[2020年11月28日]
都立中に限らず、多くの高校では、高2から文系と理系にコースが分かれる。このため、高1の冬頃には、どちらのコースへ進むのかの選択を迫れることになる。
ところが、高1の段階で、将来に文系を目指すことになるのか、理系を目指すことになるのか、明確に分かっている人はほとんどいない。
何を判断基準にしてよいかわからず、数学が得意だから理系、数学が苦手だから文系、というような意思決定をしてしまう人が多い。
ところが、数学が得意なのに理科が苦手な人もいるし、数学が苦手なのに理科が得意な人もいるし、英語が得意なのに国語や社会が苦手ない人がいるし、英語が苦手なのに国語や社会が得意な人もいる。
こうした場合には、理系を選択するのがいいのか、文系を選択するのがいいのか、非常に悩むであろう。
もっと言うと、数学が得意で社会が得意な人もいれば、英語が得意で理科が得意な人もいる。
さらに言えば、数学も英語も得意な人もいるし、数学も英語も理科も社会も国語も得意な人もいる。
こうした場合にも、理系を選択するのがいいのか、文系を選択するのがいいのか、非常に悩むであろう。
多くの高校では、理系を選択すると世界史と日本史と地理から2科目ないしは1科目の選択となることが多く、文系を選択すると物理と化学と生物と地学から2科目を選択することになる場合が多いのではないだろうか。
私の通った高校では理系はもちろん文系でも数学3が必須であったが、世間一般では文系に進むと数学3を履修しない高校が多いかもしれない。
もっと言うと、私の通った高校では、文系でも物理2や化学2や生物2から2科目が必須だったから、理系と文系の違いにほとんど差がなかった。
他の高校が文理分けをしているから、名目的に文理分けしているような感じだった。
ここで、文理選択における戦略を提案する。
少しでも迷いがあるなら、理系を選択しておくのだ。
理系を選択しても、将来の大学受験で文系学部を受験することは可能である。しかし、文系を選択してしまうと大学受験で理系学部の受験が実質的に難しくなる。
「集合と論理」で考えると、理系は文系を「包含」し、文系は理系を「包含」しない。
もっとわかり易く言えば、文系は理系の「部分集合」(真部分集合)である。
よって、理系を選択しておけば、将来どの学部にも進むことができる。高校理系選択から文系学部に進学することを「文転」と呼んだりする。
理系を選択すると、社会科で、世界史と日本史をともに選択できなくなるかもしれない。しかし、それは将来的に大きなハンディとはならない。高校日本史は中学生の歴史学習の際にドンドン深堀学習しておけば高校で新たに学習することはほとんどないし、生涯においていつでも独学で深堀できる。また、高校世界史は世界の主要な歴史を俯瞰的に学ぶ程度にとどまり個別の国の歴史を深堀はしないので、高校で世界史を選択しなくても、いつでも学び直せる。
そもそも、世界史も日本史も、高校の授業を聞かなくても、山川の教科書を読み込めば、センター試験(共通テスト)で80%以上取れる。倫理や政治経済なら、高校の授業などを聞かなくても、90%以上取れる。難関私大の日本史などはそうはいかないが、高校授業を聞いたとしても高得点は取れないので、結局のところ同じになる。
むしろ、理系では、古文や漢文の授業時間数が甘くなる方が、将来に文系学部へ進もうとすると、現実的には影響が大きいかもしれない。しかしこれも、高校の国語教員による眠たい授業を受けるよりも、もっと効果的かつ効率的に学び、結果を出せる方法があるので心配はない。塾生にはその方法で指導し実力をつけてもらっている。
英語は、文系でも理系でも、できないと話しにならないので、文理選択の判断には、実質的に関係ない。
少しでも迷ったら、理系を選択することをお勧めする。
数学で苦労することを嫌がる人もいるかもしれないが、高校で数学から逃げたら、生涯にわたり数学から逃げ続けることになりかねないので、少なくとも高校卒業までは頑張って数学を学ぶべきだ。
大学生になってから、高校で逃げた数学を学び直そうとしても、ほぼ独学に近い状況に追い込まれるので、かなり難しいと思う。大学では、どの教科も、手取り足取りでは教えてくれない。教科書に書いてあるようなことは、自分で勉強するのが原則となる。結果として、大学教養課程の数学授業が理解できずに、単位を落としたり、希望学科や希望専攻に進めなかったり、留年したりするリスクが高くなり危険だ。
大学の文系学部でも、経済学部や経営学部や商学部などは、今や数学ができないと、大学レベルの研究が満足にできない。近い将来、政治学や人文地理学や歴史学や国際関係学でも、数学的アプローチによる研究が盛んになるかもしれない。
少しでも迷ったら、高校課程では、理系を選択するのが安全だ。
文系選択か理系選択かをグダグダと悩み続けるくらいなら、その時間は勉強時間にあてた方が、より成功に近づける。
「大学」へ進学する際に「文転」したってかまわないし、「大学院」に進学する際に「文転」したってかまわないし、「就職」する際に「文転」したってかまわない。人生の途中で「文転」したってかまわない。ただし、文系から理系に「理転」するのは、どのタイミングであっても、とても難しいと思う。
もちろん、すでに進む道が明確に決まっているのなら、その道を突き進めばよいだけだ。