[2020年11月24日]
都立中学の適性検査は、小学校学習範囲からしか出題されないと信じている受検生親子が多いようだ。確かに、建前ではそうなっている。
しかし、ある都立中の適性検査では「パスカルの三角形」が出題された。
高校数学2Bで学習する内容だ。
「二項定理」と言えば、思い出す人が多いかもしれない。
都立高校の一般試験は、中学校学習範囲からしか出題されないと信じている受験生親子が多いようだ。確かに、建前ではそうなっている。
しかし、「チェバの定理・メネラウスの定理」が頻繁に出題される。高校数学1Aの範囲だ。進学塾の高校受験指導では、中学生に定番で指導される内容だ。
これは私立中学の入試でも頻出分野でもあり、中学受験指導では小学生にも常識的に指導される。
適性検査算数も、難関私立中学算数も、都立高校入試の自校作成算数も、難関私立高校算数も、高校数学を使うと、簡単に解ける問題が多い。そうした問題が、入試において、小学生や中学生に実際に課されているというのが、実態である。
優秀な受験生や受検生の中から、さらに優秀な生徒を選抜しようとすれば、おのずと難易度の高い問題を出題せざるを得なくなる。そこでしばしば参照されるのが、高校数学である。
中学入試の試験問題を作問する先生が、高校の数学の教師であることが多いことも、影響しているかもしれない。
「順列と組合せ」も高校数学1Aの範囲だが、中学入試の頻出問題だ。都立中入試でも頻出分野だ。
「N進法」も高校数学1Aの範囲だが、中学入試の頻出問題だ。都立中入試でも頻出分野だ。
「等差数列と等比数列」は高校数学2Bの範囲だが、中学入試の頻出問題だ。都立中入試でも頻出分野だ。
中学受験や高校受験をするために、高校数学の全てを学び終えておく必要はないが、高度な数学的素養が求められていることは、明らかだ。
都立中の適性検査では、入学後の進学校の高難易度カリキュラムに落ちこぼれないように、高校数学にも対応できるかどうかを、こっそりと、その適性を検査しているのかもしれない。
私立中や私立高の進学校では、こっそりどころか、はっきりと、高校数学が入学者選抜に利用されている。
都立中や私立中進学校に入学後、数学についていけなくなる生徒が少なからずいる理由も、ご理解いただけるであろう。受験算数や受検算数が得意でないのに合格できてしまうと、入学後に危ないのである。入学前にしっかりと素養を養っておくのが安全だ。
小学生には、高校数学を高校数学のまま理解させるのではなく、高度な工夫を凝らして、算数として理解させる必要がある。高校数学の公式や定理をそのまま教えたら、小学生の多くは理解できずにただ混乱するだけだ。小学生の発達段階に合わせて指導しなければならない。
それは、算数を中学数学の考え方を使って指導してはいけないことと、おなじである。中学数学を得意とする保護者が陥りがちな誤りでもある。
算数の世界の中で完結させなければならない。
中学受験算数や中学受検算数の指導は、そして、難関高校受験数学の指導は、その意味でも、必然的にプロフェッショナルな仕事になるのであろう。