[2021年10月22日]
私立中学受験で大手塾や中堅塾の「第一志望校に合格する人の割合は30%」だという言葉が独り歩きしているようだが、くれぐれも注意しておくべきだろう。
第一志望の定義のしかたによって、この「第一志望合格率」はいくらでも操作できるからだ。
結論から先に言っておこう。
大手塾の第一志望校合格率30%は、大手塾の「冠講座」の合格率だ。
冠講座は、御三家や、早慶や、難関国立大学附属の一部や、小石川など、トップレベルの中学校に向けた講座しかないが、ここでの合格率が、概ね30%だということだ。
ここに残るまでに壮絶な競争を勝ち抜かなければならない。脱落してしまった当初のライバルは数知れない。
予選を通過した者だけの闘いで、つまり決勝戦で、その合格率が30%だということだ。
大手塾では、多くは、当初夢見た学校とは違う、現実的な志望校選択により最終的に第一志望と定めた中学に挑むことになる。そこでの合格率も30%が関の山だ。
この「現実的な選択による最終的な第一志望校」への合格率を、「第一志望」の合格率とするのは、果たして適切なのだろうか。
実態として、本来の意味で、大手塾における「当初の第一志望合格率」は10%程度ではないだろうか。
第二志望校合格ならまだ幸せで、第三志望校合格でもよしとせざるをえないのが、中学受験の実態だ。第四志望校や第五志望校にしか合格できなくても、全滅するよりはよかったねと納得せざるをえないのが、お手塾に通った親子の姿だ。
大手塾で中学受験の準備を開始した当初の、夢に満ち溢れていた頃の、第一志望に合格できる親子は30%もいない。
あわよくば、開成に。
あわよくば、桜蔭に。
あわよくば、慶應に。
あわよくば、早稲田に。
あわよくば、小石川に。
そうした思いが、一度も脳裏をよぎらなかった受験生親子が、どれくらい、いるのだろう。
御三家中に多くの合格者を出す大手塾に、次々と吸い寄せられてしまうのは、「あわよくば」という思いが、あったからではないだろうか。
大手塾へ入塾した当初の第一志望校への合格率は、10%もないくらいだろう。
大手は、決して、合格率は競わない。
その意味が分かる親子は、いったいどれくらい、いるのだろうか。
大手塾の毎年の殺し文句は絶妙だ。
「昨年度は力が足らず合格率30%でした。」(実は毎年のこと)
「来年こそ合格率50%以上を目指します。」(半分以上落ちるのは事前に確定済)
「一緒に頑張りましょう。」(頑張って課金してねというお声かけ)
「今ここにいる人の中から合格者が出ます。」(人数が多ければ当たり前のこと)