[2021年5月18日]
中学入試では、算数単科入試や英語単科入試など、単科入試が盛んである。また、算数と国語の2科入試や
国語と英語の2科入試も盛んである。
大学入試では、特に私立大学文系学部を中心に、少数科目入試が盛んである。
ここで注意が必要である。
単科入試や少数科目入試の偏差値は、4教科入試や5教科などと比べて、非常に高く算出される特徴があるという点だ。
私立大学文系入試と国立大学文系入試を比較してみるとわかりやすい。
一般的に、文系学部を目指す受験生は、英語や社会や国語などの文系科目は得意だが、数学や理科などの理系科目は得意でないことが多い。
国立大学文系学部を目指す受験生の、得意科目だけを抽出して計測した偏差値と、5教科全科目で計測した偏差値では、ほとんどのケースで得意科目だけを抽出した方が高くなるはずだ。
英語と国語と社会の3教科と、英語と数学と国語と理科と社会では、平均すると、元々のレベルが難関なのか中堅なのかなどにもよるが、少なくとも5ポイント以上変ってくるだろう。
私立大学文系学部によっては、英語と社会だけとか、英語だけとかもあるので、偏差値が10ポイント以上高く算出されることもありそうだ。
そもそも、私立大学文系学部の偏差値と、国公立大学文系学部の偏差値を比較しても、上記の理由から、そのまま比較しても意味はない。私立大学の偏差値の方が過剰にインフレを起こしているからである。
中学受験では、これが、私立中学どうしでも科目数の違いで起こる。同じ私立中学内でも受験回による科目数の違いで起こる。
算数などの単科入試の偏差値が、実態よりも非常に高く算出され、続いて算数国語入試などの少数科目入試が高く算出され、最後に4教科入試の偏差値となる。
単科入試の偏差値が高いから、単科入試で入学した生徒の学力が高いとは限らない。むしろ逆もありうる。
それでも単科入試や少数科目入試を行う理由が学校側にある。
一つ、模擬試験などで入試難易度偏差値が他か買う表示されることになるので、魅力的な学校であるかのごとく認知されやすい。
一つ、試験時間が短いことなどから受験生の負担が小さいため、受験者を多く集めやすい。
一つ、試験問題を準備する負担が小さくなるため、学校側にとってありがたい。
一つ、特に高校課程においては、数学の学力と大学進学実績に有意に相関関係があり、難関大学合格実績を向上させる即効薬となる。
つまり、複合効果により、学校側の試験準備負担が小さく、受験生を多く集めやすく、偏差値が高く表示されるのでありがたい。しかも、算数単科入試は、大学進学実績の向上に貢献する。
このため、偏差値を比較する場合は、単科入試と小科目入試と全科目入試を、そのままの偏差値で比較することはできない。
また、私立大学と国公立大学の偏差値も、そのままでは比較できない。
誤解しないでいただきたいのは、単科入試や私立大学が、偏差値が高く見積もられる割に、合格はしやすいとは単純に言い切れないことである。
説明が複雑になるので今回は止めておくが、早稲田大学法学部の偏差値が、東大法学部(文1)と同じか高く表示されたとして、早稲田法が東大法よりも合格するのが難しいと勘違いしてしまう人は、まずいないだろうから、あえて説明するまでもないだろう。
大企業の人事部採用担当者も、その辺は正しく理解しているので、心配する必要はない。
ただ、地方の国立大学を卒業するよりも、東京都内の難関私立大学を卒業した方が、世間一般的には賢そうに聞こえるかもしれない。