[2021年4月14日]
都立中を目指して中学受験に挑み、都立中に残念になって、低偏差値の私立中だけに一般合格した場合に、その低偏差値私立中に入学させるのは、どうなのだろうか?
まず、どの程度の低偏差値なのかにも、よるだろう。
難関国公立大学(旧帝大の一般学部レベル以上)や、最難関私立大学(早稲田と慶應)への合格者が、少ないか、いない場合は、明らかに都立中とは雰囲気や実力の違う学校なので、その点を考慮して進学するかどうかを検討すべきだろう。その際に、中学からの入学者の進学実績なのか、高校からの入学者からの進学実績なのかによっても判断が変わってくるだろうから、しっかり確認すべきであろう。
そもそも、そうした低偏差値の私立中にしか合格できなかったということは、都立中に合格できる可能性がなかったのだということも、客観的に理解して、冷静に判断しなければならない。
まっとうな指導者なら、都立中に合格できる可能性がなければ、受検前にその旨を伝えるはずだから、そうした案内がないまま、低偏差値私立中学にしか合格できなかった都立中残念受検生に、指導が至らず申し訳なかったと声かけするのは、確信犯的な怪しい指導者だと思った方がよいだろう。
そうした指導者の事実上の誘導で受験した低偏差値私立中が、はたして受検生の希望にふさわしい学校なのかどうか、非常に怪しいということも、冷静に考慮した方がよかろう。
その前に、悪徳大手学習塾やそこの悪徳指導者に洗脳されることがないように、注意した方が良い。
都立中に残念になった我が子を、不憫に思う気持ちは、痛いほど理解できる。
しかし、どこかで負のスパイラルを断ち切ってあげないと、我が子の人生を狂わせてしまうリスクがあることも、理解しなければならないだろう。
話しは戻るが、都立中に残念になった場合に、高校受験でリベンジを目指すことなく、併願合格した低偏差値私立中に、しかも特待ではなく一般で、進学するのはどうなのだろうかについてだが、都立中残念組には、原則として、お勧めできない。
なぜかと言うと、そもそも都立中を目指したということは、低偏差値私立中を目指していたのではないはずだから、その選択は目標と整合的ではないからだ。
都立中を目指して、難関や中堅以上の私立中に進学するなら、よいだろう。進学校への入学を目指していたのだから、目標と整合的である。その後の進路についても、大きな違いは起こらないであろう。
ところが、都立中を目指しておきながら、低偏差値私立中に進学するというのは、進路希望から大きく外れた選択をすることになる。将来の進路も、当初夢みていたものから大きく修正を余儀なくされるリスクが高い。
特に、男子の場合は、慎重な判断が求められよう。
なぜなら、男子には、小6時点ではまったくもって完成されていない子が多い。中学や高校で大きく伸びる可能性を秘めている子が多いのだ。
中学受験で、希望に近い成果が上がったのならいいのだが、そうでない場合は、安易に低レベルに進路を確定させるのが得策かどうかは、慎重に見極めた方がよいだろう。実力が不明な場合は、高校受験でもう一度実力を試してみた方が安全だろう。もちろん、結果がおなじになることもある。結果がもっと悪くなることもある。
一方で、女子の場合は「適性私立の特待は魅力的か」の回で述べたように、低偏差値私立であっても、合理的な進路選択になる場合がある。女子は、小6時点で、相対的な実力の位置が、ほぼ決まる。
付言すれば、女子は、高校受験で選択できる私立進学校がほとんどない。しかも、中学受験では低偏差値であった学校が、高校受験では高偏差値に化けてしまうことが大勢を占める。よって、女子の場合は、中学受験では低偏差値私立でも、高校受験では入学難易度が上がって合格できなくなってしまうリスクが、男子よりも格段に高い。このため、低偏差値私立中であっても入学する価値はある。
どれだけ低偏差値であっても入学する価値があるのかどうかは、受検生それぞれの実力や伸びしろによって判断が変わってくる。
中学受験の偏差値表と、高校受験の偏差値表と、私立高校推薦優遇入試ガイドブックを、よく比較検討してから、判断されることをお勧めする。高校受験のことを十分に理解しないままで、進路を判断してしまう保護者が実に多い。
全ての選択肢を十分に検討した上で、受験した時点で、合格した場合には入学してもかまわないと判断していたのなら、何も言うことはない。
しかし、練習校としか考えていなかった学校に進学させるのはどうだろうか。冷静に判断されることをお勧めする。
私立であればどの学校でも、地元公立中より教育環境が優れているとは限らない。どんな私立中であっても、地元公立中へ進学させるよりはよいという訳でもない。
くれぐれも、本番での戦績が不本意に悪く、あわてて駆け込み受験をした学校に、思考停止状態のままで入学させたりはしないことをお勧めする。
その前に、難関や中堅以上の私立中には合格できそうにないから、都立中などの公立中高一貫校に挑むというのは、少なくとも都立中の中堅校以上では、まったく通用しない。相対的にやや平易な都立中でもほぼ通用しない。地方の平易な公立中高一貫校の合格体験記や、創設期の混乱の最中の都立中の合格体験記などを参考にしているようでは、都立中への合格はない。
トンチンカンな都立中不合格体験記をネット上によく見かけるが、悪徳大手塾は、こうした実態をしっかりと案内していないのだろうか。それとも、頓珍漢な都立中不合格体験記を書く保護者が、そうした案内があっても理解できていないのだろうか。