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三田学院

[2021年5月24日]

【都立中】AI時代の教育

人工知能(artificial intelligence、以下「AI」)の時代になった。AI時代における教育とはどうあるべきか概観してみたい。

そもそも、AIを正しく理解できている人が、どれくらいいるのであろうか。

AIとは、機械学習などによって得られたデータをもともに、判別分析や回帰分析やニュラールネットなどの数理統計学の技法を援用して、計算機(コンピュータ)によって高度に知的な演算処理をして、判断を実行するプロセスである。

これまで人間が脳を使って行っていた、言語理解、論理的思考、科学的推計、課題解決などを、計算機(コンピュータ)に行わせることである。

AIが高度な判断を行う上で欠かせないのが「データ」である。AI自らがデータ収集を行う場合と、あらかじめデータセットをインプットする場合に大別されるであろうが、いずれにしてもデータが必要である。

ここで言う「データ」は、教育や学習における「知識」とも言い換えられる。

こうしたデータあるいは知識がなければ、数理統計学的な演算処理を行うことはできない。

「顔認識」などの場合は、「判別分析」や「回帰分析」などの数理統計学の伝統的な技法が使えるだろう。

「行動予測」などには、「ニューラルネット」などの数理統計学の伝統的な技法が使えるだろう。

「災害予測」などには、降雨量の予想や、河川の氾濫予想や、巨大地震発生時の経済的損失予測などが考えられるが、「応用確率論」のさまざまな伝統的な技法が使えるだろう。

ここまで、少し専門的な説明で分かりにくかったかもしれないが、都立中などの公立中高一貫校の適性検査の出題方針によく使われる用語を用いて説明すると、分かりやすいかもしれない。

「適性検査」では、「知識や技能」(機械学習などにより得られたデータ)をもとに、「思考力や判断力」(判別分析や回帰分析やニュラールネットなどの数理統計学)を使って、自らの考えを導き出し、高度に知的な集約を行って表現する力(「表現力」、演算処理能力)が求められる。

身につけるべき「知識や技能」と「思考力や判断力や表現力」は、伝統的な学習法と何ら変わらない。

適性検査だから、語彙力や言葉の知識は必要ないとか、算数が解けなくてよいとか、理科の法則を理解できなくてよとか、社会の背景を知らなくてよいとか、そんなことはない。

むしろ、デーィプ・ラーニング(深層学習)がAIと親和的であるように、こうした伝統的な「知識・技能」を、より深く知り、より深く理解していることが求められるのである。

電卓(小型の簡易計算機)の仕組みが適性検査で問われたり、自転車が走る仕組みが適性検査で問われたり、自然災害や環境問題の解決が適性検査で問われるのは、そのためである。

コンピュータの演算処理能力が飛躍的に向上し、小型化が進んで、日常生活で実装されるような時代になったら、これまで人間が行っていたような思考や判断や表現を放棄してもよいのではない。

むしろ、機械(コンピュータやAI)の上を行くことができる人にならなければならない。

次世代のリーダーとは、そうした人のことを言うのである。