[2021年6月22日]
特殊算という魔物
私立中入試で定番の「特殊算」(文章題)は、適性検査算数ではそのままの形式で出題されることはない。しかし、特殊算の考え方が分からないようだと苦戦する適性検査算数問題は実によく出題される。
どの都立中かを書くのはやめておくが、特殊算的算数力を問う算数分野の出題が大好きな都立中もある。
ちなみに、小石川のことではない。
この特殊算、かなりの魔物である。
どういう意味で魔物かというと、小学校の検定教科書の算数なら苦もなく解けるから算数は得意だと思っているような受検生でも、この特殊算になるととたんに解けなくなることがよく起こるからだ。
もちろん、苦もなく解ける受検生もいる。
ところが、算数が得意だと思っていながらも、基礎基本レベルの特殊算が解けない受検生というのは、適性検査算数への対応力にも難があることが多い。
つまり、ど真ん中の直球なら打ち返せるのに、チョッとでも変化するような球だと、とたんにバットが空を切り、全く対応できなくなってしまうようなケースだ。
極めて限られた条件下でしか、算数力を発揮できないのだ。
本当に算数が得意なのか、実は怪しいとも言える。
原因は、抽象的な「思考力」や、条件整理的「思考力」が、絶対的に不足していることにあることがほとんどだ。
こういう受検生は、適性検査算数への対応力も高くないことが多い。
魔物と呼んだが、実は、少しも魔物ではない。
特殊算は「変わり種」算数でしかない。
私立中学で特殊算が頻出なのには理由がある。
中学以降で学習するような数学を出題すると、中学内容を先取りした受験生が有利になる。
しかし、私立中学が求める受験生は、そうした先取学習をした受験生ではない。
むしろ、高度な数学でも十分に理解できる素地がある受験生を選抜して入学させたい。
特殊算は、その選別にもってこいなのだ。
高度な数学とは、抽象的な「思考力」を必要とするような数学のことだ。
言い換えれば、算数を解かせて、数学的能力を試しているのだ。
特に、代数分野や確率統計分野の素地をみるのに、ちょうどいいのだ。
裏を返せば、特殊算の考え方を学びながらも、実際の特殊算の基本問題に歯が立たない受検生というのは、中学入学後の高度な数学を理解する素地が怪しいことになる。
適性検査算数では、私立中学とは違った手口で、高度な数学的素地があるかどうかを試してくる。
適性検査算数を突破できるかどうかを事前に確認するには、基礎的な特殊算に対応できるかどうかをみるのが手っ取り早い。
別の視点からは、中学高校での高度な数学に対応できるかは、特殊算が解けるかどうかで、だいたい分かる。
都立中学に合格できるかどうかまで、都立中学入学後に数学の授業についていけるかどうかまで、見えてしまうという意味で、特殊算は魔物なのである。
共通問題の適性検査算数なら、小学校算数だけで解けなくはないかもしれない。しかし、小学校算数の力だけで立ち向かったら、ほとんどの受検生は、解答時間が足らなくなる。
特殊算的算数力も高い受検生なら、短い時間で、回り道をせず、スッキリ明快に、適性検査算数が解ける。
都立中に合格したければ、特殊算を勉強すべし、などと言いたいのではない。
適性検査を甘く見るなと言い続けている意味を、正確に理解してほしいだけだ。