[2021年7月1日]
中学入試や高校入試で、男女別に定員を設けることによって、合格ラインが男女で違うことが起ることを問題視し、男女差別ではないかなどの議論が起っている。
この議論で抜け落ちているのは、成長段階や発達段階にある小学生や中学生を対象に、これから教育指導を行う入学者を選抜するのだという視点だ。
国家資格など成人が職業資格などを得るために受験する試験とは、意義が全く違う。
小学生など、成長段階にある年齢においては、一般的に女子の成長が早い。いろいろな尺度があろうが、概ね1〜2年程度、男子の方が、全般的に成長が遅い。
この男女別の成長差は、学齢が上がるほど縮小して行く傾向があることも知られている。
このような男女で成長に違いがある中で、男女混合で入学者を決めるのが適切かどうか、十分な議論が必要であろう。
架空の例で検証してみる。
Aさんは、入学試験で300満点中170点を獲得した。しかし、女子の合格ラインは180点であったため、不合格となった。
Bくんは、入学試験で300満点中160点を獲得した。ところが、男子の合格ラインは150点であっため、合格となった。
一見すると、女子に不利で、男子に有利な、入学者選抜が行われているかのように感じられるかもしれない。
ところが、AさんとBくんは、国内の全小学生が受験する試験を受けて、Aさんの女子内順位は全国200番、Bくんの男子内順位は全国100番だったとしよう。実際にありうる事例だ。
Aさんに不利でBくんに有利な入学者選抜であったかどうか、かなり怪しくなる。むしろ、Bくんが合格して、Aさんが不合格となったのは、適切な選抜結果であった可能性が出てくる。
次に、SF的なストーリーで検証してみよう。
ある天才的な科学者が、スイッチを一押しすることで、何度も男女の性別を変更できる、魔法の装置を開発した。
小学6年生になったばかりのAさんは、男子になったら、どんな世界が見えるか興味を強く抱き、魔法の装置で、男子になってみることにした。
走ることが速くなって、サッカーや野球が上手にできて、当初は大喜びした。
ところが、塾の授業にいつも通りに出席していて、強い違和感を覚えた。これまで得意だった国語の読解問題が全然わからない。算数や理科や社会の「説明しなさい」という問題の記述で、理解できるのだけど、文章にしようとすると鉛筆が進まない。途中で時間切れになったり、解答欄が白紙になってしまう。
適性検査型の模擬試験を受けて見たら、いつもなら170点取れるのに、なぜか140点しか取れない。何度受けても状況は変わらない。特に作文や記述の点数がおどろくほど低い。算数や理科でカバーしても補いきれない。
もとの自分に戻りたくなって、また魔法の箱のお世話になった。
適性検査型の模擬試験の成績は170点に戻った。
Aさんは安堵した。
そして、つらい中学受験を乗り切るまで、もう絶対に男子になんかならないと決意した。あんな苦しい思いをするのは絶対に嫌だと思ったからだ。
SF的なショート・ショートは、ここでおしまいにする。
中学受験の結果は先の通りのままで変わらない。
男女別に合格点が違うことは、男女差別だろうか。
男女別に合格点が違うことは、憲法違反だろうか。
男女別定員があるのは、男女差別だろうか。
男女別定員があるのは、憲法違反だろうか。
大いに議論するのが、よいだろう。