パソコン版を見る

三田学院

[2021年10月25日]

【都立中】完全中高一貫化の恐怖

併設型の都立中高一貫校が、高校募集を停止して、完全中高一貫化したことで、何が起こると予想するだろうか。

高校募集定員がなくなり、中学募集定員増加を喜ぶのは、都立中実質単願受検生親子であろう。

高校募集がなくなり、中学からの入学者だけとなることを喜ぶのは、難関私立中併願受験生親子であろう。

これまで、難関私立中高一貫校とおなじように、完全6年一貫制であった都心部の都立中は、小石川、九段、桜修館であった。当初から難関私立中との併願が多かった3校である。

昨年度完全一貫校化した都立武蔵の、主要な学力型模擬試験の偏差値が急騰したことは、記憶に新しいことと思う。男女合計では倍率低下したが、難易度はそろって上昇した。

6年完全一貫制の難関私立中受験生にとって、都心部の都立中の6年完全一貫化は、これまで以上に併願先の選択肢が広がることになる。

しかも、両国も富士も白鴎も、来春からフル3科入試体制になる。問題数が増加することで1問の比重が相対的に下がり、より実力を発揮しやすくなる。しかも、問題数増加が予想されるのは適性3である。

難関私立中受験生親子にとって、小石川や桜修館や九段の他に、昨年は都立武蔵が有力な併願候補として名乗りを上げてくれたことは、朗報であったことだろう。

来春からは、これに、都立両国が加わることになろう。

どの地盤にも難関私立中を目指す受験生はそれなりにいる。その一部が都立中を新たに併願に組み入れる動きが鮮明となれば、まず小石川で起こり、続いて桜修館や九段で起こり、そして都立武蔵でも起こった「異次元難化」が、都心部の都立中で、さらに広く起こる可能性がある。

都立実質単願の受検生親子は、純粋に定員が少し増えたことを喜んでばかりはいられない。

増えた席のかなりの数を、あるいは増えた席のほぼ全部を、難関私立中受験生が奪ってしまうかもしれないことも、想定しておいた方がよいかもしれない。

難関私立中受験生に競り勝つ自信があるならよいが、彼ら彼女らもまた、死にモノ狂いで都立中の合格を取りに来ることを、忘れてはならないだろう。