大妻や共立女子なども、いざとなれば、徒歩での通学が可能な距離だ。

これに、公立中高一貫校の、九段が、加わる。

都内全域に目を向ければ、郊外に立地する学校が見直されるだろう。特に、都立中高一貫校の多摩地区4校と、都立大泉は、都心立地の私立中学や国立大学附属中学より、安全である。

都立両国も城東エリア内に競合する私立進学校が少ないので、城東地区の難関私立中受験生を奪い返すかもしれない。

つまり、安全面から、都公立中高一貫校が人気が高まる可能性が高い。

二つ目は経済面だ。

家計の輸入に不安が高まると、国公立志向が強まる。これは高校受験で指摘したこととおなじだ。しかし、助成金や支援金がほぼない私立中学では、家計への影響が深刻になる。前回のリーマンショックの時がそうであった。

経済面からも、都公立中高一貫校の人気が高まる可能性が高い。

三つ目は志望校選択面だ。

深刻な中学受験離れが進行する可能性がある。リーマン・ショックと東日本大震災の教訓である。

安全面から、鉄道やバス利用となる私立中学受験への警戒感が強まることは、すでに一つ目で指摘した。御三家や最難関とは違い、なにがなんでもその学校に行きたいとまでは思わない受験生親子は、安全面から、中学受験から離脱という判断も起こり得る。

この影響は、学年が下がるほど顕著となる。

小6は、これまでに、膨大な費用や、膨大な時間をつぎ込んでおり、今さら撤退すると、それらを捨てることになり、踏み切れない層が多いだろう。

しかし、成果の上がっていない受験生親子や、頑張っても難関私立や有名私立に届きそうもない、ボリューム・ゾーンの受験生親子は、早期に撤退すればするほど、損失を少なく抑えられる。

小3以下は、まだ本格的に始めていない親子も多いので、撤退というより、回避や様子見の動きが強まるだろう。

ここでも注目を集めそうなのが、国公立中学校だ。

第一志望を国公立に変更したり、私立受験校数を減らして国公立を併願する受験生親子が増えそうだ。

国公立志望であれば、入学後の学費の心配は大きくないので、気軽に受験勉強を開始できる。

志望校選択面からも、都公立中高一貫校の人気が高まる可能性が高い。

ただ、気軽な対策で合格できるほど甘くはないので、そのことに気がついた時、どんな行動になるのか興味深い。消去法的に高校受験に廻る親子が増える可能性が高いだろうとの予想はしている。

まとめる。

御三家や最難関私立中学校の影響は大きくはない。しかし、難関校では国公立への鞍替えや併願が増え、中堅校以下では受験生の減少が顕著となりそうだ。

ここで難易度上昇を警戒しなければならないのは、都公立中高一貫校と、学芸大学附属世田谷(男女)や竹早(男女)と、お茶の水女子大学附属(男)だろう。

奥の手としては、リモート・ワークの浸透で、通勤に便利な都心や近郊に住居を構える必要性が低下したことを受け、茨城県の取手や守谷やつくばなどに転居し、急激に学校数が増えつつある、茨城県立公立中高一貫校に狙いを定めるのもよいかもしれない。また、住居はそのままで、6年間「完全個室」の全寮制公立中高一貫校の鹿児島県立楠隼中に進ませるのもよいかもしれない。

大都市より人口密集度が低く、遥かに感染者数が少ないため、コロナから我が子と家族の健康を守ることにもつながる。教育費だけでなく生活費も大幅に節約できる。しかも、なにより、家族の安全な生活が手に入る。

高校受験に廻るくらいなら、志望校を国公立に変更しようという層が、極端な集中を起こすリスクがある。

逆に、中堅校以下は、少なくとも今後数年、年を追うごとに競争が緩和する可能性があり、チャンス校が増えるであろう。コロナが去れば、人気が復活するであろう実力校は、向こう数年、お買い得校や穴場校となろう。

しかし、せっかく受験するのだからという気持ちが強くなって、中堅校でも、一部の人気校や注目校の志願者数が極端に増えるという歪みが発生する危険性も高いので、注意が必要だ。

大手中学受験専門塾は、御三家や最難関進学校や最難関大学附属の合格者数(合格率ではない)が命綱なので、表向きは気がつかれないようにしながらも、準難関や中堅以下の学校の受験アドバイスが、後回しになったり、いい加減になったり、どうでもよい対応になったり、しかねない。

そこを丁寧に対応しても、実績にも、売上にも、収益にも、つながらないことを知っているからだ。親身に対応すりつもりは、最初からない。

そんな余力があるのなら、講師であれば、御三家や最難関進学校や最難関大学附属の合格が見込める受験生をしっかりサポートすることに注力し、営業や教室管理者であれば、実績が見込める受験生をより多く獲得することに注力しないと、大手塾の世界では成功できない。ボーナス査定や昇給査定でもマイナス評価になるから、スタッフ自身の生活にとっても死活問題になる。カモはカモとして、捨て駒は捨て駒として、取り扱うことを徹底しないと、大手ではスタッフ自身が生きて行けない。

カモや捨て駒が、無謀な挑戦をすることは、むしろ歓迎されることが多い。自ら進んで、合格を見込んでいる受験生の「噛ませ犬」役になってくれるのだから、大手塾としても大変ありがたいのだ。

初めから不合格を見込んでいても、それを悟られないようにしておけば、他に多くのヒーローを育て上げたのだから、あなたがヒーローになれなかったのは、大手塾の責任ではなく、受験生親子自身の責任だと、黙らせることもできる。栄光を手にした親子が、満面の喜びと感謝の品を携えて訪れているであろう教室に、クレーマーのごとく登場するのは気が引けるだろうことも十分に知っている。

合格者パーティーは、大手塾にとって、厄除けであり、クレーマー除けとして、大いに役立つから、盛大に行われる。

また、この中学受験への影響は、数年後の高校受験へと連鎖していく。「高校受験コロナの影響」で説明したことだ。これも、大手中学受験専門塾や大手都立中受検専門塾などは、知っていたとしても、自分にとって都合が悪いから、積極的には案内しないだろう。

中学受験と高校受験のトータルでは、厳しい競争であることは今後も変わらない。しかし、競争に大きな歪みが生じるリスクが高いことを覚悟しておいた方が安全だろう。

あなたが考えるようなことは、多くの人が考えている。

最適解だと思って行動したら、すでに前提条件が崩れていて、実は最も不適切な行動になっていた、となりかねない。

情勢は、たった1年で、たった数ヶ月で、急変する。

前年までなら合格できた受験生が、ことごとく不合格に廻るようなことが起る。

おなじようなことが、次は都立中で起こるかもしれない。

御三家や最難関私立中受験生が降りてきたら、牧歌的な公立中高一貫受検生は、ひとたまりもなく吹き飛ばされる。

すでに小石川では、2年前から起こっていることだ。

過去の日記で書いたことなので、詳説はしない。

これが、他の都立中でも起こるリスクが高い。

昨年まで、異次元難化したのは小石川だけだった。

このコロナで、他の都立中も、次々と異次元難化していくだろう。

刻々と変化する情勢を的確に理解できず、先を読む力が乏しく、適切な行動に踏み切れない受験生親子は、思いもよらぬ窮地に立たされるだけでなく、思い描いたような結果を残せないリスクが高い。

あなたにとっての好都合は、多くの人にとっても好都合だ。
あなたにとっての不都合は、多くに人にとっても不都合だ。

受験市場は、この原理で、動く。

好都合さや不都合さが、強ければ強いほど、極端に動く。