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三田学院

[2020年9月24日]

【都立中】思考力・判断力・表現力はもう古い

適性検査では「思考力・判断力・表現力」が問われるとされてきた。

しかし、単なる「思考力・判断力・表現力」は、もう古い概念となりつつあることに、お気づきだろうか。

新しい適性検査の出題方針は「主体性・多様性・協働性」までを問うものになりつつある。

実は、私立学校でも、おなじような出題方針にシフトする学校が増えつつある。

現) 知識・技能 → 思考力・判断力・表現力
新) 知識・技能 → 思考力・判断力・表現力 → 主体性・多様性・協働性

主体性とは、主体的思考力のことである。
多様性とは、多様性受容力のことである。
協働性とは、協働的問題解決力のことである。

つまり、受動的な思考力しかないとか、偏った受容力しかないとか、孤立的な問題解決能力しかないようでは、対応できないような、「主体性・多様性・協働性」を備えた問題解決能力や創造力までが、試されることになるということだ。

最新の、令和3年度小石川中等教育学校の出題方針(検査内容)を、引用する。

<引用開始>

第3−5−1 検査内容

本校の特色に照らし、入学を希望する児童の将来の進路に対する目的意識、6年間の一貫教育の中で学ぼうとする意欲、課題発見・解決能力、集団への適応性等、中高一貫教育校で求められる適性をみるとともに創造力や協調性をみるものとする。

<引用終了>

これを分解し、主体性・多様性・協働性を対応させてみる。

入学を希望する児童の将来の進路に対する目的意識 → 主体性
6年間の一貫教育の中で学ぼうとする意欲 → 主体性
集団への適応性 → 多様性・協働性
創造力や協調性 → 主体性、多様性・協働性

これまで通り「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」は、ベースの力として問われるであろう。しかし、勝負は、それらに加えて、「主体性・多様性・協働性」がどれだけ備わっているかに軸足が移っていくのではないかと考えられる。

基本:知識・技能
応用:思考力・判断力・表現力
発展:主体性・多様性・協働性

と捉えていただければ、分かりやすいだろう。

主体的に行動でき、多様性を理解でき、協働して問題解決できる能力が備わっているかどうかが、適性を検査される上で、カギとなっていくであろう。

「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」だけでなく、「主体性・多様性・協働性」までとなれば、すぐにはもちろんだが、いつまでたっても、本質的に対応できない受検指導塾も出て来るであろう。

今でも、「思考力・判断力・表現力」にでさえ、本質的には、対応できていなのではないか、と思われる塾が多い。

さらに、「主体性・多様性・協働性」までとなれば、「まねっこ」や「なんちゃって」では、誤魔化しきれなくのではないだろうか。

この「主体性・多様性・協働性」は、2015年に国連総会で採択された、「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)とも深く関連している。

全国の公立中高一貫校の適性検査はもちろん、私立学校の入学試験でも、すでに頻出分野の一つとなりつつある。

これが、単なる知識問題としてではなく、さらに踏み込んだ内容や形式の適性検査問題や学力試験問題として、出題されることになるだろう。

これまでにも、「思考力・判断力・表現力」ばかりでは、合格が難しくなってきていることは言及してきた。

「知識・技能」も高めないと、難関都立中への合格が難しくなってきていることも言及してきた。

「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」の両方の力を、本質的に高めれば、難関都立中にも難関私立中にも、合格の道が開けることも説明してきた。

今後は、これに加えて、「主体性・多様性・協働性」の力が、本格的に要求されるようになる。

今でも、全国を探せば、そこまでしなくても合格できる公立中高一貫校は、いくらでもある。そのことは、最新の全国の適性検査問題を分析していて、確認できている。

しかし、難関都立中を攻略したければ、もうそれでは、明らかに不十分だ。

もちろん、そうした指導を明確に受けなくても、合格する人はいるかもしれない。でもそれは、知らず知らずに、そうした能力を身につけていた人に限られるであろうし、それを期待するのはリスクが高い。

全国の公立中高一貫校や適性検査型私立中学入試の、過去問や過去問類似問題が解けるようになる準備だけでは、難関公立中高一貫校への合格は、より厳しくなっていくと思われる。

難関公立中高一貫校と、難関私立中学や難関国立大学附属中に、ともに合格を目指すなら、なおさらだ。

難関都立高校入試(特に推薦入試)でも、主体性・多様性・協働性が、本格的に問われるようになっていくだろう。