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三田学院

[2021年4月7日]

【都立中】繰上合格をめぐる謎

なぜ、繰上合格者に女子が多いのか、説明しておこう。

その前に、入学者選抜方法を概説しておかねばなるまい。

1.男女別に成績順に合格者を選ぶ
2.定員割れがある場合は、男女混合で成績順に合格者を選ぶ
3.辞退者がある場合には、男女混合で成績順に合格者を選ぶ

男女別に定員を設けているので、プロセス1に異論はなかろう。

疑問が生じるとすれば、プロセス2や3ではないだろうか。

男子定員か女子定員に定員割れがある場合には、男女別に繰上合格者を選ぼうとすると、そもそも男女別に定員割れが生じているのだから、男女別の定員割れは解消しない。このため、男女混合で繰上し、定員割れを解消するしかない。これは容易に理解できるであろう。

しかし、辞退者がある場合は事情が変わってくる。定員割れではないので、男女別に繰上げても、辞退者による欠員は解消することができなくはない。よって、男女別に繰上げる方法も選択できるはずだ。しかし、できれば男女別の合格者の得点差が大きくならないように配慮したい。また、男女混合で繰上ることの方が公平だ。さらに、欠員の場合の繰上合格者の選び方と同一にしておくことで、入学者選抜の方法に混乱が生じないようにもできる。

ここで、問題が起こる。

例えば、毎年辞退者の多い小石川では、ほぼ毎年、繰上合格者における女子割合が圧倒的に多いことだ。繰上合格者が全員女子ということもある。

共学でありながら、男女比に無視できない歪みが生じる。

それでも男女混合での繰上合格を堅持するのは、定員割れによる二次募集や再試験を行いたくないことが最大の理由だろう。

これまでずっと定員割れは起こしていないが、今後どうなるかはわからない。出願を締め切ってから入学者選抜方法を変更することはできないから、あらかじめ最悪の事態も想定しておく必要がある。

また、二次募集を行うと一次合格者との選抜基準の整合性が取りにくい。さらに、他の都立中や国立大学附属中を辞退して二次募集に臨むような受検を認めるかどうかの課題も生じる。そうすれば複数の学校間で玉突きが起きて、いつまでも入学予定者を確定できない怖れが発生してしまう。だから二次募集は行いたくない。

次に、女子の繰上合格者が多い傾向にあるので、女子の方が優秀なのかという疑問が生じることが考えられる。

何をもって優秀とするかにもよるが、入学者選抜の方式に従えば、得点順に繰上合格させるのであるから、形式的には、女子が優秀と判断するのが適切だろう。

しかし、小石川の場合、学力試験型の模擬試験では、合格者の学力に男女差はあまり確認できないことから、つまり男女ともに優秀だから、繰上合格者に女子が多くなるのは、適性検査特有の現象という見方ができなくもない。

原因として考えられるのは、おもに次の2つであろう。

一つ、女子は報告書評定が「オール3」の受検生が非常に多い。
一つ、女子は「適性検査作文」で高得点を取れる受検生が多い。

ボーダー付近はさておき、上位層では男子の方が優秀なのではないかという見方もあるが、裏付がとれない。3年前から私立御三家中や最難関共学私立中などとの併願合格者が有意に増えたが、その割合に男女別で差はほぼ見られない。

このため、女子の繰上合格者が多いからといっても、男子のボーダーが低いとも言えないし、上位層では男子が優秀とも言い難い。

都立中の繰上合格者の決定方法が、形式的に女子に有利なだけと考えるのが妥当であろう。

これから言えることは、辞退者の多い難関都立中を目指す男子は、繰上合格は期待せずに、合格発表の日に合格者に入れるよう準備した方が安全だということだ。

具体的には、

一つ、報告書満点を獲得する。
一つ、適性作文を完璧にする。

わかっていてもできないのだから、早め早めに手を打つしかない。

一つ、できれば小3末までに、遅くとも小4の1学期に、「よくできる」ほぼ100%を達成し維持することだ。
一つ、適性作文の基礎基本を早めに固める。基礎基本とは、正確な漢字語句や語彙力や文法力のことだ。

男子は報告書と適性作文で明暗を分けることになりかねないが、女子は報告書と適性作文がほぼ完璧でないと全く勝負ならないので、いずれにせよ、男女ともに早期から取り組むしかない。

誤解のないように申し添えるが、算数と理科は難関私立中合格レベル、社会も特に地理は難関私立中合格レベルにないと、難関都立中どころか中堅都立中の合格も怪しくなるから、報告書が満点なくらいで、作文が得意なくらいで、都立中に合格できるなどと思わない方がよい。

小学校のカラープリント・テストくらいなら、体調不良であっても満点が取れて当たり前の人たちどうしでの闘いなのだから、小学校での勉強がデキるくらいで、都立中に合格できるなどと勘違いしない方がよい。