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三田学院

[2021年10月9日]

【都立中】併願私立で特待を狙うなら

都立中など公立中高一貫校を目指す方は、ご家庭の方針から、私立中高一貫校のような高額な授業料は払いたくないという方が多い。

こうした背景から、入学金や授業料の全部または一部が免除されるなら、公立中高一貫校に残念になった場合でも、地元公立中学とともに私立中高一貫校も入学の選択肢になると考えている親子も少なくないようだ。

しかし、私立の特待合格は、多くが思うほど、甘くはない。

安田学園先進特待入試で、1年特待以上に合格できる受検生は、ほぼ都立中に合格する。
宝仙学園理数インターで、1年以上の特待がもらえる受検生は、ほぼ都立中に合格する。

よって、私立中側は、安心して特待合格を乱発できる。特待合格者のほんとが入学しないからだ。入学してくれるのは、一般合格して都立中に残念になった受検生ばかりだからだ。

都立中に合格確実な受検生なら、まさかに備えてこうした私立中の特待を狙う意味はある。しかし、都立中の合格に不安がある受検生が特待を狙っても、ほとんど特待は取れないと覚悟しておいた方がよい。

安田や宝仙理数インターの大学合格実績が良好なのは、高校からの入学者が多いからだ。両校とも、高校入試での合格難易度は高い。実績を稼いでいる中心層は、高校受験でも失敗して滑り止めで入学してきた生徒だ。多くは都立高校の進学校を受験して不合格になった生徒だ。

都立中に残念になった場合に、授業料免除の特待合格をした私立中高一貫校に進むことも視野に入れたいなら、特待合格を狙う私立中は、思い切って実力よりもはるかに難易度の低い学校を選ぶ必要がある。

当然に、入学後に学内順位でトップ近辺を確実に取れるような学校ということになる。つまり、周りはほとんど自分より学力が低いことを覚悟する必要があるということだ。

それはそれでメリットがある。高い自己肯定感を維持しながら6年間を過ごせ、高い自己肯定感を維持しながら大学受験に臨める。学校側からすれば、大学合格実績をあげてくれる貴重な生徒だから、手厚く指導してくれる可能性が高い。都立中や私立進学校に入学して平凡な成績のままだと、ほぼ目をかけてはもらえない。

どれくらいレベルを落とせば特待合格が確実に取れるかというと、その学校の難易度と人気度の2つの軸で判断する必要がある。難易度が低くても人気があって生徒募集に苦労していない私立中は、特待の基準が厳しくなる傾向がある。一方で、そこそこの難易度がありながらも人気がやや低迷している私立中は、成績が良好な受検生に確実に入学してもらいたいから、思い切って良い条件を提示してくれることがある。

具体的な学校名までつらつら書くと、いろいろと弊害があるだろうから、偏差値的な目安をご紹介しておく。

都立中の偏差値を65とすると、持ち平均偏差値が55を切ると、都立中の合格可能性はほぼなくなる。偏差値55ちょっとしかなくても、ほぼ確実に特待合格を取れるのは、一般合格なら偏差値40程度よりも難易度が易しい私立中学だ。

一般合格の偏差値が、持ち平均偏差よりも、20ポイントほど下の私立中なら、条件の良い特待が取れる可能性が高まる。

K中学などは、偏差値45あれば一般合格できるだろうが、フル特待合格になると偏差値65程度以上が必要になる。つまり都立中なみの合格難易度となる。もっと平易な私立中でないと、確実に特待を取るのは難しい。3年特待などさらに好条件を狙うならなおさらだ。

難易度をできるだけ下げずに特待を狙うのなら、1年特待の年次更新を狙うのよいだろう。15ポイント程度下げれば、1年特待をもらえる可能性がある。

近所に立地してないければ、名前も聞いたことがないような私立中である場合が多くなるだろう。しかし、中学受験案内などの冊子には載っているだろうから、保護者だけでかまわないので、受検生が低学年のうちから、見学したり説明会に参加したり個別相談を受けたりして、やや広めの偏差値帯で、ある程度校数を絞り込んでおくとよいだろう。小5や小6になると忙しくなって、そうした学校を幅広く検討する時間がなくなるからだ。

こうした学校には、男子校が少なく、女子校や共学校が多い傾向がある。特に女子校は校数も内容も充実しているので、全部は回り切れなくなる。早めに動いた方がよい。もちろん、小6などになってからピンポイントで検討してもよい。

適性検査型入試を行っている私立中学は、首都圏では100校を超えている。多くは算数と国語の2科入試も行っている。実は適性検査型よりも、2科型や4科型の方が特待が取りやすい傾向にある。中学受験案内とホームページを閲覧して、スクリーニングをしてから廻らないと、廻りきれなくなるだろう。

それぞれの家庭によって、学校選びに重視する基準はさまざまだろうから、大まかな基準を思いつくだけ書き出して、それらに多く該当する私立中から優先して廻るという手もある。

ここで重要なのは、偏差値や大学合格実績だけを優先せず、6年間の学校生活で、実は何を優先したいかを基準にすることだ。

校風
教育方針
強みと弱み
教育特徴や充実度
雰囲気
通学生の特徴
学習指導の手厚さ
進学指導の親身さ
立地環境
通学利便性
評判
などなど

中学入試なら合格が取れても、高校入試では合格できない私立校は多い。
中学入試では特待が取れても、高校入試では特待が取れないことも多い。

偏差値が高い学校が良い学校とは限らない。
偏差値の高い学校がふさわしいとは限らない。
偏差値の高い学校への合格が成功とは限らない。

公立中高一貫校に合格できても成功するとは限らない。

親子の望みをともに実現できる学校に入学することこそが成功である。