[2021年5月7日]
公立中高一貫校の適性検査では、一般的に「適性作文」あるいは「適性検査作文」と呼ばれる小論文が課せられるケースが多い。
この適性作文で高得点を目指すなら、客観的で論理的な意見や理由と、意見と理由を補完する体験・経験や具体例と、そして意見と整合的な提案で構成する必要がある。
ここで、客観的で論理的な意見や理由を示せないのは論外だが、「適切な体験や経験」や「適切な具体例」を使って、意見や理由を補強できないと、高い評価は得られない。
「経験や体験」とは、不良少年少女が得意とするような、非行やスリルや冒険や逃避や娯楽のことではない。
では、「経験や体験」とは何か?
適性検査は、学力検査が課せられない代わりに、入学者を選抜する目的で実施される。
直接的に学力をみることができないので、代わりに「学ぶ力」と、その適切性が試される。
「学ぶ力」をみる観点から、経験や体験とは何かを考えてもらえば、適性検査で求められる経験や体験とは何かを理解できるであろう。
経験や体験を「一般化」できる力があるかどうかが、みられることになる。
「一般化」とは、数学の世界では「共通点」を見つけることだ。
「一般化」とは、国語の世界では「抽象化」するということだ。
具体 → 一般
一般 → 具体
あるいは、
具体 → 抽象
抽象 → 具体
この「思考操作」を、適切に行うことができる力を有しているかどうかが、問われることになる。
幼いうちは、経験や体験を積ませるのがよいと、よく言われる。
ただ旅行やキャンプに連れて行ったり、習い事をさせたり、スポーツをさせたりすればよいのではない。いくら経験や体験を積んでも、それだけでは合格力を上げることはできない。
体験や経験から学んだことを「一般化(抽象化)」できる力があるかどうか、教科で学んだ内容を体験や経験の中で「具体化」して認識できる力があるかどうかが、みられているのである。
ただ文章が書ける、ただ原稿用紙が埋められる、それだけでは合格できないことは、広く知られるようになった。
しかし、経験や体験を「一般化」(抽象化)して、あるいは、「一般的」(抽象的)な事象の適切な具体例を見つけ出して、意見や主張や提案を補強できるかどうかが、合否の鍵を握っているということまでは、まだ広く理解されてはいなようだ。
これは、難関都立高校の推薦入試や国公立大学や難関私立大学の推薦入試などでも必要な力である。
適性作文や入試小論文は、読解力や表現力があるだけでは、勝てないのである。
一般的な作文が得意なくらいでは勝負ならないことは少なくとも理解しておくべきだし、「適性検査作文」について不適切な指導や不十分な指導を受けていては、いつまでたっても「合格作文」を書けるようにはならないことを、知っておくべきだろう。