[2021年3月15日]
今春の難関大学入試では、首都圏を始め大都市圏の進学校の東大や京大などの合格実績が上々だった一方で、地方の名門校の実績がふるわなかった。
これは、大都市圏に立地する難関国公立大学だけでなく、いわゆるMARCHでも顕著な傾向となった。
MARCHは大きく志願者数を減らしている。
この最大の要因は、新型感染症拡大の影響だと見てよいだろう。
首都圏の大学に限らず、通常の対面授業が行われず、リモート授業だけでほぼ終わってしまったことから、例年なら首都圏の大学を目指した受験生が、地元志向を強めた結果だと推察している。
東大合格者数トップ20高校に、公立高校としては、都立日比谷、神奈川県立横浜翠嵐、埼玉県立浦和、愛知県立岡崎が入ったが、いずれも第2回の緊急事態宣言対象地域に立地していたから、新型感染症拡大は、東京大学を目指すことを躊躇する理由にはならなかった。これが明暗を分けたと思われる。
ちなみに、愛知県立岡崎は、京都大学合格者数でもトップ20に入っている。速報ベースで確認できる範囲で、東大と京大ともにトップ20に入った公立高校は愛知県立岡崎だけだ。東京と京都・大阪の間に立地するという、地の利が効いたのだろうか。
話しは戻り、今春にMARCHの大学入試出願者数が大きく減ったことから、来年度以降、つまり2022入試から、中学入試でもMARCH附属校離れが急速に起こりそうだという予想をする向きがあるようだが、果たしてその予想は当たるだろうか。
中学入試や高校入試で、MARCH附属校人気が剥落するとしたら、それは難易度の過度な上昇が原因になるだろうと見込んでいる。
そもそも、大学入試でMARCH合格をめざすより、中学高校入試でMARCH附属合格を目指す方が難しくなれば、中学入試や高校入試でMARCH附属校を狙う意味は薄れるので、人気離れが起こる可能性は高い。
そろそろ、その水準に近づいては来ている。
一方で、大学受験におけるMARCH離れは、新型感染症拡大という特殊要因によるところが大きいと思われるので、向こう数年間の推移を確認しなければ、本当にMARCH離れが起きているのを確認することはできないであろう。
学部では、国際系学部と情報系学部の人気が続いているが、MARCHの多くは、こうした学部や学科の設置に積極的に動いているので、受験生が他へ逃げることも考えにくい。国公立大学で、こうした学部や学科の設置大学数や入学定員人数は、極端に少ないままだ。
MARCH附属校のお得度は年々薄まってきているので、どこかで人気に陰りが出始めてもおかしくはない。ただMARCH附属校側が、MARCHへの推薦入学枠を確保したまま他大学を受験できる道をより広げるなどすれば、人気はさらに過熱するかもしれない。
いずれにせよ、安易にMARCH附属校を目指すのは、向こう数年は慎重に検討した方がよいだろう。受験の世界で、流行に走るのは、最も損な選択になる。
志望校選択では、見かけのお得感などよりも、志望動機や、入学後に取り組みたいことや、教育方針や校風との相性や、合格可能性などを、より優先にした方が、満足度の高い入試結果を得られるだろう。
流行を追わない。
見栄を張らない。
ウケを狙わない。
損得を追求しない。
長期的視点に立つ。
広い視野で考える。
敵を知る。
己を知る。
適切に図る。
正しく動く。
いつの時代の、どんな試練でも、乗り越えるために必要なことは、変わりない。