[2020年8月28日]
夏休みが終わり、学校授業が始まった人が多いだろう。
例年、夏休みが終わり2学期が始まると、巷では、中3高校受験生に受験逃亡者が、出始める。
今年も、塾生の通う公立中学で、受験逃亡を予言する高校受験生が増殖を始めた。
ここで、高校受験逃亡者とは、実質無試験で合格できる私立高校推薦入試(私立高校単願入試)希望者と、実質試験は実施されない通信制高校への入学希望者を指す。
つまり、一般入試などの競争試験を突破して高校に入学しない高校受験生のことだ。都立高校の推薦入試は競争試験だから、激しい競争となるのが一般的で、逃亡者ではない。また、難関私立高校の推薦入試も多くは競争があるため、逃亡者にはあたらない。
自分には、高校受験の本格的な受験勉強など到底ムリだと、この期に及んでやっと、はっきりと悟り始める受験生のことだ。
受験勉強をムリだと感じる理由は、学力が足らないことが原因ではない。むしろ、勉強姿勢の欠如が原因であることがほとんどだ。
勉強姿勢が確立できるかどうかは、小学校中学年までの取り組みが大きく左右する。中1の夏が終わる頃には、もう手遅れとなってしまう人がほとんどだ。多くはその状態のまま人生を送り、生涯を終える。もちろん、何かをきっかけに、本格的に挽回できる人がいない訳ではない。しかしあくまで例外だ。
小学校中学年までの取り組みが大きく左右すると聞いて、高校受験を目指して小学校中学年までに塾通いを開始すれば解決するというような安易な問題ではない。このことは、機会があればいずれまた改めてご説明したい。過去の日記にも何度か書いたのでご参照されてもかまわない。
話しは戻るが、事実として、新中1までに本格的に高校受験を目指して勉強を始めた塾生の学力の伸びが有意に大きい。中3から始めた高校受験生はほぼ例外なく激しく苦戦する。小学生の内から始めても、本人にその気がないなどで噛み合っていなければ、やはり苦戦する。この苦戦が逃亡の最終的な要因となる。
逃亡者が出ると他の受験生に良からぬ影響が及びかねない。このため、中3以降に受験勉強を本格的に開始する高校受験生は、受け入れないことにしている。中3の部活引退後からを受験勉強を開始する高校受験生は逃亡予備軍の可能性が高いとみなすのが安全だと判断している。すでに真面目に取り組んできている塾生に迷惑はかけられない。
「高校受験の準備は中学入学後から始めればよい」と考えている層は、そのほとんどが、中学入学後も適切な高校受験の対策ができないまま、あるいは、しないまま、いつのまにか中学3年間を終え、本人や保護者はボヤっとしか認識できないまま、しかし側からはあからさまに認識できる形で、下方志向の人生を、名実ともに、歩みだすことになる。
「ヤル気がないのは本人のせいだ」と、あるいは、「私立単願にしたいと言い出したのは本人の意思だ」と、子に責任を押し付ける親も多い。しかし、そう育ててきたのは保護者であるから、そうなった責任から完全に逃れることはできない。むしろ、この世に生まれてまだ10年と少々の子よりも、すでに学校生活を経験し社会生活も経験した保護者の方が、この問題に関しては経験があるのだから、責任が大きいと言える。
時代が変わり、制度も変更になっているが、本質は何も変わっていない。少なくとも、知りませんでしたや、忘れましたは、通用しない。
もちろん、持って生まれた器の限界の存在も完全には否定できない。しかし、器をもてあましている人の方が遥かに多いと感じている。つまり、己の限界など一度も試さないまま生涯を終える人がほとんどなのではないかということである。
中1と中2では定期テスト勉強は提出課題だけで精一杯、中3の6月まで部活三昧で疲れ切って実質ノー受験勉強、中3になって、塾の夏期講習をきっかけに挽回を図ろうとするが、慣性の法則で、もう心も身体も言うことを聞かない。気がつけば短い中3の夏休みは終了し、受験勉強どころか、2学期の中間テストの勉強にさえ不安が大きく、自信がない。
2学期中間テスト:9月下旬〜10月上旬
多くは、ここでも、受験勉強が実質的に止まる。そして、中間テストの結果を見て、さらに逃亡者が増える。
2学期期末テスト:11月中旬〜11月下旬
またも、多くの人は受験勉強が実質的に止まる。期末テストの結果を見て、さらに逃亡者が増え、最終的な逃亡者比率に近づいていく。
逃亡者は、実質的に数ヶ月しか試みなかった、あまりにも短かかった実質的な受験勉強期間を、名実ともに自らの意思で終了することになる。
内申確定:11月末
進路面談:11月末〜12月上旬
逃亡者は、実施無試験合格となる、推薦という名の、私立高校単願受験を、最終的に選択する。
受験校実質確定:12月中下旬
推薦入試:新年1月
一般入試:新年2月
進学先高校確定:1月下旬〜2月下旬
中学卒業:3月中旬
近隣では、約7割の中3生が、高校受験の実質的な逃亡者として、高校受験を終了する。
毎年おなじことが繰り返される。
しかも、逃亡者の比率は、年々増えているように、感じる。
世界的な学力調査で、順位を落とし続けている実態と、相関があるかもしれない。
国際競争力を失い、貧困化が加速し、格差が拡大する。
この流れを、どこかで止めなければ、平和で豊かな社会の維持は、難しくなるかもしれない。
戦争や紛争や内乱、差別、格差は、ほとんどが経済的な理由から発生していることを、人類の歴史から、もう一度、学び直すべき時期がきているのではないだろうか。