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三田学院

[2021年1月22日]

【令和3年度入試傾向】 安全志向

埼玉入試と千葉入試の動向から感じ取られる令和3年度入試の傾向は「安全志向」と言っていいだろう。

全体として出願倍率が低下している。当然に実受験倍率も低下していると思われる。

1.コロナの影響で、挑戦志向が弱まっている。
2.コロナの影響で、記念受験やお気軽受験や冷やかし受験が減少している。
3.コロナの影響で、感染リスク回避を強く意識した出願となっている。

「挑戦志向」減退の影響だと思うが、都立高校入試では都立三田の女子の倍率は2.93倍(第一志望調査)と異常な高倍率となっている。一方で都立小山台の女子の倍率は1.19倍である。

「挑戦志向」減退の影響は中学入試でこそ顕著だ。まだ出願が締切られていないから確定的なことは言えないが、男子では偏差値65程度未満、女子では偏差値60程度未満が、今年の最激戦地帯となりそうだ。

男子では、昨年度血だらけの入試となった世田谷学園と巣鴨は、激戦を敬遠する動きから前年並み以下の出願となりそうだ。代わって、今年の男子進学校では高輪が特に要注意だ。大幅に受験生を増やす勢いだ。獨協など、これに準ずる難易度の男子校も過熱しそうだ。

女子は山脇の加熱が続く。加えて跡見も過熱傾向に参戦となる。ここ数年お得感の強かった実践女子が盛り返す気配で、山脇に次いで受験者数の増加が多くなりそうだ。代わって、共立女子がややクールダウンしそうだ。

「記念受験」などの減少は、都立中で顕著だ。定員を拡大した武蔵と富士は3倍台前半の応募倍率まで沈んだ。

「感染リスク回避」では、埼玉共学私立御三家の栄東、開智、大宮開成の出願倍率の減少が顕著だ。学校の感染リスク低減対策を踏まえても減少となった。

これは千葉校でも確認できる。渋谷幕張、東邦大東邦、市川の千葉共学御三家も、おなじような傾向にある。

「感染リスク回避」により練習不足の東京日程本命受験生が多くなりそうだ。

密かに進行しているのは、最難関や難関大学附属ではなく、中堅大学以下の大学附属中の人気だ。

男子では獨協や日大豊山がこれに相当する。女子では昭和女子大昭和や跡見や実践女子などが相当する。これ以外の大学附属も要注意だ。昨年まではさぼど厳しくなかった附属校が、静かに競争が厳しくなる怖れがある。

あえて学校名は書かないが、多くの附属校で、前年より厳しい競争になりそうな気配だ。

中学受験をしない小学生にとっても、私立中学入試における安全志向は、他人事ではない。相対的に難易度の低い私立中高一貫校が、中学募集で充足率を改善させれば、将来の高校募集人数が絞られることになる。これにより、単願推薦や併願優遇の基準が厳しくなる怖れがある。

また、中学受験をしない小学生にとって、高校受験における安全志向も他人事ではない。挑戦志向の減衰で力のある受験生が志望校を下げると、玉突きで学力中間層が目指す難易度のゾーンが激戦化する。

都立三田の異常な倍率は象徴的で、進学校を目指せる受験生が、都心ではもっとも平易な難易度の都立の進学校に集中したことで起きた。

高校は義務教育ではない。残念になった場合に通える公立の受け皿は基本ない。冷やかし抜きの真剣勝負だ。その意味では都立中入試よりも厳しい闘いになる。

影響は、その下の難易度の都立広尾や都立田園調布にも波及している。広尾の女子は2.29倍、田園調布の女子は2.00倍だ。これも厳しい闘いになる。

高校受験でなら、なんとかなるかもしれないという、根拠のない楽観は、通用しない。

高校受験で、輝かしい合格を手に入れたければ、中学受験生とおなじように、小学校での学習に打ち込まなければならなかったことに、後になって気がついても後の祭りだ。

中学受験しないのに勉学に励むのは、小学生には辛い。

だからと言って、記念受験やお気軽受験に取り組むのは、まったくのお門違いだし、結局は何もしなかった場合と大差はなくなるだろう。

高校受験で栄光を勝ち取りたければ、小学生のうちから、高校受験を目指して、しっかり取り組むべきだ。

都立高校入試は、適性検査でも、基礎学力試験でも、ない。

親子そろって、自分の目で、過去問題集を、しっかり確認すべきであろう。

さもなければ、怪しいキャッチコピーに惑わされて、余計な支出や、余計な時間の浪費を余儀なくされることになる。

悪徳の毒牙にかかっても、何も良いことはない。

高校受験も、甘くはない。

いや、高校受験こそ、甘くはない。

高校受験こそ、正しい戦略で臨むべきだ。