[2021年6月29日]
ケチ・シリーズの第三弾である。
今回の大胆な仮説は、
「ケチだと、適性作文力(適性小論文力)が伸びない」
である。
適性検査で頻出テーマの環境問題で検討してみよう。
Q:温室効果ガスを減らすには、どうしたら良いか?
小学校における社会科の学習指導要領が時代遅れなのか、小学校教員の環境問題に関する最新の知見が貧弱なのか、地域や家庭における環境問題への意識が硬直的なのか、いろいろな原因が考えられるが、ここでも、ケチがネックになっている可能性がある。
作文演習でしばしば見かけるのは、「温室効果ガスを削減するには、資源のムダ使いを減らす努力をするのがよい」といったような意見だ。
まちがってはいない。
しかし、世の中のほとんどの場面では、ずいぶん前から、資源のムダ使いなどしていない。今以上にムダ使いを減らすのは、かなり難しくなってきている。
ムダ使いをしないことを継続しながらも、もう一歩踏み込んだ取り組みを提案できなければ、環境問題は解決しない。
資源のムダ使いを止めるという程度の考えなら、多くの小学生が思いつく。誰もが思いつく意見は「陳腐」な意見とも言える。「陳腐な意見」は都立中入試で高く評価されない。よく考え抜かれた独自性のある意見でなければ、高得点は望めない。
もっと直接的で、もっと抜本的で、もっと実効性が高く、もっと解決力が高く、今はできていないが近い将来に実現可能で、しかし誰もが納得できて、明るい未来につながると確信できる、そうした意見や提案が望まれる。
すでに排出された温室効果ガスを削減できる技術の開発や、新たに温室効果ガスを発生させない技術の開発などは、膨大な研究費や開発費や普及費がかかる可能性がある。
しかし、そこをケチっていたら、それこそ地球は破滅し、人類は絶滅するかもしれない。破滅や絶滅までは行かなくても、不便で苦しく不健康な生活を余儀なくされ、みな不幸になるだろう。
ケチは止めるべきだ、などとは言わない。
ケチの呪縛から解き放たれ、より自由に、より建設的に、より発展的に、より未来志向的に、発想できるようでなければ、次の時代を切り開いていけるリーダーにはなれない。
次世代のリーダーを育成したいというのが、都立中を設置した目的の、重要な一つである。
「ケチだと、適性作文力(適性小論文力)が伸びない」
どうだろうか?
あなたは、わが子を、発想がケチな子に、育てていないだろうか?
誰もが書けるような適性作文しか書けなければ、高得点者から順に定員までが合格者となる都立中入試で、勝てない。
しっかり考え抜ける力を育成しなければならない。
実力が高くなければ、運は味方などしてくれない。
その虚しさを実感してから考えを改めても、遅い。