[2021年5月22日]
適性検査入試の罠に、最後の最後まで気がつかないままで、受検を終える親子がいる。
適性検査入試問題の一つ一つを取り出すと、さほど難しくないと感じられる問題が多い。このため、解答に時間さえかけられれば正解にたどりつけることが多い。
ここに適性検査入試の最大の罠がある。
例えば都立中の適性検査1。小石川や武蔵が採用している共通問題の場合、やや長めの課題文が2つ用意される。これに要約などの読解記述式問題が数問程度と400字程度の小論文型作文が出題される。
ほとんどの受検生は、課題文を読み、読解系の記述問題を解答し終えた時点で、制限時間45分の内、25分から30分が経過してしまう。つまり、400字程度の作文の作成には、15分から20分しか残らないことになる。
400字の原稿用紙をただ埋めるだけでも、標準的な受検生だと少なくとも10分から15分程度はかかる。となると、読解に時間がかかってしまった受検生に残された作文考慮時間は、ほとんどない。それでは、合格にからめるような適性作文を満足に書けない。
おなじようなことは適性検査2や適性検査3でも起こる。九段の場合、適性検査2や3は、問題ページだけで、それぞれ15〜20ページにおよぶ。問題文を読み、解答を記述しつつ進むと、1ページ2分程度の速度で進められないと、最後の問題までたどりつけない。どこかで考慮する時間がかかってしまったら、最後の問題までたどりつけないばかりか、見直しの時間も取れない。分からなかった問題をとばしていけば、いったん最後の問題まで行けるかもしれないが、飛ばした問題を解き直す時間が残っていないといった事態が起こる。どちらの場合も、合格にからめる得点を得ることが難しくなる。
わかりやすく、総括しておこう。
適性検査問題を正しく解くのに、時間のかかりすぎる受検生は、合格できない。
時間をかけても正しく解けない受検生に、そもそも合格などない。
都立中は、おなじような難易度の難関私立中学に比べて、一つ一つの問題はさして難しくない。
だからといって、学力が高くない受検生でも、合格できる可能性があると考えるのは、甘い。
さして難しくない問題を時間内で大量に正確に解き切る能力というのは、さして大量ではないが難しい問題を時間内で正確に解き切る能力に引けをとらない。ともに非常に高い能力が要求される。
都立中の適性検査は、一見すると、さして難しくはない問題が、さして多くない数で出題される。ここに第2の罠がある。
確かに問題数は少なく、解答欄の数も少ない。しかし、解答欄を埋める前の段階で、すでに複数のステップがあって、それを正確にクリアしていなければ、解答欄を正しく埋める段階にまでたどりつけない。
つまり、解答はしないのだが、正確に処理できていなければならいステップが途中に数多く存在するという特徴がある。顕在化していないだけで、大量の問題を処理することとおなじようなことが、要求されているのだ。
合格にからめるような受検生親子の多くは、すでに薄々気がついているはずだ。
しかし、気がついていない受検生親子が、毎年のように都立中入試に数多く参戦する。
そして、そうした親子は、なぜ残念な結果になったのかを正確に理解できないまま、都立中入試を終える。
適性検査入試の罠に落ちてしまう受検生親子には、残念なことだが、合格はないのだ。