[2021年4月11日]
適性型入試を行う特待私立が魅力的か否かは、男子か女子で、判断が違ってくると思う。
男子校:適性検査型入試を行っている学校は少なく、難関校には全くない
女子校:適性検査型入試を行っている学校は多いが、ほとんどは中堅以下
共学校:適性検査型入試を行っている学校が多いが、ほとんどは中堅以下
ここですでに、併願戦略の前提が違ってくる。
男子:私立進学校の併願合格を獲得したいなら、学力試験型での準備が、事実上必須になる。
女子:相対的に幅広い難易度と、幅広い試験タイプから、併願校を選べる。
ただし、女子御三家や女子新御三家や共学最難関への合格を目指す場合は、学力試験型での準備が必須になる。
これに、特待があるかどうかを加味しなければならない。
男子校:特待合格を出す進学校は、攻玉社と世田谷学園くらいしかない。しかも、適性検査型入試ではなく学力試験4教科型か算数単科入試で、難易度は一般合格であっても都立中難関校並みとなる。これらの特待合格を取れるなら、準備の仕方次第では都立中に高い確率で合格できるであろう。
女子校:特待合格を出す学校は多いが、中堅校以下にほぼ限られる。しかも、生徒募集が順調な学校ほど、つまり難易度が高くなるほど、特待が取れる可能性は低くなる。
共学校:特待合格を出すのは、中堅校以下にほぼ限られ、ほとんどは中位校以下になる。中堅校では、安田学園先進や宝仙理数インターなどがあるが、特待合格となると、都立中合格レベルの難易度に近くなるので、滑り止めというより直前の力試しとしての利用が現実的になる。都立中が残念な場合の滑り止めになるのは、中位以下の私立特待となる。
これに、受検生保護者の希望を考察すると、
男子:優秀な仲間と切磋琢磨してほしいという願望が極めて強い傾向にある。大学受験でも難関国公立大学や最難関私立や医学部医学科などへの進学を望む傾向が強い。
女子:ほどよい厳しさの教育環境で成長させたいという願望が強い傾向にある。入試が過酷な難関大学より、将来に役立つような大学や学部への進学を望む傾向がある。
これらを総合すると、
男子:適性型私立に特待合格を目指すメリットはさして大きくない。
女子:適性型私立に特待合格を目指すメリットはそれなりにある。
最適な戦略は、
男子:適性型私立中堅校以下の特待では教育方針や内容に十分に満足できない可能性が高いので、学力試験型難関私立の併願一般合格を目指して準備するか、都立中が残念なら高校受験で難関校を目指す覚悟で適性型私立は練習受検にとどめて都立中実質単願で臨むか、どちらかになる。
ただし、男子の場合は、女子では使えない魅力的な選択肢を、いくつか戦略に加わえることができる。この日記の読者なら、気がついているとは思う。大手が宣伝しないから広くは知られていない。今回の論旨がややこしくならないように、詳説は割愛しておく。
女子:幅広い戦略が組める。学力試験型難関私立の併願合格を目指しても良いし、都立中が残念なら高校受験で進学校を目指してもいいし、適性型私立の中堅特待に併願合格を目指してももよい。幅広い難易度の女子校が適性型入試を行っていて、特待入試を行っている学校も多いから、都立中に残念になって適性型私立中に進んだとしても、男子に比べれば満足度が高くなる可能性がある。
このため、特に女子は、適性型私立の学校調査をしっかりとしておく価値がある。教育方針や、教育内容や、行事の特徴や、生活指導の傾向や、女子向け教育の充実度や、系列大学の有無と進学制度や、有名私立大学への指定校推薦の充実度や、立地や、交通利便性や、女子には特に大切な校風や雰囲気や制服などである。
戦略的に特待生を手厚く指導する私立学校も少なくなく、その場合、塾や予備校の費用を節約しながら大学へ進学できる可能性がある。
まとめる。
女子の一般的な進路を考慮すれば、6年間の総費用は、6年間特待を維持できたのなら、総額で最も安く済む可能性がある。
女子は、能力や希望に合った適性私立特待に進学できたとしたら、中堅や中位であっても、満足度が高くなる可能性がある。
しかし、
男子は、都立中を目指して残念になると、併願合格した難関私立中に進学する以外に満足度が高い選択肢がほぼない。しかし、難関私立中も都立中も合格するのは難しいから、どちらも合格を狙うと共倒れのリスクが高くなる。難関私立中も都立中も残念だと、高校受験で都立進学校などにリベンジ合格できる可能性も実はあまり高くない。
その意味では、男子であっても、適性私立中位校に特待で進む価値がない訳ではないが、納得できないと感じる親子が多いようだ。高校受験で、さらに入学難易度の平易な私立高校に進むことになって、初めてその価値を見出すことになるのかもしれない。
補足をしておく。
ご存知のこととは思うが、私立中受験指導大手に通って都立中併願合格を狙うのは不確実性がかなり高いし、都立中専門大手に通って難関私立中に併願合格することは現実的にかなり難しい。
大手塾は己の採算重視だから、都立中受検生親子の希望に沿って指導してはくれない。大手塾では、大手塾それぞれの戦略に従うしかない。難関私立の合格実績に貢献するか、都立中の合格実績に貢献するか、どちらかしかない。両方をとなれば、系列の個別指導コースを紹介され、さらに高額な授業料を提示されるだけだろう。
そもそも、私立中受験指導大手に通って夢が叶う受験生は20%程度で、都立中専門大手に通って夢が叶う受検生も20%程度だ。大手に通うということは、そういうことなのだ。