[2021年10月11日]
近年の中学受験熱の過熱化の背景を、複眼的に考察しておくべきだろう。
教育評論家の多くは、受験界に限定した狭い視点による分析しかできていない可能性がある。
新型感染症拡大下、公立義務教育学校のリモート授業や分散授業などへの、強い不安
大学入試改革に並行して進む、難関大学の入学難易度上昇への、強い不安
などだ。
ここには、もっと幅広い社会情勢を加味して分析すべきではないか、と思料している。
経済評論家は、いろいろと経済評論をするが、それが受験にどのように影響しているかまでは、分析がおよばない。
教育評論家は、いろいろと受験評論するが、狭義の受験事情と別の要因で動いているかまでは、分析がおよばない。
中学受験が、大きく低迷した時期が、過去に何度かある。
リーマン・ショック
東日本大震災
いずれも、大幅な株価下落や住宅価格下落など、経済の大きな低迷を伴った。中学受験が過熱するのは、こうしたネガティブ要因が後退した時だ。
今回もそうだ。
株価は、日経平均株価で30,000円を、一時超えた。
住宅は、新築マンションの販売価格が、高値を更新中だ。
相対的に、高額な大手塾の受講費用が、割安に感じられるようになるだろう。株価や住宅価格が低迷している際には参入しなかったであろう層が、参入してくるようになる。しかし、そうした層が輝かしい戦績を残せるかどうかは、別の問題だ。
成績優秀層は、株価や住宅価格の変動に関係なく、景気動向や社会情勢の変動に関係なく、常に中学受験を目指す。追加的に中学受験市場に参入する者に残された入学先は、必然的にボリューム・ゾーンの中堅校や中位校が中心となる。
大手塾に通い、高額な受講料を支払えば、誰でも輝かしい未来が手に入ると考えるのは、甘い。
来春の中学受験で、もっとも加熱が予想されているのは、男女ともに、私立中学の中堅校や中位校だ。にわか参入した親子でも、模試の成績や塾の席順なので、自己分析だけはよくできているのかもしれない。
では、高校受験に廻れば、こうした過熱の影響を避けられるかというと、そうはいかない。
中学募集で生徒募集が順調に進んだ中堅校や中位校は、高校募集で強気の方針を取れるようになる。単願推薦基準を引き上げたり、併願優遇基準を引き上げたり、一般入試の実合格者人数を減らしたり、できるようになる。
つまり、高校受験に廻った受験生も、加熱した中学受験市場の影響を、強く受けることになるのだ。
受験に限らず、スポーツであろうが、ビジネスであろうが、勝者の枠が限られたままなら、勝者の定員が一定のままなら、参加者が多くなるほど、競争は厳しくなる。
株高の一方で、日本の平均所得は、この過去数十年間、横ばいのままだ。米国や英国などの先進国は、この間に約1.5倍に所得が増えている。IMFの調査でも、OECDの調査でも、日本の平均所得は、ここ数年で、隣国の韓国(大韓民国)に抜かれてしまった。
冷静になれば、中学受験市場に参入できるような懐事情ではない親子も、実は多いのかもしれない。
この過熱する中学受験における勝者は、有名大手塾だけ、なのだろうか。
さて、あなたは、この難局を、どう乗り越えていくのだろうか。