[2021年6月14日]
新型感染症の拡大と時期をおなじくして、私立中受験指導御三家塾で、一部の塾に一極集中が起きているようだ。
それぞれの大手塾における正確な生徒数は不明だが、ある大手塾の各教室が、軒並み募集定員に達して空席待ち状態になっているのに対し、他の大手塾は生徒募集に苦戦しているらしい。
寄らば大樹の陰
先のスタッフ日記でもふれたが、
新型感染症拡大長期化への不安
都内中学受験の激戦化への不安
難関私立大学の激戦化への不安
人気企業就職戦線激化への不安
中長期的景気不透明感への不安
など
不安が強まるほど、寄らば大樹の陰、という心理が強まるようだ。
深層心理として、自分が、自分の子が、不利になる状況を避けたいという思いが強まるようだ。
しかし、それは正しい判断なのだろうか。
大手塾の主力講師の人数は、生徒数が増えても、比例して増える訳ではない。
大手塾は、生徒数が増加したことで不足する講師を、臨時雇用で充足させる。
全体の生徒数が増えたとしても、必ずしも成績上位層が増える訳ではない。
中学受験生数のボリューム・ゾーンは、成績中間層から下の受験生たちだ。
激戦化でも、難関の私立中や公立中高一貫校の定員は、大幅に増加しない。
つまり、難関私立や公立中高一貫校に合格できる人数が、増える訳ではない。
一極集中が進んでも、全大手塾合計の合格者数が増える訳ではない。
一極集中が進んでも、中小塾を含めた全体の合格者数が増える訳ではない。
結果として、何が起こるかというと、合格実績の偏り、合格実績の歪み、だけである。
幸せな中学受験結果になる人数が増える訳ではない。
一極集中がもたらすものは、歪んだ激戦化でしかない。
しかも、実質的にキャパシティー・オーバーになってしまった大手塾の塾生の中に、不幸な結果になる受験生の絶対数が増える可能性が高い。
生徒募集が不調な大手塾や中小塾では、主力講師には意図せず指導に余裕が生まれ、好条件で受験指導に当たれることになる。
行列のできる店には、さらに行列ができる。
群集心理の典型的な現象だ。
必ずしも、おいしいからではなく、お得なからでもなく、珍しいからでもない。
みんなが行くから、行くだけだ。
行列ができているから、さらに行列ができるだけだ。
赤信号、みんなで渡れば、怖くない。
しかし、赤信号で渡るのは危険であることに、何も違いはない。
危険な意思決定に陥っていないか、冷静に自己分析すべきであろう。