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三田学院

[2020年12月2日]

【都立中】授業進度

都立中と言えば、高校受験のない中高一貫教育のメリットを活かして、私立中高一貫のように、高速カリキュラムで授業が進むことが、すでに広く知れ渡っている。

数学で言えば、中高一貫校の進学校では、中学内容は中2で終わり、数1Aが中3の12月頃までに、数2Bが高1の10月頃までに、数学3が高2の6月頃までに終わるのが一般的だ。もっと早い進度の進学校も多い。

3年制高校だと、進学校の場合、中3まで中学内容を学ぶことになるので、約1年と少々遅れて、数1Aが高1の1月頃、数2Bが高2の12月頃、数学3が高3の7月頃に終わるのが一般的だ。公立の3年制高校だと、トップ校であっても、ほぼこれが最高速度になる。

進学校では、どうして数学の授業進度で急がなければならないかと言うと、大学入試を見据えた対応が必要だからである。

国公立大学や難関私立大学では、入試で記述式の問題が主力となる。記述式では、数学がタダ解けるだけでは得点になる答案は書けない。これを攻略するためには十分な訓練が必要になる。このため高3は、共通テスト(一次)の対策と並行して、個別試験(二次、私大入試)の答練に時間を割く必要がある。

問題なのは、理科である。

中高一貫校でも、3年制高校でも、理科のカリキュラムはさまざまで、これが一般的だとして説明するのは難しい。

代表的と考えられる例をあげてみよう。

中高一貫校の場合は、中3のはじめか途中あたりから高校理科に入り、高2でほぼ大学入試範囲を終えるペースの学校が多い。高3は選択科目で演習授業となることが多い。

中3・高1:化学基礎、物理基礎、生物基礎
高2:化学、物理、生物から2科目、または、化学が必修で、物理か生物かの選択
高3:選択した2科目の演習

3年制高校の場合は、名目上は以下のようになっていて、少し早めに上級科目に入る進度で進むが、分野別になっている関係で、年度をまたいで数学のように授業を先取りで進めることが難しい。このため、学校では、早くても高3の10月まで、遅ければ高3の12月まで、高校範囲の授業が続き、高3で大学入試を見据えた演習授業は、はほとんど組めないか、ほんの少しだけになる。ほとんどの高校では、高3の正月が明けて、共通テスト(センター試験)が終わると、授業らしき授業は行われず、自由登校のようになる。ほぼ、自習か自由参加の補習だ。

高1:化学基礎
高2:物理基礎、生物基礎
高3:化学、物理、生物から2科目を選択

中高一貫校と3年制高校では、授業進度の差による影響は、実は数学よりも理科で大きいと言える。

大学の文系学部では、数学は2Bまでで、理科は基礎科目だけの2科目(または、化学基礎+化学などのような1科目)が試験範囲になるため、3年制高校のデメリットはさほど大きくない。ところが、大学の理系学部を目指す場合は、中高一貫校にハッキリとしたメリットがある。

しかし、地方の公立高校トップ校などからも、難関国立大学に進学する生徒が多数いる。ということは、数学はもちろん理科でも、3年制高校の授業進度でも十分闘えるのではないかと見方もできよう。

ただしそれは、浪人率まで加味しないと判断できない。

例えば、日比谷高校と小石川中等を比較した場合、小石川の東大合格者の現役比率が非常に高いのに比べ、日比谷は浪人比率が高い。このことから、中高一貫校の授業進度の早さは、大学受験を目指す観点から、非常に有効であると言えそうだ。

さて、話しは理科に戻るが、そうは言っても現役で難関合格する3年制高校の生徒もいないわけではない。

となると、理科では極端な先取進度の体制を敷かなくても、難関大学入試に対応できるということになる。

入試問題や入試結果を分析すると見えてくることだが、理科は数学ほど難問で高得点を取れなくても、合格できる状況にある。ただし医学部医学科を除いて考える必要はある。

つまり、理科は数学程ほどには、単元を横断した総合演習や、記述式答案の訓練は必要ないということだ。

このため、授業進度に合わせて仕上げまでできていれば、高3で1年かけてじっくりもう一周するかのような演習をしなくても、合格できる。

ただし、理科は、特に途中で本格的にたるんでしまうと、リカバリーする残り期間はないので注意が必要である。物理と化学は特に要注意だ。

中高一貫校における数学の総合的な受験対策としては、数1Aと数2Bは、授業進度に合わせて共通テストレベル程度の基礎をしっかり固めておき、数3に入ったら、数1Aと数2Bの総仕上げと並行して数3の基礎固めを行い、数3が終了した高2の夏から、いっきに大学入試の総合演習に入り、徐々に難問に対応できるように難易度を上げていくとよい。

中高一貫校における理科の総合的な受験対策としては、基礎科目は授業進度に合わせて共通テストレベル程度の基礎をしっかり固めておき、授業が上級に入ったら、基礎科目の復習と総仕上げを開始して、それと並行して、上級科目の基礎固めを進めるとよい。上級科目が終了したら、全体の、特に上級科目の、総仕上げに入ればよい。難問対策は、志望校の出題傾向に合わせて行えばよいと思う。すべての難問で高得点がとれるようにまで仕上げなくても、合格ま行ける。

今回のつづきとして、いつか、数学では、高校数学の授業対策、具体的には、傍用問題集の扱い方と共通テスト対策、個別試験対策(二次)について、書きたいと思う。

理科では、基礎科目対策と共通テスト対策、そして上級科目と個別試験対策(二次)について書きたいと思う。

また、三田学院で実施している、これらに対応した指導についてもふれたいと思う。