[2020年11月26日]
ここ数ヶ月、思うところあって、高校数学についての調査を重点的に続けてきた。最新の大学入試の状況や、高校学習指導要領の改定や、進学校における数学指導の変化や、進学校の生徒の数学における学習傾向などから、新しい発見がいろいろとあった。
もともとのきっかけは、都立中入試算数を分析していて気になったことがあったことだった。
私立中学入試算数も、適性検査算数も、必要とされる算数の力に根本的な違いはない。しかし、出題傾向というか、頻出分野に特徴的な違いがいくつか見られることは、すでに過去の日記で説明した通りだ。
実は、理科においてもおなじことが言えるのだが、話しがややこしくなるので、理科については別の機会に触れたいと思う。
都立中などの公立中高一貫校と、難関私立中学が、並列的に第一志望だという受験生というか受検生の比率は、今でも必ずしも高くはないだろう。公立一貫か私立のどちらかが本命で、どちらかが第二本命だということが多いのではないだろうか。このため、対策の実態としては、必然的にどちらかにティルトがかかる。
私立難関校でも、都公立中高一貫校でも、思考力が問われるのはもちろん、記述式での解答が求められることも多いが、思考力型とか記述式型とはいっても、両者には大きな違いがあることが多い。
よって、合格可能性を極限まで引き上げようとすれば、両者ともに、志望校対策の重要性が非常に高くなってくることは、これまでと変わりない。
具体例を上げれば、難関私立中では「立体の切断」は頻出だが、公立中高一貫での出題は珍しい。ところが、「立体の規則性」となると、ともに頻出分野となる。
「数列」や「場合の数」は、どちらも頻出となる。
実はこの分野、旧帝国大学など難関国立大学の二次試験でも頻出分野であり、非常に興味深い。
少し脱線するが、難関都立高校の自校作成問題では、「関数」や「図形」や「証明」の難問が頻出分野で、ここで実質的に合否が決まる。高校受験における難問指導の核として、ずっと取り組んできた領域でもある。
この点に注目すると、都立中入試の算数と、都立高校入試の数学は、かなり傾向が違うと言える。つまり、「都立中入試で残念になったら都立高校入試でリベンジ」というのは、単純な話しではないということだ。都立校を、中学入試で狙うのか、高校入試で狙うのかにおいては、算数と数学の違い以上に、取るべき戦略の違いが大きい。
「場合の数」つまり「確率」においては、中学入試と高校入試で根本的な違いはない。むしろ、中学や高校で学ぶ「確率」と大学で学ぶ「確率」の違いの方が大きい。
脱線が長くなってしまったが、検討しているのは、中学入試における算数指導において、さらにティルトをかけた戦略を取るべきか否かについてである。
都立中入試算数の高難易度化への対応をさらに深化させることと、難関私立中学算数の高難易度問題への対応を充実させることを、ともに実行しようとすると、いずれ決断しなければならないだろう。
もちろん、基礎基本を徹底する指導方針に、変更はない。
ただし、都立中学上位校と難関私立中学への合格可能性を、ともに、さらに引き上げようとすれば、避けて通れない課題だ。加えて、難関高校への合格可能性をさらに高める指導を行う上でも必要だ。この取り組みは、ひいては、大学合格実績の引き上げにもつながっていくだろう。
今すぐにそこまでは踏み込まないとしても、令和3年度より、算数指導に、より磨きをかけることにする。すでに指導内容のチューニングについては、プランができあがっている。小3募集の再開に伴い、さらに早期から受験生の能力を引き上げていく取り組みを強化する。新小3と新小4から全面的に刷新する。現小4と現小5については経過措置を講じる。
ただし、受験生の負担を大きくするつもりはないので、ご安心いただきたい。
また、どこかの塾が宣伝しているような「都立も私立も」とは、根本的に次元の違う内容なので、誤って混同されないようにお願いしたい。