[2020年11月9日]
都立中に限らず、中学受験を目指す親子の多くは、中学受験のことで頭の中が一杯で、その後のことについて考える余裕がないことがほとんどであろう。
誰もが理解していることは、中学受験で残念になり、地元公立中学に進んだ場合は、高校受験が待ち受けていることだ。しかし、中学受験段階で、高校受験まで詳しく調査している親子は少数派のようだ。
長兄や長姉がいれば、自然と何がしらかの情報は入って来るだろうが、年の差が小さければ、高校受験結果まで詳しく入ってくることは稀であろう。
少子化で兄弟がいないケースもあるし、兄弟姉妹の年の差が大きいケースでは、タイムリーに情報を得ることは容易ではない。
塾生ではない受験生の追跡調査を網羅的に行うのは難しいが、塾生の通う小学校のおおよその情報なら入ってくる。
これに、東京都教育委員会が公表している、公立小学生の進路状況調査と、公立中学校の進路状況調査を重ね合わせると、厳しい現実が浮かび上がってくる。
平均すると、こんな感じだ。
まず、都内の公立中高一貫校を受検する児童は、平均すると1クラスに5人程度いる。
ところが、小学校ごとのクラス規模にもよるが、概ね一つの小学校から都内の公立中高一貫校に合格できるのは、0〜2名程度だ。
ここまでは、平均の受検倍率にほぼ等しいので、大きくは外れていないことが確認できる。
問題は、都内の公立中高一貫校に残念になった受検生が、その後どうなったかである。
港区内だと、地元公立中学校は、10校程度しかない。
それぞれの地元公立中学校から、都立高校進学校に進学する人数は、0〜3人程度だ。
それぞれの地元公立中学校は、1〜3校程度の地元公立小学校の学区を、指定学区としている。
つまり、地元公立中学は、平均すると、地元公立小学校2校分となる。
一つの地元公立小学校からは、平均すると約10名が都内の公立中高一貫校を受検し、平均すると、1〜2名が合格し、8〜9名が残念となる。
少なめに見積もって、一つの地元公立中学校には、15名程度の「残念組」がいることになる。
この「残念組」と「非受験組」を合わせた人数、1校あたり70〜100人から、都立高校進学校に進学できるのは、平均すると2人程度だ。
仮に、地元公立中学で、成績上位を争うのは、全員が「残念組」の15人程度だったとしよう。
その仮定でも、「残念組」が、高校受験で都立高校進学校に進めるのは、7人に1人程度となる。
実際には、中学受験しなかった成績優秀層も参戦することになり、分母がさらに大きくなるので、「残念組」が進学校に進める可能性はさらに低くなる。
もちろん、地域による多少の誤差はあろう。
しかし、「残念組」のほとんどは、高校受験でも、進学校には進めない、と考えた方が、実態に近いであろう。
近所からも、九段に落ちて、その後に低偏差値私立高校に単願進学したとか、白鴎に落ちて、その後は進学校とは呼べない中堅の都立高校になんとか進学できたとか、そんな話しがやたらと多く聞こえてくる。
都内の公立中高一貫校を目指す親子は、この実態を、知っているのであろうか。
上手く行ったケースの情報は巷を駆け巡るが、上手くいかなかった情報は巷に広がらない。
もちろん、上手くいく人も、高くはない確率ではあるが、存在はしている。
しかし、それは、あなたの子のことだとは限らない。
むしろ、それは、あなたの子ではない可能性の方が高い。
高校受験は、適性検査型の入試ではない。
大学受験も、適性検査型の入試ではない。
過去問を見てもらえば一目瞭然である。
公立中高一貫校に挑むリスクを、改めて正確に把握しておかれることが肝要だと思う。
あなた親子は、どの受験機会で、夢を実現しようと考えているのだろうか。長期的な視点に立って、十分に確認されることをお勧めする。
甘い誘惑で、あなた親子を惑わそうとしている輩が、巷にはたくさんいることに、1日でも早く気がつくべきだろう。
適性検査は、学力試験とは違い、ハッキリと実力差が見えにくい。このため、何とかなりそうな気になりやすく、たとえ解けなくても、学力試験に比べて気分がへこみにくい性質がある。どの程度の解く力があるのかも、受検生親子には正確には把握しずらい。
そこを、悪意のある輩が悪用する。
いつまでも、合格できるかもしれない気分にさせておくのだ。
これを、適切な受検指導と、言えるのであろうか。
少なくとも、私の考える指導とは真逆の指導だということだけは、明確なようだ。そして、大手などで合格できるかもしれない気分にさせてくれることを喜ぶ親子が少なくないことも、明白なようだ。
しかし、公立中高一貫に進めたとしても、地元公立中学に進むことになったとしても、どちらでも活躍できるように、十分な学力を、しっかりと身につけられるような指導をすることが、最低でも必要だと考えている。合格を目指した指導をするのなら、なおさらである。
合格を目指した指導が、受験生親子にとって、必ずしも心地よいものではないことくらい、十分に承知している。
しかし、そうしなければ、合格することが難しいことも、また、事実なので、合格を前提にした指導をやめるつもりはない。
大手塾や、大手塾を模倣した中小塾の、不合格者数が多くなる指導や、不合格率が高くなる指導は、多くの受験生を確保するには適しているので、塾にとっては都合がよいのだろうが、そこで学ぶ受験生たちが夢をつかむ確率が高くならないので、受験生親子のためにはなっていない。
そのことを、客観的なデータが、明示してくれているのである。