[2021年10月27日]
都立高校の来春の入試は波乱が起るかもしれない。
東京都教育委員会が今年9月に、男女別募集定員の緩和を、現在の42校から全都立高校に拡大し、その影響を検証しながら、将来的には男女別定員の廃止を検討すると発表したことが、引き金になる。
男女別定員緩和の全都立高校への拡大は、今春にスタッフ日記で予想した通りだ。またしても予想が的中した。
現時点で、性別が違えば合格できていた受験生は、全都立高校合計で約600人であるが、緩和を全校に拡大することで約400人に減少し、緩和幅を20%に拡大することで約100人にまで減少すると、都は試算している。
しかし、試算通りには進まない可能性がある。
緩和措置が取られていなかった都立高校で新たに緩和措置が取られることで、それまで合格が難しいと判断していた受験生が、新たに志願してくる可能性があるからだ。
男子のボーダーが高い年が多い日比谷高校などでは、これまでも男子の倍率が高かったが、緩和措置を受けて可能性を感じた男子が新たに出願する可能性がある。これにより、男子の合格ボーダーがさらに女子より高くなり、男女差が拡大する可能性がある。
女子のボーダーが高い年が多い青山高校などでは、これまでも女子の倍率が高かったが、緩和措置を受けて可能性を感じた女子が新たに出願する可能性がある。これにより女子のボーダーがさらに高くなり、男女差が拡大する可能性がある。
もちろん、裏をかく受験生もいるだろう。
三田高校などは、過去に何度も、定員緩和ありの年と、定員緩和なしの年を、繰り返してきたが、定員緩和がない年でも女子の人気が根強く、定員緩和がある年でも極端に女子が増える訳でもなく、男女別の志願者数の比は、その影響をほぼ受けなかった。
これは、そもそも意中の志望校を心の中で決めた段階では、定員緩和がある年に当たるか、ない年に当たるかは事前には分からず、緩和があるかどうかが確定した時点では、もう志望校を変更しようとは思わないからだろう。
しかし、今回は状況が全く違う。これまで緩和措置のなかった学校が、緩和措置の対象になる。しかも、残り全都立高校が緩和措置の対象になる。
これにより、男女別の難易度に大きな差があった学校ほど、その差に拍車がかかる可能性があるのだ。
実際のところは、蓋を開けて見なければ分からないが、都の試算通りになるかどうかは、怪しいと思っておいた方がよいだろう。
加えて、長引くコロナ禍などの影響からか、受験生が安全確実志向を強めており、その影響が私立高校への選好度の上昇につながっていて、どれだけの割合の受験生が、本気で都立高勝負をするかも不透明だ。
私立高校授業料の実質無償化が定着したことも影響していると思われる。
いずれにせよ、来春の都立高のボーダーは波乱があるかもしれないので、警戒しておいた方がよかろう。